その名は時間管理局

 ============== これは、勿論フィクションです。 =======
 俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
 今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。

 午前9時。時間管理局。
 出勤するなり、ボスは言った。
 「五十嵐、お前は・・・不景気は嫌いか?」
 「冗談はよしこさん、でしょ。好きな人います?」
 「かな子じゃないのか。」「かな子は好きです。」
 「そうだよな。えっと、何だっけ?」
 「ボス。差異、差異。」「そうだったな。俺もぼけたかな?差異が生じたのは、『激の国』。お前が宅配便仕分けセンターに忍び込んだ次元だ。時間軸は、2009年。時の経済代臣の与瀬世肇が『かげろう景気』って言った、景気の時代だ。それがデータベースの真実だ。かげろうって知ってる?」
 「トンボに似た、短命の昆虫ですね。」
 「うん。一時的な景気って言いたかったんだろうが、不評だった。それは、ともかく、その発言直後に姿を消した。これが、年鑑が書き変わった現象だ。代臣は、他の者に交替して、政治に支障はなかったが、何か感じる?」
 「シッパーですね。」

 2009年1月30日。『激の国』。
 閣議後の記者会見で、気の利いた言葉を言った積りが、反感を買う者は多かった。それだけ不景気が長かったから、「これからは大丈夫」という言葉が欲しかったのだろう。
 午後10時、与瀬世家。
 玄関を入ろうとしたら、拳銃が後頭部に当たった。
 「いざなみじゃダメなのか?センスないぞ、お前。」
 「お前もな。」
 どこかから聞こえた声に、シッパーの手先は仰天した。
 与瀬世の頭上に、陰が見えた。

 俺は、男を『保安檻』に跳ばした。

 「代臣、今の内です。」
 「誰だ?」「SPです。」
 与瀬世は、玄関を入った。

 俺は、未来に戻った。

 3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
 俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
 ボスに子細を話した。
 「え?未来人?神話が好きなのか?確かに『いざなみ景気』って別名もあったらしいが。神様好きで、人を殺しちゃいかんだろ?」
 「同感です。」

 午後7時。帰宅すると、『ウチのカミさん』は、巫女の格好をしていた。
 「似合う?」
 「う・・・うん。」
 「これ、クリーニング代込みのコスプレなの。楽しみでしょ。」
 「ははーっ!」
 俺は何故か畏まった。

 ―完―

 ※2009年1月30日の閣議後の記者会見で与謝野馨経済財政担当大臣は「『だらだら陽炎(かげろう)景気』とでも言うんでしょうか」と「かげろう景気」の俗称を提言した。好景気期間は長いものの成長率は2%前後と伸び悩み、労働者の賃金の上昇率も頭打ちで、好景気の実感に乏しかった事を表現した模様。
 ※エコノミストらの間では、いざなみ景気の他に「小泉景気」「構造改革景気」「第四次平成景気」「出島景気」「デジタル景気」「デジカメ景気」「いざなぎ超え(越え)景気」「円安景気」「無実感景気」「格差型景気」「リストラ景気」などの名称が提案されている。 中部東海地域や北九州などおもに輸出(外需)産業の集積地では雇用が逼迫し、派遣・請負労働者あるいは外国人労働者を他の地域から受け入れるなど好況に沸いた。
 ※他方で賃金は下落し、大手小売や建設を筆頭とした内需・既存産業は停滞を続ける。首都圏都心部では、サービス業における労働供給が極端に不足し賃金は上昇した。地価についても首都圏・基幹都市の中心部は上昇する一方で地方・周辺部では停滞するなど地域・地区、業態による温度差のある景況が続いた。