その名は時間管理局


 ============== これは、勿論フィクションです。 =======
 俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
 今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。

 午前9時。時間管理局。
 出勤するなり、ボスは言った。
 「五十嵐、お前は・・・パニックをどう思う?パニック事故だ。」
 「群衆心理ですね。パニック映画で表現されていますが、逃げ出したい、助かりたい、の願望が強くて、自分を見失う。却って、事態を悪化させるという。災害時に多いと聞きますが・・・。」
 「事故だ。今回の差異は、『償の国』。お前が、ファミレス使って、元国のトップを懲らしめた次元だ。時間軸は、2001年。7月21日、花火大会後の群衆事故があった。終電が間に合わないことを想定しなかった自治体や警備会社の無責任のため、11名の死亡事故が起こった。将棋倒しともドミノ倒しとも言われる現象で、密集した群衆に踏み殺されてしまったんだ。この種類の事故は、教訓を活かせず、度々起こっている、事故が社会問題となったのだが、ここまでのデータベースとは別に、類似事故では無く、『模倣事故』が起こっている、という事だ。それが、新たに年鑑に記録されている。それが差異だ。8月1日。別の花火大会の後、確保されていた筈のダイヤが大幅に乱れ、かつ、またまたパニックになった人々のお陰で犠牲者が出た。どう思う?五十嵐。」
 「許せませんね。ゆ。許せない、許せない!!!!!!!」
 「3回も言わなくていい。事態を収拾してこい。」

 MRIに似た移送装置に横たわろうとすると、アロハシャツがあった。新品だ。
 ありがたい。

 2001年8月1日。『償の国』。
 午前6時。鉄道のポイント(転てつ器)に時限装置を設置している若者がいた。
 夏物のシャツを着ているが、明らかに、この時代のシャツだ。
 「精が出るねえ。鉄道マンでもないのに、メンテナンス?幾ら金を貰った?シッパーに。ああ、鉄道に怨みがあったんだ。7月21日の事故より前の案件で。それで亡くなった人が浮かばれるのかな?昨年の『貨物線作業員触車死亡事故』も悲惨だった。2月21日。まだ寒かったろうなあ。下請け会社の作業員の誰かの身内だね。」
 「あんたは、誰だ?」
 「時間警察。歴史の『ゆがみ』を修正するのが仕事だ。俺の仕事は・・・。」
 俺は、列車の陰で様子を伺っている、未来人のシッパーを『保安檻』に送った。
 「アンタをそそのかした奴を処理することさ。亡くなった人の分も生きてくれ。」
 俺は、装置を消した。
 「俺の事も忘れる。アンタはアンタ自身のレールの上を移動するんだ。」

 俺は、彼の記憶を消すと、彼の頭の中にあった、自宅に跳ばした。

 3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
 俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
 「間に合ったか。」
 ボスがやってきた。
 「鉄道関係の事故は多いなあ。『作業員触車死亡事故』ってのもあったんだ。」
 「え?」
 「年鑑は、概ね、データベースに近くなったが・・・今度からさ。記憶消す前に工夫しろよ。ある鉄道作家の作品に『作業員触車死亡事故』と『群衆事故』が出てくる。」
 「気をつけます。」

 午後7時。帰宅すると、かな子は下駄履きで、浴衣を着ていた。
 「まだ、早いだろ?」
 「ううん。本番スタートよ。『お姫様だっこ』。」

 俺は思い出した。ボスこと義兄は、しょっちゅう、妻に連絡している。
 まあ、いいか。『出産前』には、『おねだり』もないだろうし。

 ―完―

 ※明石花火大会歩道橋事故
 ※2001年(平成13年)7月20日より明石市大蔵海岸にて「第32回明石市民夏まつり花火大会」が行われた。開催2日目となる7月21日の午後8時30分頃、西日本旅客鉄道(JR西日本)山陽本線(愛称:JR神戸線)朝霧駅南側の歩道橋において、駅から来た客と会場からの客が合流する南端で、1平方メートルあたり13人から15人という異常な混雑となり、「群衆雪崩」が発生した。その際、周囲に知らせるために歩道橋の屋根上にまで登る人も続出した。

 ※事故により、11名が全身圧迫による急性呼吸窮迫症候群(圧死)等により死亡し,183名が傷害を負う被害を出す惨事となった。死亡した11名は、小学生以下の児童(9名)と70代の女性(2名)であった。
 ※2005年(平成17年)11月、この死亡事故を教訓として警備業法と国家公安委員会規則が改正され、警備業務検定に従来の常駐警備、交通誘導警備等に加え、雑踏警備が新設された。

 ※山手貨物線作業員触車死亡事故
 ⇒1999年(平成11年)2月21日 0時15分ごろ (鉄道人身障害事故)。
 ※東京都品川区のJR山手貨物線大崎 - 恵比寿間の目黒駅付近で、信号保安装置の工事のため軌道内を資機材運搬中だったJR東日本の工事請負会社の作業員5人が品川発小淵沢行きの臨時回送9531列車(EF64 36+お座敷客車「江戸」:計7両編成)にはねられ、5人全員が死亡した。
 ※この事故では請負会社の工事指揮者が作業現場に遅刻した上、大崎駅の信号扱所に列車の運転状況を確認せずにJR信号通信指令室へ作業開始連絡をしたこと、作業前安全打合せ(作業内容・接近列車ダイヤの説明等)をせずに作業員に軌道内への立入りを指示したこと・列車見張員に臨時列車の記載された当日の列車ダイヤを渡さずなおかつ見張り位置を指示しなかったこと・また列車見張員も列車の接近方向とは反対側にいたことが原因とされる。
 JR東日本ではこの事故が発生する前から列車運行と軌道内作業の分離を検討していたが、この事故により列車運行中の軌道内作業は原則禁止となった。
 品川区の目黒駅と五反田駅間には慰霊碑が設置されている。