「ンアァー」
『ンアァー』
ゴォォっと二つの火球が飛んでいく。
ひとつはユタのブレスで、もうひとつは魔導ゴーレムの胸から発射されたものだ。
魔導ゴーレムを起動した後、俺は魔力を大量に吸い取られて気絶してしまった。
目を覚ましたのは三日後。
クラフトスキルを連続していると、レイアは度々心配そうに声を掛けてくる理由がわかったよ。
もし他にも魔導ゴーレムを起こす機会があったとしても、安易に起動しないようにしないとな。
気絶していた間、レイアとユタ、それにゴーレムがずっと看病してくれていたそうだから、心配かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
が、それはそれとして。
「おーい、お前たち。火球を飛ばす方角を間違えるなよ。それ、一応攻撃、なんだからな」
「ワカタ」
『ワカタマシタ』
魔導ゴーレムの言語が、ユタ語になっている……。
三日間一緒にいたせいか、ユタの口調を学習してしまったらしい。どうせならレイアの口調を学習してくれればよかったのにさ。
「ブレスで除雪なんて、聞いたことがないわ」
猫のレイアがやってきた。朝食を終え、毛繕いに余念がない。
「はは。アッパーおじさんからぽかぽか石をもらったもんだから、雪の中でも元気に動けるようになってテンション高いんだよね」
「私もぽかぽか石欲しい」
「同じく」
欲しいと言ったら「お前たちは服を着れるだろ」と言われ、却下された。
服って言ったって、何枚も重ね着できないし、毛皮は獣人族に譲ったからなぁ。
「さぁて。今日から俺も畑仕事を手伝わないとな」
「にゃ。昨日、目を覚ましたばっかりじゃない。もう一日ぐらい、ゆっくりしなきゃ」
「そうはいかないよ。万能クラフトのスキルを使えるのは、俺だけなんだ。ガラスハウスが積雪に耐えれているか、確認しないと。それも解析眼のある俺がやった方が、早いし正確だろ?」
「はぁ……。スキルもあんまり使ってほしくないのに」
スキルを使えば魔力を消費する。今はまだ、魔力が完全に回復したわけじゃないらしい。
使用回数を制限して、必要なクラフトだけするようにするよ。
そう約束して、ようやくレイアは納得してくれた。
「おーい、ユタ。ゴー助。畑の方に行くぞぉ」
「オーッ」
『オー、デス』
「ちょ、ちょっと志導くん。もしかしてゴー助て……ゴーレムの名前なの?」
「うん。魔導ゴーレムって呼びにくいし、長いからさ。愛嬌があっていい名前だろ? な?」
と、異論は認めない雰囲気で押してみた。
レイアは「はいはい」と笑ってくれる。
昨日は気絶から目覚めたばかりで、ぼぉとしていたんだ。そのタイミングでゴーレムが『命名、ください』というからさ。なんかぼぉっとしたまま、ゴー助なんてつけてしまったんだ。
そしたらあいつ、名前をメモリしましたなんていうし。
今更もう変更できないだろ。
ブレスと魔法で降り積もった雪がどんどん溶けていく。
しかもユタのブレスで溶けた所を、ゴー助が魔法をぶっぱなして蒸発させるから、足元はまぁ歩きやすい。
ただアッパーおじさんやカーラのフレイム・ボディと違って、火球を飛ばす攻撃タイプのものだ。
飛ばす方角を間違えると、何かを燃やしてしまうこともあった。
それで教会の側にあった木を消し炭にしたしな。
「ユラがブレスの練習をさせてやってくれっていうから、まぁやらせてるけど」
「畑の側ではやらせない方がいいわね」
「だな」
「それにしても、仲がいいわねあの一頭と一体」
ユタとしては、子分ができたという気分なんだろう。ゴー助はよくわからないけど。
『主。デェージョーブ、デスカ』
「アッ。シドー、デージョーブカ?」
「あぁ、大丈夫だ。そろそろ畑の近くだ。お前らの火球でガラスハウスが吹っ飛ぶといけないから、除雪はここまででいいぞ」
畑のそばまでくると、アッパーおじさんかカーラの作った道が見えた。
除雪した道をつなげれば、あとは畑までちゃんと繋がる。
「これを毎朝しなきゃならないのか」
「一昨日はあんまり降らなくて、昨日の朝は除雪してないのよ。おじさんたちの話だと、天気が良ければ三日ぐらいやらなくても平気なんだって」
だけど昨日の夜は降っていた。そして今朝は積雪五十センチ超え。
凄いなぁ。こんなに積もってたら、関東だと事故車で道路が溢れかえってるだろう。
自動車の無い世界でよかった。
「じゃ、ゴーレムの動きを止めるには、頭のところのボタンを押せばいいのか」
『ハイ。再ビボタンヲ押セバ、再起動シマス。都市ノ暴走ノ影響ハ、ソレデ解消サレマス』
「はぁ……めちゃくちゃ難易度高いな」
「そうね。この子みたいに壊れて動けないわけじゃなく、動いてるゴーレムのボタンを押すのは難しいわね」
夜になって、レイアが人の姿に戻ったところで、ゴー助から話を聞くことにした。
なんとなく予想はしていたけど、やっぱりか。
前回、古代魔法王朝の中心部へ向かう巨大な門のところで襲ってきたゴーレムたちは、動き回られて解析できずにいた。
町で発見した銅と頭。動かなくなった状態だから、いくらでも解析できた。
門のところにいる連中は、今でも元気いっぱいだろう。
気付かれずに背後を取るのは無理。
攻撃を避けつつ背後を取るのも難しいだろう。だって一体じゃないからな。あいつらは。
ボタンがある蓋を開くのに、呪文を唱えながら触れる必要がある。
気付かれないように背後をとれても、呪文を唱えた時点で見つかるってね。
その呪文も、眠ったゴーレムと、起きているゴーレムで違うらしい。
『我が友よ、休息を与えん。プゥーオン』
これが呪文だ。
めちゃくちゃ早口で唱えないと、触れる前に逃げられてしまう。
「一難去ってまた一難」
「でも十歩ぐらいは前進できたわよ」
ま、謎だった部分が解決したのは、大きな一歩だよな。
『魔導ゴーレムヲ止メル方法、モウヒトツアリマス』
「もうひとつ? どうやるんだ?」
『壁ノ内部ニ、ウォールガーディアン、オヨビ魔導ゴーレムへ指示ヲ出スタメノ魔導装置ガアリマス。ソコガ都市ノ魔導装置ト連動シテ暴走シテイルノデス』
あの壁の中に魔導装置があるのか。
『じゃあ、都市の魔導装置と切り離せば、暴走、止まるかもしれないです?』
それまで姿を見せていなかったニーナが現れる。俺たちの会話はずっと聞いていたんだろう。
そうか。以前、アリューケの魔導装置も都市のそれを繋がってて不具合を起こしていたし、それで接続を切ったんだったよな。
なら、門の内側にある魔導装置も接続を切れば……。
『止マリマス。シカシ』
「え、しかし?」
『全テノガーディアンヤゴーレムガ対象デハアリマセン。管理区画内ノガーディアントゴーレムノミガ対象デス』
けど、その管理区画はひとつの魔導装置で数百メートル。
「門の付近の魔導装置を停止できれば、なんとかなりそうだな」
「そうね。別に全部のゴーレムを止める必要なんてないものね」
『なのです!』
少しだけ希望が見えたぞ。あとは。
「それで、都市の魔導装置の暴走を止める方法はわかるか、ゴー助」
『考エ中……考エ中……テヤンデェ、ガッテン、ピコーン』
「ぷふっ」
「ユタぁ。お前、変なこと教えるなよぉ」
「クククククク」
ピコーンと自ら言ったゴー助は、首を傾げ『不明デス』と答えた。
全然ピコーンじゃないし!
『暴走ヲ停止スル方法ハ、直接都市ノ魔導装置ヲゴ確認クダサイ』
「やっぱそうなるか。まぁ何はともあれ、行くしかないってことだな」
そのためにもまずは、門の警護をしているゴーレムを止めないとな。
『ンアァー』
ゴォォっと二つの火球が飛んでいく。
ひとつはユタのブレスで、もうひとつは魔導ゴーレムの胸から発射されたものだ。
魔導ゴーレムを起動した後、俺は魔力を大量に吸い取られて気絶してしまった。
目を覚ましたのは三日後。
クラフトスキルを連続していると、レイアは度々心配そうに声を掛けてくる理由がわかったよ。
もし他にも魔導ゴーレムを起こす機会があったとしても、安易に起動しないようにしないとな。
気絶していた間、レイアとユタ、それにゴーレムがずっと看病してくれていたそうだから、心配かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
が、それはそれとして。
「おーい、お前たち。火球を飛ばす方角を間違えるなよ。それ、一応攻撃、なんだからな」
「ワカタ」
『ワカタマシタ』
魔導ゴーレムの言語が、ユタ語になっている……。
三日間一緒にいたせいか、ユタの口調を学習してしまったらしい。どうせならレイアの口調を学習してくれればよかったのにさ。
「ブレスで除雪なんて、聞いたことがないわ」
猫のレイアがやってきた。朝食を終え、毛繕いに余念がない。
「はは。アッパーおじさんからぽかぽか石をもらったもんだから、雪の中でも元気に動けるようになってテンション高いんだよね」
「私もぽかぽか石欲しい」
「同じく」
欲しいと言ったら「お前たちは服を着れるだろ」と言われ、却下された。
服って言ったって、何枚も重ね着できないし、毛皮は獣人族に譲ったからなぁ。
「さぁて。今日から俺も畑仕事を手伝わないとな」
「にゃ。昨日、目を覚ましたばっかりじゃない。もう一日ぐらい、ゆっくりしなきゃ」
「そうはいかないよ。万能クラフトのスキルを使えるのは、俺だけなんだ。ガラスハウスが積雪に耐えれているか、確認しないと。それも解析眼のある俺がやった方が、早いし正確だろ?」
「はぁ……。スキルもあんまり使ってほしくないのに」
スキルを使えば魔力を消費する。今はまだ、魔力が完全に回復したわけじゃないらしい。
使用回数を制限して、必要なクラフトだけするようにするよ。
そう約束して、ようやくレイアは納得してくれた。
「おーい、ユタ。ゴー助。畑の方に行くぞぉ」
「オーッ」
『オー、デス』
「ちょ、ちょっと志導くん。もしかしてゴー助て……ゴーレムの名前なの?」
「うん。魔導ゴーレムって呼びにくいし、長いからさ。愛嬌があっていい名前だろ? な?」
と、異論は認めない雰囲気で押してみた。
レイアは「はいはい」と笑ってくれる。
昨日は気絶から目覚めたばかりで、ぼぉとしていたんだ。そのタイミングでゴーレムが『命名、ください』というからさ。なんかぼぉっとしたまま、ゴー助なんてつけてしまったんだ。
そしたらあいつ、名前をメモリしましたなんていうし。
今更もう変更できないだろ。
ブレスと魔法で降り積もった雪がどんどん溶けていく。
しかもユタのブレスで溶けた所を、ゴー助が魔法をぶっぱなして蒸発させるから、足元はまぁ歩きやすい。
ただアッパーおじさんやカーラのフレイム・ボディと違って、火球を飛ばす攻撃タイプのものだ。
飛ばす方角を間違えると、何かを燃やしてしまうこともあった。
それで教会の側にあった木を消し炭にしたしな。
「ユラがブレスの練習をさせてやってくれっていうから、まぁやらせてるけど」
「畑の側ではやらせない方がいいわね」
「だな」
「それにしても、仲がいいわねあの一頭と一体」
ユタとしては、子分ができたという気分なんだろう。ゴー助はよくわからないけど。
『主。デェージョーブ、デスカ』
「アッ。シドー、デージョーブカ?」
「あぁ、大丈夫だ。そろそろ畑の近くだ。お前らの火球でガラスハウスが吹っ飛ぶといけないから、除雪はここまででいいぞ」
畑のそばまでくると、アッパーおじさんかカーラの作った道が見えた。
除雪した道をつなげれば、あとは畑までちゃんと繋がる。
「これを毎朝しなきゃならないのか」
「一昨日はあんまり降らなくて、昨日の朝は除雪してないのよ。おじさんたちの話だと、天気が良ければ三日ぐらいやらなくても平気なんだって」
だけど昨日の夜は降っていた。そして今朝は積雪五十センチ超え。
凄いなぁ。こんなに積もってたら、関東だと事故車で道路が溢れかえってるだろう。
自動車の無い世界でよかった。
「じゃ、ゴーレムの動きを止めるには、頭のところのボタンを押せばいいのか」
『ハイ。再ビボタンヲ押セバ、再起動シマス。都市ノ暴走ノ影響ハ、ソレデ解消サレマス』
「はぁ……めちゃくちゃ難易度高いな」
「そうね。この子みたいに壊れて動けないわけじゃなく、動いてるゴーレムのボタンを押すのは難しいわね」
夜になって、レイアが人の姿に戻ったところで、ゴー助から話を聞くことにした。
なんとなく予想はしていたけど、やっぱりか。
前回、古代魔法王朝の中心部へ向かう巨大な門のところで襲ってきたゴーレムたちは、動き回られて解析できずにいた。
町で発見した銅と頭。動かなくなった状態だから、いくらでも解析できた。
門のところにいる連中は、今でも元気いっぱいだろう。
気付かれずに背後を取るのは無理。
攻撃を避けつつ背後を取るのも難しいだろう。だって一体じゃないからな。あいつらは。
ボタンがある蓋を開くのに、呪文を唱えながら触れる必要がある。
気付かれないように背後をとれても、呪文を唱えた時点で見つかるってね。
その呪文も、眠ったゴーレムと、起きているゴーレムで違うらしい。
『我が友よ、休息を与えん。プゥーオン』
これが呪文だ。
めちゃくちゃ早口で唱えないと、触れる前に逃げられてしまう。
「一難去ってまた一難」
「でも十歩ぐらいは前進できたわよ」
ま、謎だった部分が解決したのは、大きな一歩だよな。
『魔導ゴーレムヲ止メル方法、モウヒトツアリマス』
「もうひとつ? どうやるんだ?」
『壁ノ内部ニ、ウォールガーディアン、オヨビ魔導ゴーレムへ指示ヲ出スタメノ魔導装置ガアリマス。ソコガ都市ノ魔導装置ト連動シテ暴走シテイルノデス』
あの壁の中に魔導装置があるのか。
『じゃあ、都市の魔導装置と切り離せば、暴走、止まるかもしれないです?』
それまで姿を見せていなかったニーナが現れる。俺たちの会話はずっと聞いていたんだろう。
そうか。以前、アリューケの魔導装置も都市のそれを繋がってて不具合を起こしていたし、それで接続を切ったんだったよな。
なら、門の内側にある魔導装置も接続を切れば……。
『止マリマス。シカシ』
「え、しかし?」
『全テノガーディアンヤゴーレムガ対象デハアリマセン。管理区画内ノガーディアントゴーレムノミガ対象デス』
けど、その管理区画はひとつの魔導装置で数百メートル。
「門の付近の魔導装置を停止できれば、なんとかなりそうだな」
「そうね。別に全部のゴーレムを止める必要なんてないものね」
『なのです!』
少しだけ希望が見えたぞ。あとは。
「それで、都市の魔導装置の暴走を止める方法はわかるか、ゴー助」
『考エ中……考エ中……テヤンデェ、ガッテン、ピコーン』
「ぷふっ」
「ユタぁ。お前、変なこと教えるなよぉ」
「クククククク」
ピコーンと自ら言ったゴー助は、首を傾げ『不明デス』と答えた。
全然ピコーンじゃないし!
『暴走ヲ停止スル方法ハ、直接都市ノ魔導装置ヲゴ確認クダサイ』
「やっぱそうなるか。まぁ何はともあれ、行くしかないってことだな」
そのためにもまずは、門の警護をしているゴーレムを止めないとな。



