「あ、うまっ。塩で焼いただけなのに、めちゃくちゃ美味い」
「でしょ? 残りは塩漬けにして、容器ごと雪の中で保存すれば二ヵ月ぐらい持つわよ」
夜は湖で捕れた魚をさばいて、塩焼きにして食べた。
炭火焼した魚は脂がしっかり乗って、高値で取引されるのも納得の美味さだった。
約七十人で食べたが、魚の大きさもあって半身が残っている。
あとで塩漬け用の壺でもクラフトしておくか。
食後、さっそく壺をクラフトし、塩漬け作業は獣人族のおばさんたちにお任せ。
「すみません、お任せしてしまって」
「いいんだよ。あたしらにできることがあれば、なんでも言ってね」
「そうだよ。あんた、若いんだから無理し過ぎるんじゃないよ」
若いから無理するな、か。
前世では「若いんだからしっかり働け」って言われることの方が多かった気がする。
なんかいいな、無理するなって言葉。
けど、無理しなきゃいけないときはある!
今日、雪を溶かしもらった場所は、残念なことに、今、降っている雪が積もるだろう!
明日にすればよかったと少し後悔はしたが、基礎のクラフトも大事なんだ。
カーラには悪いけど、明日、また溶かしてもらおう。
そして溶かしたそばからガラスハウスを設置できるよう、今夜のうち気全部のパーツを完成させておきたい。
「じゃあ、志導くん。おやすみなさい」
「あ、レイア。食事の後片付け、ありがとう。じゃあおやすみ」
「おやすみぃ~、渡錬くん、アルトくん」
「アルトくんもおやすみ」
「うっす。おつかれとんとん」
今日からレイアは、エリサと同居することになった。
エリサの家は彼女の希望通りの造りにしてある。一階は手前に店舗、奥はキッチン・ダイニング。そして二階が寝室だ。
まぁ店舗と言っても、ここにお金の概念はない。それでも、彼女が錬金する薬は、これから必要になる機会もあるだろう。そういう意味では、当分の間、作り置きした薬を置く場所として利用すればいい。
エリサ自身もそう言って、この造りを望んだわけだし。
「残念だったなぁ、シド」
「何が?」
「何がって、レイアと二人っきりで、一つ屋根の下どころか、同じ部屋での同棲だったのに」
「同棲って、変な言い方するなよ。俺たちが同じ部屋で生活していたのは、他に場所がなかったからだ。あと、寒さをしのげる場所もこの部屋しかなかったからで」
「でもさお前、家だって万能クラフトスキルで作れたじゃん」
まぁ確かにそうだけどさ。
でも正直、人間二人とユタラプトル二頭、あとアルパディカだけの頃に、家を建てる必要性がまったくなかったんだよな。
あと、優先すべきことが他にもあったし。
食料の確保とかさ。
そんな話をベッドに潜り込んでしていると、気づけば寝落ちして朝になっていた。
「うぐおぉぉ。さっみぃ」
「嫌だなぁ。また積雪増えてるんじゃなかぁ」
さすがに一晩中、暖炉を点けておくわけにもいかず。朝は寒さで目が覚めてしまった。
集合住宅のスライム暖房、ここでも使えないかなぁ。
礼拝堂へ行くと、そこは暖かく。
「おはよう、ユラ。もしかして一晩中、火を点けてた?」
「おはよう、志導。もちろんよ」
もちろん、か。
藁の寝床では、ユタがまだ眠っていた。
「そうだ。アッパーおじさんがユラたちに、あったか石を用意してやるって言ってたよ」
「本当? よかったわ。寒いのは凄く苦手なのよ」
「みたいだね。今まで冬はどうしていたんだ?」
「古代魔法王朝の土地に来たのが五年前だけど、それよりも前はもっと南に住んでいたのよ。雪も降らないようなね。だけど汚染された魔素の量が凄く多くなってね」
それで仕方なく、少しでも汚染の少ない地域を探して北上したのだと彼女は話す。
アッパーおじさんと知り合ったのも、古代魔法王朝の土地に入ってから。つまり付き合いは五年ぐらいということだ。
もっと長いのかと思ったけど、案外そうでもないんだな。
「ふわぁ~。おはよう、志導くん。ユラもおはよ」
「レイア、おはよう」
「おはよう、レイア。今日もエリサは起きてこないのね」
「あと一時間は無理かも」
その一時間の間に、俺たちが朝食の用意をする。
と言っても、獣人族のおばさんたちのおかげで、朝食の用意はあっという間にできてしまうんだけど。
エリサには悪いが、早起きしてもらわないとな。
『おはよう、なの』
「ニーナ。おはよう。もうひとりの土地神様はどうだい?」
『また、寝てるの』
「はは。エリサみたいだな」
そう言うと、ニーナは小さく笑った。
それから俺たちは、魔石の中で眠る土地神様にも朝の挨拶をする。
だんだんとみんなが起きてきて、赤ん坊を抱いたお母さんたちが順番に、魔石の中の土地神様へと挨拶にやって来た。赤ん坊は自分たちが何をすべきなのか知っているようで、近づいただけで魔石をペチペチと叩いている。
そのたびに、魔石から淡い緑の光が漏れた。
次にやって来たのはアルパディカ一家。彼らはちゃーんと、自分たちの朝食を収穫してきていた。
しかも既に洗った状態だ。
で、最後に姿を現したのが。
「ううぅぅん……」
「お、エリサが起きてきたな」
「お寝坊お姉ちゃんだ~」
「ほらぁ、お姉ちゃんこっちに座ってぇ」
「ううぅぅぅん」
寝ぼけ眼のエリサが席に着いたところで、もう一頭の寝坊助も起きてきた。
「ンアァ」
「ユタ、ご飯だぞ」
「ゴアン……アッ! ゴハン!!」
ご飯、と聞いただけで、こちらは完全に目が覚めたようだ。食い意地の勝利だな。
「よし、みんな。それじゃあいただきますをしよう」
「「は~い」」
「今日もこうしてご飯が食べられるのは、ニーナがずっとこの町を守ってくれたおかげだ。ニーナ、ありがとう」
「ありがとう、ニーナちゃん」「ありがと~」「ありがとうございます、ニーナ様」
みんながニーナにお礼を言う。それを聞いてニーナが照れたように笑い、ぽぉっと温かい光を放つ。
ニーナ曰く、その光は神力が増えている証なのだとか。
朝と夜はかならず、こうしてニーナへ感謝の祈りを捧げる。彼女の神力を満たすために。
そうすればニーナは消えない。ずっとこの町を守ってくれる。
もうひとりの土地神様も、そうなって欲しいと思う。そのためにも、目を覚ましたらまずは名前を聞かなきゃな。祈りを捧げるための名前を。
「志導くん。今日の予定は?」
月が沈んでしまったので、レイアは猫の姿に変身していた。
毎朝、急いで朝食を用意し、月が沈む前に猫に変身できるよう、部屋で待機する毎日を送っている。
ただ、夏になると日の入りが速くなるから、食事の用意もできなくなるだろうって。
まぁそこはおばさんたちと相談だな。きっと快く引き受けてくれるだろう。
「今日の予定は、いっぱいあります。みんなの手伝いが必要だ。よろしく頼むよ」
「もちろんよ、志導くん。猫の手が必要な時は言ってね」
「あぁ、もちろんだよレイア。猫の手だって借りたいぐらいだ」
まずはガラスハウスを設置して、中の土を耕して、それから野菜の種を蒔いて。
アルトとバサラには、狩りにも行って欲しいな。人が増えた分、保存用の肉も足りなくなるだろうし。
あぁ、そうだ。鉄を集めないと。
いつまでみんなが集まって食事をするのか、まだ考えていない。
各家庭で食事を作るにしろ、ここで全員分を作るようにするにしろ、鍋が足りない。
町で鉄をかき集めてクラフトしよう。
よし。俺の今日の予定は、
一、ガラスハウスの設置。
二、鉄集め。
三、鍋のクラフトだ。
「でしょ? 残りは塩漬けにして、容器ごと雪の中で保存すれば二ヵ月ぐらい持つわよ」
夜は湖で捕れた魚をさばいて、塩焼きにして食べた。
炭火焼した魚は脂がしっかり乗って、高値で取引されるのも納得の美味さだった。
約七十人で食べたが、魚の大きさもあって半身が残っている。
あとで塩漬け用の壺でもクラフトしておくか。
食後、さっそく壺をクラフトし、塩漬け作業は獣人族のおばさんたちにお任せ。
「すみません、お任せしてしまって」
「いいんだよ。あたしらにできることがあれば、なんでも言ってね」
「そうだよ。あんた、若いんだから無理し過ぎるんじゃないよ」
若いから無理するな、か。
前世では「若いんだからしっかり働け」って言われることの方が多かった気がする。
なんかいいな、無理するなって言葉。
けど、無理しなきゃいけないときはある!
今日、雪を溶かしもらった場所は、残念なことに、今、降っている雪が積もるだろう!
明日にすればよかったと少し後悔はしたが、基礎のクラフトも大事なんだ。
カーラには悪いけど、明日、また溶かしてもらおう。
そして溶かしたそばからガラスハウスを設置できるよう、今夜のうち気全部のパーツを完成させておきたい。
「じゃあ、志導くん。おやすみなさい」
「あ、レイア。食事の後片付け、ありがとう。じゃあおやすみ」
「おやすみぃ~、渡錬くん、アルトくん」
「アルトくんもおやすみ」
「うっす。おつかれとんとん」
今日からレイアは、エリサと同居することになった。
エリサの家は彼女の希望通りの造りにしてある。一階は手前に店舗、奥はキッチン・ダイニング。そして二階が寝室だ。
まぁ店舗と言っても、ここにお金の概念はない。それでも、彼女が錬金する薬は、これから必要になる機会もあるだろう。そういう意味では、当分の間、作り置きした薬を置く場所として利用すればいい。
エリサ自身もそう言って、この造りを望んだわけだし。
「残念だったなぁ、シド」
「何が?」
「何がって、レイアと二人っきりで、一つ屋根の下どころか、同じ部屋での同棲だったのに」
「同棲って、変な言い方するなよ。俺たちが同じ部屋で生活していたのは、他に場所がなかったからだ。あと、寒さをしのげる場所もこの部屋しかなかったからで」
「でもさお前、家だって万能クラフトスキルで作れたじゃん」
まぁ確かにそうだけどさ。
でも正直、人間二人とユタラプトル二頭、あとアルパディカだけの頃に、家を建てる必要性がまったくなかったんだよな。
あと、優先すべきことが他にもあったし。
食料の確保とかさ。
そんな話をベッドに潜り込んでしていると、気づけば寝落ちして朝になっていた。
「うぐおぉぉ。さっみぃ」
「嫌だなぁ。また積雪増えてるんじゃなかぁ」
さすがに一晩中、暖炉を点けておくわけにもいかず。朝は寒さで目が覚めてしまった。
集合住宅のスライム暖房、ここでも使えないかなぁ。
礼拝堂へ行くと、そこは暖かく。
「おはよう、ユラ。もしかして一晩中、火を点けてた?」
「おはよう、志導。もちろんよ」
もちろん、か。
藁の寝床では、ユタがまだ眠っていた。
「そうだ。アッパーおじさんがユラたちに、あったか石を用意してやるって言ってたよ」
「本当? よかったわ。寒いのは凄く苦手なのよ」
「みたいだね。今まで冬はどうしていたんだ?」
「古代魔法王朝の土地に来たのが五年前だけど、それよりも前はもっと南に住んでいたのよ。雪も降らないようなね。だけど汚染された魔素の量が凄く多くなってね」
それで仕方なく、少しでも汚染の少ない地域を探して北上したのだと彼女は話す。
アッパーおじさんと知り合ったのも、古代魔法王朝の土地に入ってから。つまり付き合いは五年ぐらいということだ。
もっと長いのかと思ったけど、案外そうでもないんだな。
「ふわぁ~。おはよう、志導くん。ユラもおはよ」
「レイア、おはよう」
「おはよう、レイア。今日もエリサは起きてこないのね」
「あと一時間は無理かも」
その一時間の間に、俺たちが朝食の用意をする。
と言っても、獣人族のおばさんたちのおかげで、朝食の用意はあっという間にできてしまうんだけど。
エリサには悪いが、早起きしてもらわないとな。
『おはよう、なの』
「ニーナ。おはよう。もうひとりの土地神様はどうだい?」
『また、寝てるの』
「はは。エリサみたいだな」
そう言うと、ニーナは小さく笑った。
それから俺たちは、魔石の中で眠る土地神様にも朝の挨拶をする。
だんだんとみんなが起きてきて、赤ん坊を抱いたお母さんたちが順番に、魔石の中の土地神様へと挨拶にやって来た。赤ん坊は自分たちが何をすべきなのか知っているようで、近づいただけで魔石をペチペチと叩いている。
そのたびに、魔石から淡い緑の光が漏れた。
次にやって来たのはアルパディカ一家。彼らはちゃーんと、自分たちの朝食を収穫してきていた。
しかも既に洗った状態だ。
で、最後に姿を現したのが。
「ううぅぅん……」
「お、エリサが起きてきたな」
「お寝坊お姉ちゃんだ~」
「ほらぁ、お姉ちゃんこっちに座ってぇ」
「ううぅぅぅん」
寝ぼけ眼のエリサが席に着いたところで、もう一頭の寝坊助も起きてきた。
「ンアァ」
「ユタ、ご飯だぞ」
「ゴアン……アッ! ゴハン!!」
ご飯、と聞いただけで、こちらは完全に目が覚めたようだ。食い意地の勝利だな。
「よし、みんな。それじゃあいただきますをしよう」
「「は~い」」
「今日もこうしてご飯が食べられるのは、ニーナがずっとこの町を守ってくれたおかげだ。ニーナ、ありがとう」
「ありがとう、ニーナちゃん」「ありがと~」「ありがとうございます、ニーナ様」
みんながニーナにお礼を言う。それを聞いてニーナが照れたように笑い、ぽぉっと温かい光を放つ。
ニーナ曰く、その光は神力が増えている証なのだとか。
朝と夜はかならず、こうしてニーナへ感謝の祈りを捧げる。彼女の神力を満たすために。
そうすればニーナは消えない。ずっとこの町を守ってくれる。
もうひとりの土地神様も、そうなって欲しいと思う。そのためにも、目を覚ましたらまずは名前を聞かなきゃな。祈りを捧げるための名前を。
「志導くん。今日の予定は?」
月が沈んでしまったので、レイアは猫の姿に変身していた。
毎朝、急いで朝食を用意し、月が沈む前に猫に変身できるよう、部屋で待機する毎日を送っている。
ただ、夏になると日の入りが速くなるから、食事の用意もできなくなるだろうって。
まぁそこはおばさんたちと相談だな。きっと快く引き受けてくれるだろう。
「今日の予定は、いっぱいあります。みんなの手伝いが必要だ。よろしく頼むよ」
「もちろんよ、志導くん。猫の手が必要な時は言ってね」
「あぁ、もちろんだよレイア。猫の手だって借りたいぐらいだ」
まずはガラスハウスを設置して、中の土を耕して、それから野菜の種を蒔いて。
アルトとバサラには、狩りにも行って欲しいな。人が増えた分、保存用の肉も足りなくなるだろうし。
あぁ、そうだ。鉄を集めないと。
いつまでみんなが集まって食事をするのか、まだ考えていない。
各家庭で食事を作るにしろ、ここで全員分を作るようにするにしろ、鍋が足りない。
町で鉄をかき集めてクラフトしよう。
よし。俺の今日の予定は、
一、ガラスハウスの設置。
二、鉄集め。
三、鍋のクラフトだ。



