============== これは、勿論フィクションです。 =======
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。
午前9時。時間管理局。
出勤するなり、ボスは言った。
「五十嵐、お前は・・・冤罪は好きじゃないよね。」
「当然です。冤罪に関係は、前にもありましたよね。」
「うん。今回は、ちょっと、違う。大冤罪だ。差異は、『流の国』。お前がいきなり、ある家の仏間に湧いて出た、次元だ。」
「湧いて出た?」「現れた、と言ってもいい。時間軸は、2024年。通称襖田事件で、発端は1966年に一家皆殺し事件の被疑者として逮捕、1980年に有罪が確定。死刑確定事件としては戦後5件目となる再審公判が行われ、2024年に無罪となった。ここまでは判るよね、君、賢いから。」
「何か引っかかるけど、判ります。めでたしめでたし、じゃないですか。」
「だろ?データベースでは、それが真実だった。ところが、最近、『流の国』の年鑑が書き変わった。裁判長が公判途中でインフルエンザで入院。代打で裁判した結果。また有罪で死刑。許せる?」
「許せません。」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー。」
俺は、無意味な問答の後、MRIに似た移送装置に横になった。
睡眠学習によると、最高裁で有罪になったが、支援者達の努力が実って、再審がスタート。一審の結審の後、控訴されなかった為、無罪が決定。シッパーめ。インフルエンザは怪しいぞ。
2023年9月某日。『流の国』。
再審スタートの具体的な時期が判らなくて苦労したが、裁判長は、『インフルエンザ予防接種』をしていた。
その病院に行ってみると、その日は、臨時の医師が接種を担当していた。
裁判長沖野氏の番になると、その医師は、トレーに用意されていた注射器と違う注射器をそっと取り出した。
「ワクチン、って何の為にあるんだっけ?ああ、偽医者だから知らないか。」
その言葉と共に、注射器は、その医師の手の甲に刺さった。
病院はパニックに陥った。
俺は、カルテと本人を受付に跳ばした。
「あれ、注射は?」「お疲れですね、沖野さん、済、のマークありますよ。番号が表示されたら、精算機で精算願います。」と、受付事務は、優しく言った。
待ち合い席で待っているお婆さんに、俺はそっと言った。
「優しい、おねえさんだね。」「あれ、私の娘なの。」
「じゃあ、しつけが良かったんだね。」
3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
タイムオーバーのランプ点き、アラームが鳴った。
「また、システムエラーか。メンテ頼もう。帰っていいぞ、五十嵐。」
「お先でーす。」
午後7時。帰宅すると、かな子は風船に注射針を宛てては割っていた。
「おっかしいなあ。昔は上手くいったのに。」
「看護師やってたことあるの?」
「ううん。看護助手。」
俺は、そっと着替えに行った。
―完―
※※1966年6月30日、静岡県清水市の味噌加工工場の専務の自宅で、当時この家に暮らしていた一家5人のうち就寝中の4人が襲われ、全員が殺害された上で現金が盗まれ、自宅が放火され全焼した。
※警察はこの工場の従業員だった袴田巌を別件で逮捕した上で殺人・放火などの容疑で再逮捕し、過酷な拷問や取り調べで自白を強要。味噌タンクを利用した証拠の偽造も行い、袴田を起訴する。起訴後、袴田は供述を一変させ冤罪を主張したが、最高裁までの裁判の末に1980年(昭和55年)に死刑の有罪判決が確定。
※袴田は死刑確定後の1981年(昭和56年)から2度の再審請求を行い、2014年(平成26年)3月、第2次再審請求審で静岡地裁が再審開始と、袴田の死刑および拘置の執行停止を決定し、袴田は同日釈放された。この即日釈放は袴田の弁護士・支援者は誰も予測していなかったという。
※その後、東京高裁が2018年(平成30年)に再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却したが、最高裁から2020年(令和2年)12月に同決定を取り消し、審理を同高裁に差し戻す決定が出された。
※差し戻し後の審理で、東京高裁は2023年(令和5年)3月に静岡地裁の再審開始決定を支持する決定を出し、東京高検がそれに対する特別抗告を断念したため、翌2024年にかけて死刑確定事件としては戦後5件目となる再審公判が行われ、2024年9月26日の一審判決で無罪判決が言い渡され、その後、検察側が上訴権の放棄手続きを行ったことで袴田の無罪が確定した。


