その名は時間管理局


 ============== これは、勿論フィクションです。 =======
 俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
 今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。

 午前9時。時間管理局。
 出勤するなり、ボスは言った。もう力石だと、ばれてるが、変な仮面を着けている。
 もう知らん振りするしかない。
 「五十嵐、お前は・・・お前、教育をどう思う?詰め込み?ゆったり?」
 「昔、そういう議論がありましたけどね。本人次第じゃないんすか。俺は、お腹の子はかな子に任せるって言ってありますよ、お義兄さん。」
 「そ、そうか。えっと、今回の差異は、『祈の国』。お前が産婦人科に現れてしまった次元だ。この国では、子供の教育が『詰め込み過ぎ』だと言って、『全教師連盟』が言い出して、『ゆったり教育』を1980年に始めた。そして、生徒の学力低下に歯止めが付かないので、2011年に『新ゆったり教育』に切り替えた。だが、時既に遅し、学力は世界に『おいてけぼり』になった。一説には、『全教師連盟』が、隣国の思想にかぶれて道を誤った、とある。ところで、ここまでがデータベースにある真実だが、書き変わった年鑑によると、2036年まで『新ゆったり教育』は存在しなかったことになっている。」
 「故意に遅らせた奴がいる訳ですね。」

 俺は、MRIに似た移送装置に寝転がった。コートがある?
 睡眠学習によると、学習指導要領が変わったのが2008年。問題視されたのが2004年なのに、4年も放置されている。呆れたな。だが、ターニングポイントは2008年だな。

 2008年。『祈の国』。
 調べ回って判った。
 新しい学習指導要領は、1月に印刷されている。それで、コートか。

 印刷所。
 「何?まだ到着しない?印刷できないぞ。」
 工場長の言葉に、俺は高速道路に跳んだ。
 渋滞だ。玉突き事故か。
 「玉突き事故は偶然だよ、万華鏡。」
 見たこともないオンナだ。こういう場合、強い能力者だ。
 俺は、金縛りにあった。絶対絶命だ。
 歌が聞こえた。

 石我さん 辞めてよ
 私達は奴隷じゃない
 石我さん 辞めてよ
 「庶民税」減税するって言ったじゃない

 あ。『抗の国』の女の子だ。ストリートシンガーだ。

 シッパーさん、止めてよ
 私達は夫婦なの
 シッパーさん、止めてよ
 正式じゃなくても夫婦なの
 歴史を変えたい? お前らは嫌いだ

 強い念力が、俺の金縛りを解いた。
 「今よ、万華鏡。」
 俺は、シッパーを『保安檻』に送った。

 「シッパーを送ったのね、万華鏡。いつかは助けてくれてありがとう。私はリッキー。あなたの側室じゃない。でも、闘いが終ったら、抱いて。もう子供じゃないし。」

 そう言って、彼女は去った。
 俺と「直接」関係ない味方もいるのか。

 3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
 俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
 「リッキー?初耳だな。局長がスカウトしてきたんだな。とにかく、敵は、この次元の子供達が『賢く』なることを阻んだ。隣国に勝たせない為に。最初の『ゆったり教育』もやはり、隣国が仕組んだんだろう。『若い芽を摘む』為に。」

 午後7時。五十嵐家。
 かな子は、竹槍の稽古をしていた。
 「何?」
 「訓練。」
 「大丈夫なの?それで。」
 「大丈夫。先端にビールス仕込んであるから。」

 俺は、黙って着替えに行った。
 疲れた。

 ―完―

 ※ゆとり教育(文部科学省が指定した正式な名称でない)は、1980年代から始まった教育方針であり、この方針について文部科学省の出版する『学制百二十年史』では、各教科の指導内容大幅精選と思い切った授業時間削減が大きな特色とある。

 ※ゆとり教育は、「詰め込み教育」と言われる知識量偏重型の教育方針を是正し、思考力を鍛える学習に重きを置いた経験重視型の教育方針をもって、学習時間と内容を減らしてゆとりある学校を目指した教育であり、1980年度、1992年度、 2002年度の改定で徐々に内容の厳選が行われた。

 ※ゆとり教育は、詰め込み教育に反対していた有識者から支持されていたが、学力低下の指摘から学習指導要領の見直しが起き、2011年度以降に、これまでのゆとり教育の流れとは逆の内容を増加させる学習指導要領が施行された。 ただし現在も学習内容は詰め込み教育時代の水準には戻っていない。