============== これは、勿論フィクションです。 =======
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。
午前9時。時間管理局。
出勤するなり、ボスは言った。
「五十嵐、お前は、『だいく』は好きか?」
「嫌いじゃないですよ。リフォームするんですか?どこですか?ボスの家?」
「お前、『ボケ』に磨きがかかったな。そっちじゃない。音楽だ。ベントーベンの『活気の歌』で有名な。」
「ああ、年末に・・・どこの次元でもやっているんですか?」
「どこでも、じゃあないだろうな。差異が生じたのは、『和の国』。お前が高貴な肩の自害を食い止めた次元だ。この次元では、毎年のように年末に演奏会が行われ、大合唱していた。庶民に親しまれていた習慣だった。ところが、お前の知っている通り、大変な世の中になってしまった。国が立ち直り、久々に開かれることになった大演奏大合唱の会。データベースでは成功を収めたことになっているが、年鑑が書き変わった。指揮者の佐幸実が演奏会の前日、12月6日に行方不明になった。指揮は代役の音楽家が行ったが、謎になっている。そして、3026年。佐幸氏に似た人物が目撃されている。これだ。」
ボスは、2025年と3026年の写真を見せた。髪型が違うが同一人物に違い無い。
「シッパーが連れて来たんですね。」
俺は、MRIに似た移送装置に横になった。
睡眠学習によると、37歳で大抜擢された、天才的な音楽家らしい。
それで、拉致されたか。
2025年12月6日午後9時。『和の国』記念会館大ホール。
舞台稽古を終え、佐幸は自家用車で自宅に向かう途中だった。
突如、その自家用車の上空にオスプレイが現れ、牽引ロープが降りて来た。人がロープにぶら下がっている。大作戦の邪魔をすることになるが、俺は躊躇無く、そのぶら下がり男とパイロットの男を『保安檻』に送り、オスプレイを近くの公園に不時着させた上で消した。
「臭いニオイは元から絶たなきゃな。」
3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
俺は、タイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
いちいち面倒くさいが、『勤務時間管理』は、この方式でないと無理なのだそうだ。
「ご苦労様。かな子は、年末に向けて、張り切っているぞ。」
午後7時。帰宅すると、悪い予感は当たっていた。
かな子は、近所の奥さんを集め、ママさんコーラス隊を作ったらしい。
この時間軸の、この次元でも、年末演奏会があったのか?
俺は、着替え後、ひっそりとカップ麺を食べた。
何か寂しい。ヒーローなのに。
―完―
※年末の定番なのは日本だけ?
日本では「第九」といえば年末をイメージさせるものですが、国外ではどうでしょうか。もともと「年末に第九を」というアイデアが芽吹いたのは1918年のこと。第一次世界大戦が終わって平和を願う声が高まった頃にドイツのライプツィヒで始まり、その後は名門オーケストラであるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、毎年の大晦日に「第九」を演奏し続けてきました。
日本では第二次世界大戦後の1947年(昭和22年)、日本交響楽団(現在のNHK交響楽団)が、12月に3日連続の「第九コンサート」を行って絶賛され、年末に「第九」を演奏する習慣へと受け継がれています。恒例となった年末の「第九」には多くの聴衆が集まりましたが、まだ戦後の混乱期を脱していなかった時代ですから、オーケストラにとっては安心して新年を迎えるための臨時収入に。さらには「うたごえ運動」を背景として合唱が盛んになり、アマチュア合唱団が「第九」を歌い始めます。コンサートには合唱団員の家族や友人たちが駆けつけたためチケットが売り切れることもしばしば。こうした状況が功を奏し、年末の「第九」が完全に定着したと言われています。


