【書籍化】巻き込まれ転移したアラサー社畜、転移先が滅びかけでした~快適ライフを求めて万能クラフトと解析眼で異世界再生に乗り出します~

 土地神様は、実は神様ではなく人工的に創られた精霊だった。
 という話は、みんなには伏せることに。
 これまでずっと、神様だと思って信仰していたこの世界の人たち。その気持ち事が、精霊たちに力を与えてくれている。
 それが精霊だからとわかった途端、信仰しなくなったらどうなるか。

 もうそりゃ、世界の滅亡に一歩も二歩も近づくことになる。
 それに、神様の定義なんて存在しない。
 心のよりどころなんだ。
 実際、ニーナはこの町を守って来てくれた。それは土地神に相応しい姿だと言える。
 なら、神様でいいじゃないか――と、ようやくしっかり目を覚ましたエリサとも話し合って出した結論だ。

 それを聞いた少年土地神様は笑って「じゃあみんなの元へ戻すよ」と言って、俺たちは礼拝堂に戻った。
 どうやらあの白い空間にいる間、時間が止まっていたようだ。いや、あの空間そのものに時間の概念がないのかな。

「ところで、土地神様のお名前は?」
『僕ですか? 僕はニルスです。ニルスくんって呼んでください』

 えへへ、と頬を染めてそう話すと、レイアとエリサが「かわい~っ」と黄色い声を上げた。

 食事のあと、さっそくあの白い空間での話をニルスくんが持ち出す。
 もちろん、人工精霊うんぬんの件は伏せて。

『魔法王朝を外周にある五つの町全ての魔導装置を復活させれば、かなりの人たちを受け入れられると思うよ。ニーナ。このアリューケの町って、以前はどのくらいの人が暮らしていたんですか?』
『んー……一万人、ぐらいですの』

 ×5で、五万人は綺麗な空気のある街で暮らせるようになる。
 でも、人が増えれば食料問題が……。
 今は百人にも満たない人数だからこそ、少しの畑でなんとかなっている。
 これが千人にでもなったら、もうお手上げだ。

 魔導装置の範囲内でその人数が食べていける野菜を栽培しようと思ったら、何割かの土地を畑にしなきゃならない。そうなると今度は、人が暮らすための土地が減ってしまう。
 一万人は到底無理な話だ。
 だけど。

『その件は大丈夫だと思います。ただし、五つの町全ての魔導装置を復活させなければなりませんが』
「五つ全部修理したら、何かあるんですか?」
『浄化のパワーが上がります。それに、魔導装置は町以外にもありまして』

 え!? 町以外にも?

 その装置は、町と町を繋ぐルート上に点々としているそうだ。
 町と、転々とする装置を線で繋ぐと、ぐるっと丸い円が描かれる。そして浄化範囲も、その円に沿って広がるそうだ。

『西回りでも東回りでも、まずは一番近い町へ向かって装置を修繕してください。ルート上の魔導装置も忘れずに。町では土地神の復活も』
『と、土地神の復活ですの!? み、みんな、消えていなくなったんじゃっ』
『ニーナ。君は町が魔王に襲われた時、その時のショックで記憶の一部が欠けてしまっているね。でも大事な部分はちゃんと覚えてて、各町の土地神のことも覚えているんだろう?』

 ニーナは頷く。

『僕も彼らのことを覚えているよ。その記憶が、彼らをまだ、この世界に繋ぎとめている。大丈夫。きっとまたみんなに会えますよ』

 ニルスがそう言ってほほ笑むと、ニーナは大粒の涙を流して頷いた。






「こ、これがエリクサアァァァァァ」

 エリサが大興奮だ。錬金術師としての性なんだろうってレイアは言う。

『ふぅ。僕にはこれぐらいしかお手伝いできませんので』
『ニーナもお手伝いできたですの』
「十分だと、ニルスくん! ニーナもありがとう」

 ニルスくんの力で、礼拝堂の床下で眠るエリクサー草は生えた。
 ニーナの力も加わって、最初に見たエリクサー草より立派に成長している。
 俺がクラフトできたのはエリクサーポーション四本だったけど、エリサの錬金術だと……。

「え……二十本!? なんでこんなにいっぱいっ」
「素材の効能を最大限生かすスキルが、錬金術なんだよぉ。志導くんの万能クラフトはその名の通り万能だけど、きっと器用貧乏的な面もあると思うのぉ。あとはまぁ、スキルの熟練度かなぁ」
「仕方ないわよ、志導くん。あなた、こっちへ来てまだ数ヵ月でしょ? 私たちは十七年以上だもの」

 スキルの熟練度も「何本製薬できるか」に影響するってことらしい。
 俺の万能スキルも、その熟練度が上がれば作れるポーションの数が増えるのかなぁ。

『別の町へ行って魔導装置を修繕したら、教会の床下の土を、お姉さんのスキルで浄化するといいよ』
「何かあるの? ニルスくん」
『何百年と芽を出せなかったエリクサー草が、土の浄化を知ってすぐに生えてくるから。つまり自然発芽だね。その後でよみがえらせた土地神に頼めば、早い段階でまた芽を出せるよ』
「本当に!?」

 そのためには、その町でも誰かに住んでもらって土地神様への信仰心をお願いしなきゃならないけど、とニルスくんは付け加える。
 獣人族の何人かに、そっちへ移り住んでもらうか。
 それとも――。

「お~い。帰ったぞぉ~」

 アルトの声がして教会の外へ出ると、何か荷物を背負った彼らと、その後ろには……。

「アルト……後ろの方々は、誰?」
「うん。ドワーフ」
「だよねー。見ればわかる。いやそうじゃなくって」

 アルトたちの後ろには、ずんぐりとした樽のような体形をした男たちが。
 いや女性もいるな。
 それに。

「レイア、みんなに声をかけて。すぐに暖かいスープの用意を。それと毛布を集めてきて」
「わかったわ」
「エリサは傷薬、頼める?」
「もちろん、すぐ用意するねぇ」

 大人のドワーフに背負われぐったりしている、幼いドワーフもいた。