【書籍化】転移した先が滅びかけ!?〜万能クラフトと解析眼で異世界再生スローライフ~

「じゃあ行ってくるぜ」

 そう言ったアッパーおじさんは、燃えていた。

「うわあぁぁぁ、おじ、おじさん!?」
「なんでぇ?」
「いやなんでぇって、何で燃えてるんだよ!?」
「あ? 雪を溶かして道を作るためだろい」

 確かに溶けている。
 全身炎に包まれたアッパーおじさんの周辺は雪が解け、地面が見えていた。

「おっし、んじゃ行くぜ。ディア、頼むぞ」
「任せられよ、夫殿」

 ディアに頼む? いったい何を。
 そう思っていると、燃えているアッパーおじさんがすたすた歩きだす。
 その後ろをやや遅れてディアが。
 すると、アッパーおじさんの炎で溶けた雪が、ピキピキと凍っていくではないか。
 しかも凍っているのは壁になる部分だけ。
 なるほど。これで溶けた水分で足元が水浸しになるのを防いでいるのか。
 
「でもなんでおじさんは燃えているんだ?」
「志導くん、あれ、フレイム・ボディっていう炎属性の魔法よ。炎を纏って、触れるものにダメージを与えるっていう。まさかこんな使い方するなんて、思わなかったけど」

 今はまだ、猫の姿のレイアが教えてくれた。
 まだ誰もこんな使い方、思いつかないよな。

 雪原と化した場所を、アッパーおじさんが先導する形で進んでいく。

「ユタ坊とユラに、あったか石を用意してやんねぇとな」
「あったか石?」
「炎を込めた魔石のことだ、志導殿。それを身につけていれば、込めた炎が消えるまでは暖かいのでな」
「あ~……ユタもユラも、暖炉の前から動かないもんなぁ。あ、それって町の雑貨屋に置いてあった魔石とは違うのか?」
「火を出すか、込めたまま熱だけ伝えるかの違げぇだな。わしが言ってんのは、後者だ。店に置いてんのは前者のほうだぜ」

 ふぅん。そのあったか石はカーラが作れるそうで、必要なのは魔石だけ。
 町の店にあるのは古いものだから、壊れる可能性もある。壊れると、辺りに炎をぶちまける……と。
 ヤバいじゃん。

 湖に到着し、持ってきた木材と瓦礫で小屋をクラフトする。
 入口はアルパディカが通れるよう、やや大きめに。窓はなし。縦横十センチの空気穴を三カ所ぐらい空けた。
 あと、暖炉も用意。
 薪も十分用意し、アッパーおじさんが火を点けた。

「じゃ、レイア。荷物ここに置いておくから」
「えぇ、ありがとう。志導くん」

 少しでもエリクサーポーションを節約するために、ここまでは猫の姿で来た。
 午前中に二滴、午後に二滴使って、その間に狩れるだけ狩る。
 狩った貝は、昼過ぎに俺が回収しにくるから、それまで置いておいてもらう。

「じゃあみんな、よろしく」
「おぅ。任せとけ」
「寒そうだなぁ」
「そのために志導くんが小屋と暖炉を用意してくれたんでしょ。さ、冒険者の腕の見せどころよ」
「そうそう。冒険者としてのアルトの活躍を、期待してるから」

 その雄姿を俺は水に、ディアと一緒にアリューケの町へと戻った。





「カーラもフレイム・ボディってのできるのか」
「あぁ、もちろんさ」

 町へ戻ってくると、アッパーおじさんが作ったのとは違う道ができていた。それを作ったのは、奥さんのひとり、カーラだ。
 彼女の得意属性は炎。アッパーおじさんと同じ魔法は使えるってことか。
 カーラが作った道を、ディアが凍らせていく。
 その道を通って、みんな畑の方へと向かう。
 俺も今のうちに、ガラスハウスを建てるための枠組みをクラフトしておこう。

「カーラ。畑の雪も溶かしてくれないか? ガラスハウスを追加で建てるスペースが欲しいんだ」
「お安い御用よ。ニンジンハウスも増やしてくれるならね」

 そう言ってカーラがウィンクする。
 はぁ……ま、一棟ぐらいならいいか。

 瓦礫で枠組みを建てるための基礎を作って、ぐるっと畑を囲んでおく。同時に枠組みもクラフトしておいて、完成品はインベントリの中へ入れたままに。
 ガラスの材料が揃えばクラフトし、枠組みと合体させて基礎のところへ設置するだけだ。
 元々あったガラスハウスは全部で十棟。
 ジャガイモ、タマネギ、キャベツ、カボチャ、トウモロコシで一棟ずつ、トマトとナス、ピーマンで一棟、サトウ草と枝豆で一棟、そしてニンジンは三棟ある。
 
「渡錬くんっ。お願いがあるんだけどぉ」
「ん? お願いって、なんだい、エリサ」
「うん。薬草用のガラスハウスも欲しくって」

 薬草か。それは絶対にあった方がいい。

「志導殿。里から種を持って来たんだ。それも頼めるだろうか」
「食材が増えるのは大歓迎さ。何の種だい?」
「サツマイモと、それから……」

 サツマイモ、それからめちゃくちゃ嬉しいのは、コショウの種だ。他にもレタスとキュウリ、あとはここでも採れるニンジンやタマネギの種だ。
 
「よぉし。ジャガイモ畑から、種イモを掘り起こしておいてくれるか~」
「アタシやっとく。ミミ、ルチェ、手伝って」
「「は~い」」
「じゃあ他の人は、収穫できそうな野菜を。あ、種も必要だし、わざといくつかは残しておいてね」

 そうして収穫した野菜は、教会横に新しく建てた食糧庫へと入れておく。
 畑の空いたスペースにはすぐ次の種を蒔いた。

 一気に人が増えたし、またしばらく贅沢はしないようにしなきゃな。

 獣人族のおばさんたちが昼食を用意してくれた。肉がたっぷり、野菜少しのあったかスープ。
 それを食べ、もうひと働きした後で湖へ。

「おーい。おつかれさ~んって、随分狩ったなぁ」
 
 小屋の脇に山積みされていた貝は、ざっと五十個はあっただろうか。
 貝柱も干しておけば、良い保存食にもなる。
 それらを全部インベントリに入れると、猫の姿に戻っていたレイアがそばへやって来た。

「お疲れ、レイア。寒さ、大丈夫だったか?」
「うん。小屋の中が暖かかったし、大丈夫。それよりね、志導くん。魚が捕れたの」
「お! 今夜は魚料理か。いいねぇ」
「ふふ。白身で美味しい魚なの」

 湖の魚なら淡水だし、ヤマメとかイワナとか、そういう感じの魚だろうか?
 レイアに連れられて小屋の反対側へ行くと、雪でこんもりしたものが。
 なるほど。天然の冷凍庫か。しっかし、いくらなんでも雪、積み上げ過ぎじゃないか?
 軽自動車なみの山になってんだけど。

 その雪を掻き分けると、出てきたのは……一匹。

「あの、レイアさん」
「なぁに、志導くん」
「これ……魚?」
「えぇ。グレイトロックフィッシュよ」

 いかつい名前だな。ロックフィッシュ……イワナかよ!
 いや、それよりも。
 雪の下から出てきたのは、体長三メートルを超す巨大魚。
 いかついのは名前だけでなく、顔もだ。牙が凄い。

「モンスター?」
「そう。でも美味しいのよ」
「聖都に持って行けば、これ一匹で二ヵ月分の宿泊費になるんだぜ」
 
 とアルトも笑顔だ。
 この世界に普通の動物とか魚とかを食べる習慣はないのかよ。