その名は時間管理局


 ============== これは、勿論フィクションです。 =======
 俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
 今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。

 午前9時。時間管理局。
 出勤するなり、ボスは言った。
 「五十嵐、お前は、誤算をどう思う?」
 「ええ?粉飾決済ですかあ?」
 「お前さ、ボケが上手すぎる。」
 「ありがとうございます。えと、判断を誤ること、ですよね。」
 「良い子だ。頭を撫でてやる。」
 「不要です。かな子にいつも・・・。」
 「んんんn。差異だが・・・ある思想家の小説家がクーデターを謀ったが成功しなかった。それが、データベースにある真実だ。場所は、『走の国』。お前が、『さすまた』を突きつけられた次元だ。時間軸が1970年11月26日。国防軍の駐屯地で小説家が演説し、クーデターを叫んだが、誰も同調しなかった。それで、彼は自殺した・・・筈が、演説は無かった。しかし、行方不明のままだ。」
 「行きたくないな。」「かな子が泣くぞ。」「言ってみただけです。」

 俺は、MRIに似た移送装置に横たわった。
 睡眠学習によると、随分と名作を生み出した大作家だ。
 何故、そんな極端に、狂気的な行動に出たのか、不明のまま自殺した。
 洗脳された、と言う説もあった。
 だが、今度も「予定通り」亡くなって貰わねばならない。
 恐らく、シッパーが殺した筈だ。
 それは許されない。許さないのが、俺の仕事だ。

 1970年11月25日。午後9時。水卜義男の家。
 一人の男が上がり込んで、説教している。
 「先生の作品をもっと多く、後世に残して欲しいんです。」
 「君は私の作品の愛好家だと言ったが、作品のことをあまり知らなかったじゃないか。私は自殺しに行くんじゃない。若者達に目覚めて貰いたいだけだ。」
 水卜は、日本刀を抜いた。
 男は拳銃で撃った。
 だが、弾は出なかった。
 「そこにいる君は、コイツの仲間か?」
 「仲間なら、弾を抜いたりしませんよ。」俺は、姿を現わすなり、シッパーの手先を『保安檻』に送った。
 「どんな手品を使った?」
 「手品じゃないです、先生。俺は『時間警察』。コイツは罪人ですから、未来に返しました。先生の記憶から、この数時間を消します。手品、かも知れない。記憶を消す相手に言うべきじゃないかも知れないが、先生の作品は、多くの人に愛され続けます。」
 俺は、水卜先生の記憶を弄って、未来に帰った。

 3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
 俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
 ボスがやって来た。
 「年鑑は、おおよそ、データベースの歴史に戻った。おおよそ、な。このメモを除いて。創作メモ、らしい。」
 メモのコピーには、こう書かれていた。『時間警察』。
 「大目に見るから有り難く思え!」

 午後7時。帰宅すると、かな子は夢中になってテレビを観ていた。
 「何、観てるの?」「時間警察。」
 「流行ってるの?」「流行ってる。一緒に観ようよ。」

 俺は、ネクタイだけ外した。

 ―完―

 ※昭和の「大誤算」として特に有名なのは、1970年(昭和45年)11月25日に三島由紀夫が自衛隊市ヶ谷駐屯地で決起した三島事件です。自衛隊のクーデターを促す演説をしたものの、隊員が同調せず、期待した反響が得られず割腹自殺に至った歴史的事件を指します。『三島事件』とも呼ばれています。
 ※個人的には、なんて勿体ないこと、と思っています。