「ササササ、ササ、サ、サム」
「私、もうここから一歩も動かないわ」
教会には新しく、大きめの暖炉をクラフトして設置した。そのために、壁を一カ所壊すことになったけどね。
ユタとユラが、その暖炉の前を占拠する。
よっぽど寒かったんだな。
まぁ人間や獣人族と違って服を着るわけにもいかないし、アルパディカのように毛皮があるわけでもない。寒さには弱いんだろうな。
動きを阻害しないよう、ポンチョみたいなのなら着れるんじゃないかな?
今度クラフトしてやろう。
「おつかれ、アルト。どうだった?」
「はぁ……残念なことに、鈴木はいなかったよ。あいつ、奴隷商人に雇われただけの盗賊だったみたいでさ」
「獣人族の里にぁ、奴隷商人どもが活動拠点にしてたようだぜ」
活動拠点か。まさか周辺の里を!?
頭に浮かんだことが顔に出たのか、バサラが俺を見て頷いた。
「獣人族は、なるべく人間族に見つからないよう、人里から離れた、人間に知られていない土地神様を探して、そこに里を築いているんだ。オレたちの里を拠点にして、他の獣人族の里を襲うつもりだったのだろう」
「じゃあ、他の里が危ないんじゃ!?」
「ん~、まぁ大丈夫じゃないかな。そこにいた奴隷商人とか雇われ傭兵はみんな、ぶっ飛ばしたし」
アルトがそう言って、朝食のスープを飲み干す。
急だったけど、万能クラフトのおかげで朝食も一瞬で作れた。ただし、やっぱり手作り料理のような味にはならない。そこはまぁ、俺の料理の腕前に直結しているんだろうな。調味料の量なんかは、ちゃんと指定しなきゃいけなかったし。
「ふぅ~。ひっさしぶりに暖かい物食えて、やっと落ち着いたぁ~。で、誰の手作り?」
ニコニコ顔で尋ねてくるアルトに、俺、と言うように自分を指さして見せた。
途端、アルトの顔から笑顔が消える。
「マジで?」
「マジだ」
何が不満なんだよ。
「嫌だぁ~っ。野郎の手作りより、女の子の手料理の方がいい~っ」
「じゃあ二度と作ってやらないからな」
「もちろんさ! エリサァ、レイアァ。お昼は二人の手料理にしてくれよぉ。あ、パティでもいいよ」
アルトがそう言った時、バサラの顔色が青ざめたのを、俺は見逃さなかった。
「アタシ? うん、いいよ!」
バサラが無言で首を振っている。
これは……ヤバいのか。
「じゃ、アルトの分はパティに任せよう」
「志導も食べてよぉ~」
「ごめん、俺はレイアの料理の味をスキルで再現するために、彼女の手料理を食べなきゃいけないんだ」
「え、し、志導くん?」
「そういう個人ミッションを設定したからさ」
頼むよ、レイア――と小声で伝え、バサラを見るようにと目配せした。
それで察してくれたようだ。
苦笑いを浮かべたレイアが「ミッションだものね」と話を合わせてくれる。
「ミッション? なんだよ、それ」
「ん? あー、俺のスキル。ミッション・トレーナって言ってさ」
アルトにもスキルのことを簡単に話してやる。
すると目の色を変えて「それ俺にも!」と。さらにもうひとり、バサラもだ。
「仲間を守るため、オレはもっと強くなりたい。いや、ならなければならないのだ」
「俺も似たようなもん。エリサや、あとお前を守ってやらないとな」
「え、アルトくん、私は?」
「え? レイアって守ってやらなきゃいけないほど、か弱かったっけ?」
「ひ、酷い! いいわよ。私だってアルトくんなんか、守ってあげないから」
ははは。なんかこの雰囲気も懐かしいなぁ。
ここに、元クラスメイトが四人揃った。俺だけおじさんのままだけど、それでも――あの頃のことを思い出す。
「そういえばさ、水戸は貴族だっていってたけど、頻繁に会ったりしてたのか?」
「あぁ、圭太かぁ。それがあんまりでさ」
水戸圭太。俺にとって友人と呼べる、もうひとりの奴だ。
さすがに貴族と冒険者――というか平民だと、なかなか会う機会がないんだと。
「俺が圭太と再会したのは一年前でさ。たまたま圭太の実家の依頼で、護衛を引き受けてね」
「あぁ、そこでお互い顔を見て思い出したのか」
「そ。顔の作りは前のまんまなんだよなぁ、俺たち。レイアと会った時も、すぐわかったろ?」
すみません。しばらく気づきませんでした。
「それから二回ぐらい、圭太が無理やり護衛依頼で俺を指名してくれたけど。あとは手紙で二回ほどな」
「そっか」
「あいつ、将来どうすんのかなぁ。なんか自分も冒険者になりたいって言ってたんだけど」
「んー、次男だっけ? 爵位継げなかったら、どうするんだろう」
「成人したら家を追い出されるとか言ってたんだぜ」
「うわっ。思ったよりハードモードだな」
そりゃ大変だ。成人って言ったら……ん?
「こっちって、何歳で成人なんだ?」
「ん? 十七だけど」
「……アルト、お前、今何歳だ?」
「え? 十七だけ……あ」
水戸……大丈夫なんだろうか……。
「と、心配したところで、この雪じゃもう長距離移動は無理だろうなぁ」
「だな」
朝食を終え、俺とアルトは教会前に立って辺りを見渡した。
この一時間ほどの間に、まぁた雪が増えてる。さっきの倍だ。
空を見上げれば、大きな雪がどんどこ降ってきているし。
「こりゃしばらくは止まねぇだろうな」
「アッパーおじさん。しばらくってどのくらい?」
「まぁ明日までは降り続けるだろうよ。そうさなぁ、一メートルで済めばいいけどなぁ」
い、一メートルで済めばって……。
関東住みだった身としては、十センチでもとんでもないのに。
まぁ、積もるとは聞いていたから心の準備はできているものの……いや、できてない!
「マズい。薪が足りないかも」
「え? それマズいじゃん」
「あ? わしらはいいが、お前ら、凍え死ぬぞ」
家を建てたとき、外壁は瓦礫を使ったけど、床は木材だ。
それと、壁を瓦礫にしただけだと冷たくなってしまい、暖房の利きも悪くなった。その対策として、壁を二重にして、内側は木材にしてある。
おかげで、インベントリ内に残っている丸太が、大分減ってしまった。
「アルト、手伝ってくれ」
「えぇ~。帰ってきたばっかなのにぃ」
「志導殿。オレも手伝おう。これだけの家を建てたから、木材が足りなくなったのだろう? なら、オレたちが手伝うべきだ」
「助かるよ、バサラ。ニーナ、いいかな?」
ふわふわ~っと光が飛んできて、ニーナが姿を見せる。
『獣人の里からお引越ししてきた土地神の子、魔石から出てこないですの』
「土地神……そうだ、すっかり忘れてた。うぅん……ごめん、ニーナ。あとでその土地神様の様子も見るから、今はひとまず、伐採してもいい木が知りたいんだ」
そう話すと、ニーナは空を見上げてから頷いた。
『きっといっぱい積もるです』
「いきなりくるんだなぁ。大量の薪を用意しないとな」
町の中で生えに生えまくった木は、若い木を残して伐採していいとニーナはいう。
ニーナに印をつけてもらった木を、アルトと獣人族の男たちが手分けして伐採いていく。
彼らには『木の伐採ミッション』をスキルで発動させ、ノルマはひとり五本ずつにした。
伐採された木を、今度は俺がインベントリに収納。万能スキルでどんどん、薪のサイズへとカットしていった。
「バッシュ!」
アルトの気合を入れた声と共に、木が倒れる。
「アルト。お前、何やってんの?」
「え? 木の伐採だけど?」
「じゃあ、その手に持ってるのはなんだ?」
「え? 剣だけど?」
……レイアといい、こいつといい。もしかしてこの世界じゃ、木の伐採には剣がデフォルト道具なのか?
せっかく斧をクラフトしたのに、お前、足元の置いたままじゃん。
そう思っていると、向こうでは小気味のいいコーン、コーンという音が聞こえた。
バサラたち獣人族は、斧を使ってくれているようだ。
これだよ、これこれ。
木の伐採っていったら、この木こりスタイルだろ!
「な、バサラ。木を切る道具っていったら、やっぱり斧だよな?」
「え? そりゃまぁ、普通は斧だと思うが……」
そう答えるバサラが、剣を使って木を伐り倒すアルトを見つめた。
どことなくバサラがドン引きしているのがわかる。
やっぱりレイアとアルトの二人がおかしいんだ。
うん。
「私、もうここから一歩も動かないわ」
教会には新しく、大きめの暖炉をクラフトして設置した。そのために、壁を一カ所壊すことになったけどね。
ユタとユラが、その暖炉の前を占拠する。
よっぽど寒かったんだな。
まぁ人間や獣人族と違って服を着るわけにもいかないし、アルパディカのように毛皮があるわけでもない。寒さには弱いんだろうな。
動きを阻害しないよう、ポンチョみたいなのなら着れるんじゃないかな?
今度クラフトしてやろう。
「おつかれ、アルト。どうだった?」
「はぁ……残念なことに、鈴木はいなかったよ。あいつ、奴隷商人に雇われただけの盗賊だったみたいでさ」
「獣人族の里にぁ、奴隷商人どもが活動拠点にしてたようだぜ」
活動拠点か。まさか周辺の里を!?
頭に浮かんだことが顔に出たのか、バサラが俺を見て頷いた。
「獣人族は、なるべく人間族に見つからないよう、人里から離れた、人間に知られていない土地神様を探して、そこに里を築いているんだ。オレたちの里を拠点にして、他の獣人族の里を襲うつもりだったのだろう」
「じゃあ、他の里が危ないんじゃ!?」
「ん~、まぁ大丈夫じゃないかな。そこにいた奴隷商人とか雇われ傭兵はみんな、ぶっ飛ばしたし」
アルトがそう言って、朝食のスープを飲み干す。
急だったけど、万能クラフトのおかげで朝食も一瞬で作れた。ただし、やっぱり手作り料理のような味にはならない。そこはまぁ、俺の料理の腕前に直結しているんだろうな。調味料の量なんかは、ちゃんと指定しなきゃいけなかったし。
「ふぅ~。ひっさしぶりに暖かい物食えて、やっと落ち着いたぁ~。で、誰の手作り?」
ニコニコ顔で尋ねてくるアルトに、俺、と言うように自分を指さして見せた。
途端、アルトの顔から笑顔が消える。
「マジで?」
「マジだ」
何が不満なんだよ。
「嫌だぁ~っ。野郎の手作りより、女の子の手料理の方がいい~っ」
「じゃあ二度と作ってやらないからな」
「もちろんさ! エリサァ、レイアァ。お昼は二人の手料理にしてくれよぉ。あ、パティでもいいよ」
アルトがそう言った時、バサラの顔色が青ざめたのを、俺は見逃さなかった。
「アタシ? うん、いいよ!」
バサラが無言で首を振っている。
これは……ヤバいのか。
「じゃ、アルトの分はパティに任せよう」
「志導も食べてよぉ~」
「ごめん、俺はレイアの料理の味をスキルで再現するために、彼女の手料理を食べなきゃいけないんだ」
「え、し、志導くん?」
「そういう個人ミッションを設定したからさ」
頼むよ、レイア――と小声で伝え、バサラを見るようにと目配せした。
それで察してくれたようだ。
苦笑いを浮かべたレイアが「ミッションだものね」と話を合わせてくれる。
「ミッション? なんだよ、それ」
「ん? あー、俺のスキル。ミッション・トレーナって言ってさ」
アルトにもスキルのことを簡単に話してやる。
すると目の色を変えて「それ俺にも!」と。さらにもうひとり、バサラもだ。
「仲間を守るため、オレはもっと強くなりたい。いや、ならなければならないのだ」
「俺も似たようなもん。エリサや、あとお前を守ってやらないとな」
「え、アルトくん、私は?」
「え? レイアって守ってやらなきゃいけないほど、か弱かったっけ?」
「ひ、酷い! いいわよ。私だってアルトくんなんか、守ってあげないから」
ははは。なんかこの雰囲気も懐かしいなぁ。
ここに、元クラスメイトが四人揃った。俺だけおじさんのままだけど、それでも――あの頃のことを思い出す。
「そういえばさ、水戸は貴族だっていってたけど、頻繁に会ったりしてたのか?」
「あぁ、圭太かぁ。それがあんまりでさ」
水戸圭太。俺にとって友人と呼べる、もうひとりの奴だ。
さすがに貴族と冒険者――というか平民だと、なかなか会う機会がないんだと。
「俺が圭太と再会したのは一年前でさ。たまたま圭太の実家の依頼で、護衛を引き受けてね」
「あぁ、そこでお互い顔を見て思い出したのか」
「そ。顔の作りは前のまんまなんだよなぁ、俺たち。レイアと会った時も、すぐわかったろ?」
すみません。しばらく気づきませんでした。
「それから二回ぐらい、圭太が無理やり護衛依頼で俺を指名してくれたけど。あとは手紙で二回ほどな」
「そっか」
「あいつ、将来どうすんのかなぁ。なんか自分も冒険者になりたいって言ってたんだけど」
「んー、次男だっけ? 爵位継げなかったら、どうするんだろう」
「成人したら家を追い出されるとか言ってたんだぜ」
「うわっ。思ったよりハードモードだな」
そりゃ大変だ。成人って言ったら……ん?
「こっちって、何歳で成人なんだ?」
「ん? 十七だけど」
「……アルト、お前、今何歳だ?」
「え? 十七だけ……あ」
水戸……大丈夫なんだろうか……。
「と、心配したところで、この雪じゃもう長距離移動は無理だろうなぁ」
「だな」
朝食を終え、俺とアルトは教会前に立って辺りを見渡した。
この一時間ほどの間に、まぁた雪が増えてる。さっきの倍だ。
空を見上げれば、大きな雪がどんどこ降ってきているし。
「こりゃしばらくは止まねぇだろうな」
「アッパーおじさん。しばらくってどのくらい?」
「まぁ明日までは降り続けるだろうよ。そうさなぁ、一メートルで済めばいいけどなぁ」
い、一メートルで済めばって……。
関東住みだった身としては、十センチでもとんでもないのに。
まぁ、積もるとは聞いていたから心の準備はできているものの……いや、できてない!
「マズい。薪が足りないかも」
「え? それマズいじゃん」
「あ? わしらはいいが、お前ら、凍え死ぬぞ」
家を建てたとき、外壁は瓦礫を使ったけど、床は木材だ。
それと、壁を瓦礫にしただけだと冷たくなってしまい、暖房の利きも悪くなった。その対策として、壁を二重にして、内側は木材にしてある。
おかげで、インベントリ内に残っている丸太が、大分減ってしまった。
「アルト、手伝ってくれ」
「えぇ~。帰ってきたばっかなのにぃ」
「志導殿。オレも手伝おう。これだけの家を建てたから、木材が足りなくなったのだろう? なら、オレたちが手伝うべきだ」
「助かるよ、バサラ。ニーナ、いいかな?」
ふわふわ~っと光が飛んできて、ニーナが姿を見せる。
『獣人の里からお引越ししてきた土地神の子、魔石から出てこないですの』
「土地神……そうだ、すっかり忘れてた。うぅん……ごめん、ニーナ。あとでその土地神様の様子も見るから、今はひとまず、伐採してもいい木が知りたいんだ」
そう話すと、ニーナは空を見上げてから頷いた。
『きっといっぱい積もるです』
「いきなりくるんだなぁ。大量の薪を用意しないとな」
町の中で生えに生えまくった木は、若い木を残して伐採していいとニーナはいう。
ニーナに印をつけてもらった木を、アルトと獣人族の男たちが手分けして伐採いていく。
彼らには『木の伐採ミッション』をスキルで発動させ、ノルマはひとり五本ずつにした。
伐採された木を、今度は俺がインベントリに収納。万能スキルでどんどん、薪のサイズへとカットしていった。
「バッシュ!」
アルトの気合を入れた声と共に、木が倒れる。
「アルト。お前、何やってんの?」
「え? 木の伐採だけど?」
「じゃあ、その手に持ってるのはなんだ?」
「え? 剣だけど?」
……レイアといい、こいつといい。もしかしてこの世界じゃ、木の伐採には剣がデフォルト道具なのか?
せっかく斧をクラフトしたのに、お前、足元の置いたままじゃん。
そう思っていると、向こうでは小気味のいいコーン、コーンという音が聞こえた。
バサラたち獣人族は、斧を使ってくれているようだ。
これだよ、これこれ。
木の伐採っていったら、この木こりスタイルだろ!
「な、バサラ。木を切る道具っていったら、やっぱり斧だよな?」
「え? そりゃまぁ、普通は斧だと思うが……」
そう答えるバサラが、剣を使って木を伐り倒すアルトを見つめた。
どことなくバサラがドン引きしているのがわかる。
やっぱりレイアとアルトの二人がおかしいんだ。
うん。



