その名は時間管理局


 ============== これは、勿論フィクションです。 =======
 俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋をしていたが、時間管理局に『異動』になった。俺の使命は、この未来世界(3026年)から、所謂タイムリープをして逃げた犯人を追って、『悪さ』をしていた場合、逮捕し、局に移送させることだった。殺しはしないが、痛め付けること位は許されている。
 今の俺は、『異次元のパトロール警官』。次元の『調整係』だ。

 午前9時。時間管理局。
 出勤するなり、ボスは言った。もう力石だと、ばれてるが、変な仮面を着けている。
 もう知らん振りするしかない。
 「五十嵐、お前は・・・お前、少年シリアルキラーをどう思う?」
 「どうしようもないですね。普通の犯罪とは違う。理由付けなんかできない。ましてや、少年では。更生しても、また悪さすると思います。」
 「同感だな。差異が生じたのは、『気の国』。お前が、裏切り者達のウイルス輸入を暴き、平定した次元だ。時間軸は、2004年3月10日と考えていいだろう。犯罪者の少年Aが成人し、仮退院した日だ。」
 「じゃ、差異は?」
 「うん。3026年。『気の国』。犯人の仕業か模倣犯の犯罪が起きている。そして、仮退院の日から、行方不明になった。」

 MRIに似た移送装置に寝転がった。
 睡眠学習によると、3つの連続事件の被疑者は、なかなか特定出来なかった。
 マスコミが誤誘導したからだ。異常な犯罪の再犯率は高い。この少年の犯罪動機の引き金になっているのが、性的コンプレックス。連れ出せば、いい「犯罪ロボット」になる。

 2004年3月10日。『気の国』。少年院の前。
 俺は、一人のオンナと対峙した。
 「私に勝ったら、寝てやってもいいよ。」
 「間に合っている。それに、ボブやペチャは嫌いなんだ。」
 オンナは、いきなり背中の日本刀を抜刀した。
 俺が用意出来たのは、トンファーだ。
 何故か、敵の武器を察知したのか、この次元に跳んで来たとき、持っていた。
 そうか。センサーか。局長、やるなあ。

 1時間半、場所を移動しながら、俺は闘った。
 その最中、少年Aと両親と弁護士を乗せたクルマは発進した。
 俺とオンナは、現れた時間管理局の円盤に跳ばされた。
 「今だ!」
 俺は、号令に従う迄もなく、オンナを『保安檻』に送った。

 「敵の円盤は去った。敵のオンナも片付いた。今日は、送るよ。」

 3026年某月某日。午後5時。時間管理局。
 俺はタイムレコーダーシステムに体内時計をスキャンさせた。
 ボスがやって・・・来ない?

 午後7時。五十嵐家。
 思った通り、力石と局長が、すき焼きをつついている。

 好きだなあ、すき焼き。
 「今日のオンナは、幹部クラスだ。これからも気をつけてくれ。」
 「はい。」
 俺は黙って、すき焼きをつついた。

 ―完―

 ※サカキバラ事件
 ※成人の刑事裁判と異なり、少年審判は非公開であり、審判の内容は公開されず、審判の結果も公開されないか報道されない事例が大部分であり、多くの人々に注目された事件の審判の結果(初等少年院、中等少年院、医療少年院への送致など)が公開され報道される程度であるが、この事件は人々からの注目度が著しく高かったので、家庭裁判所は例外的に精神鑑定の結果を公開した。

 ※精神鑑定結果として下記に示すAの特徴が解明された。

 ※脳のX線検査、脳波検査、CTやMRIによる脳の断層検査、染色体の検査、ホルモン検査に異常は無い。
 非行時・鑑定時とも精神疾患ではなく、意識は清明であり、年齢相応の知的能力がある。
 非行時・鑑定時とも離人症状と解離傾性(意識と行為が一致しない状態)があるが、犯行時も鑑定時も解離性同一性障害ではなく、解離された人格による犯行ではない。

 ※未分化な性衝動と攻撃性の結合により、持続的で強固なサディズムがこの事件の重要な原因である。
 直観像素質(瞬間的に見た映像をいつまでも明瞭に記憶できる)者であり、その素質はこの事件の原因の一つである。

 ※Aはその性的な興奮や快楽の感覚や要求が、人を殺害して遺体を損壊することによって、猫の殺害と遺体損壊よりも大きな性的な興奮や快楽を得たいとの欲求へとエスカレートし、それが自分の運命と思い込むようになり、この事件を行ったのであり、殺人の動機の類型としては快楽殺人である。また、Aの言動を危惧した両親は、中学入学後の1995年11月に精神科の病院に通院させ、診断テストや脳の検査を受けさせた。その結果、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断を受けている。

 ※Aは鑑定医から被害者を殺害したことについて問われると、自分以外は人間ではなく野菜と同じだから切断や破砕をしてもいい、誰も悲しまないと思うと供述した。被害者の遺族の悲しみについて問われると、あの時あの場所を通りかかった被害者が悪い、運が悪かったのだと供述した。女性に対する関心はあるかと問われて、全く無いと答えた。

 ※精神鑑定結果は、Aに完全な責任能力はあるが、成人の反社会性パーソナリティ障害に相当する行為障害(18歳未満の場合は人格形成途上なので行為障害と表現する)があり、鑑定医の意見としては、行為障害の原因を除去して、Aの性格を矯正し、Aが更生するためには、長期間の医療的処置が必要(医療少年院への送致が最も適切な処遇)との提案がされた。事件前に診断し告知された「注意欠陥・多動性障害」についての言及は、審判や精神鑑定においては触れられていない。

 ※結果として、「精神鑑定が万能でない」ことが証明された。
 模倣犯は、何件も出てきた。
 裁判所が「無断で」資料を廃棄したことは、違法行為である。
 『法の番人』の場所に、「番犬」はいなかったことになる。