まずは家の基礎をクラフトして設置する。その基礎に、今度は瓦礫で作った土管を、廊下や部屋になる部分に満遍なく行き渡るように設置。この土管が、スライムの散歩コースになるそうだ。
まぁ散歩というか、循環?
そして水の出し入れができるよう、一カ所だけスライムが数匹入れる程度の小さな部屋を基礎に埋め込んだ。
「水辺のスライムは、乾くと死んじゃうの」
「か、乾くだけで死ぬのか……」
スライムの弱小っぷりが、俺の予想を超えていた。
エリサがそんなスライムを一匹箱から取り出し、何かやっている。
――と思ったら、スライムが光りだした!?
「ど、どうなっているんだ?」
「エリちゃんがスライムをテイムしたのよ」
「テイムって、スキルを持っていたのか!?」
レイアは頷き、【錬金術】と風魔法の【カッター】、【テイミング】の三つのスキルをエリサは持っていると教えてくれた。
スライムをテイムして、命令するのか。土管の中をぐるぐる巡回しろって。
あー、いや。彼女風に言うと散歩、か。
土管は一番大きなスライムのサイズに合わせて作ってある。だから土管の中で跳ねることはできない。前進あるのみ。
あとは一方通行になるよう、スライム部屋のスタート地点の土管は床の高さに合わせて接合。逆に部屋へと戻るゴールの方は少し高い位置につける。
「あら、スライムをテイムしたのね~」
「パーラ。子供たちは?」
「今はルナと一緒に畑よぉ~」
「助かるよ。夜も面倒を見てくれてありがとう」
どういたしまして、とパーラが応える。
俺とエリサ、そして猫の姿のレイアは、学生寮タイプの集合住宅建築だ。戸建ての方には暖炉を作るから、このスライムヒーターは集合住宅の方だけでいい。
今日はスライムがいるし、集合住宅だと小部屋を何個もクラフトして合体させるから、子供たちがうろついていると危ない。そこでパーラとルナに、子供たちの面倒をまた頼んだのだ。
「その子、水属性になったのね~」
「ん? 水属性になった?」
「えぇ~。スライムは最初、何の属性も持っていないのよ~。あたしたちとは真逆ね~」
生まれたときに得意属性が決まるアルパカディア。生まれたときには何の属性も持たないスライム。確かに真逆だ。
「スライムはねぇ~、生息している環境で属性がついたりするの~」
「それだと、属性がつかないままな奴もいるってこと?」
「そうよ~。でもテイムするとね~、必ず何かしらの属性がつくの~」
「へぇ。それってランダムで?」
それに答えたのは、テイムした本人であるエリサだった。
「意図的に属性をつけられるの~。なって欲しい属性に必要なものを、スライムの体にくっつけておくだけなんだけどねぇ」
そう言ってエリサが水の入ったお椀を見せた。よく見るとスライムが濡れている。
彼女はさらに追加で四匹のスライムをテイムしたが、全部水属性だ。
「テイムした子にね、土管の中でスライムが詰まってしまわないようお散歩誘導してもらうの~」
「だからテイミングスキル持ちがいないと、スライムヒーターは機能しないのか」
「うん~。バックしちゃう子とかもいるからぁ」
常に前進させるために、テイムしたスライムには監督させるってことか。
完成した土管に水を流し込む。量は多くなくていい。土管の途中ぐらいまで、少し水が流れ込めば十分なんだとか。
ゴール付近の土管は傾斜があるので、水は届かない。
そうすることで水を求めるスライムたちが、部屋の方へと進みたくなるからだ。
「あとはお酒を入れたら完成だよ~」
ということで、午後からレイアはエリクサーを飲み、人の姿に戻って森へと行くことになった。
「志導が行くなら、アタシも一緒に行く!」
「パティ、町の外は危険なんだぞ?」
「ふふん。この辺りのモンスターなんて、全然怖くないもん。アタシだって兄貴に鍛えられてたんだ。志導を守れるんだから!」
はぁ……そうは言ってもなぁ。
「志導くん。パティは確かにまだ子供だけど、獣人族の身体能力はすごく高いの。子供のパティだって、新米冒険者よりよっぽど戦えると思うわよ」
「ぐぬぬぬ。なんで子供のとこだけ、強調すんのさ」
「え? 私間違ったこと言った?」
「ふんぬぅ」
な、なんかこの二人、仲が悪いのかな?
あとなんでエリサは俺を見て笑っているんだ?
「だからね、志導くん。私とエリちゃん、それからパティの三人で森へ行くから、あなたはここでみんなの家造りの方をお願い」
「あ、なるほど。そういうことか。うん、わかったよ。三人が頑張っている間に、俺もこっちで頑張るよ」
「え!? し、志導は一緒じゃないの?」
「そうよぉ~。みんなの家、早く建ててあげたいでしょ~?」
「ふんぎぃ~」
やっぱり、仲悪いよな?
なんか納得いかない様子のパティは、助けを求めるような顔で俺を見る。
「し、志導ぉ~」
「あー、頑張ってこい、パティ」
ポンっと頭に手を添えて軽く撫でてやる。
するとどうだ。パティの表情はぱぁっと明るくなって、「頑張る!」と元気に返事をした。
こんなことで元気になるとは。やっぱり兄貴と離れて寂しいんだろうな。
「し、志導くんっ」
「ん? どうしたんだ、レイア」
なんか頬を膨らませて、リスみたいだ。
「な、なんでも……なんでもないもん」
「そ、そうか?」
どうしたんだ、レイアは。あとまだ俺のこと見て笑っているな、エリサは。
「気を付けて、レイア。三人の中じゃ、きっと君が一番戦闘に慣れてるだろうし。だからって絶対無茶はしないでくれよ。怪我なんてしてほしくないし。……あぁ、やっぱ俺も行こうかなぁ」
「志導くん……」
「でも俺が行っても役に立てないもんなぁ。守ってやるどころか、守られる方だし」
言ってて情けない。
「そ、そんなことないわっ。志導くんがいてくれるから……ここにいてくれるから、安心できるんだから」
「レイア……。そうだな。君が帰る場所を作らなきゃな。あ、そうだ。ミッションにしないか?」
「え、ミッション?」
「あぁ。怪我無く無事に戻ってくる。それが君へのミッションだ」
無事に帰ってきてほしい。そういう願いからなんだけど、スキルは柔軟に対応したようだ。
レイアには【怪我をせずに帰宅する】というミッションが課せられた。
数時間後――ほぼ完成したと言っても過言ではない集合住宅を前に、俺は満足げにそれを見上げていた。
そこへレイアたちが戻ってくる。
「お、おかえり! 材料はどうだ……どうしたんだ、レイア?」
しょんぼりと項垂れたレイアが、悲しそうに俺を見た。
「失敗、しちゃった」
「え? し、失敗?」
いったい何を?
「木の枝に引っかかって、腕に擦り傷作っちゃったのぉ」
あ、あぁ……ミッション失敗、か。
あはは。クラフトに夢中で気づかなかったけど、視界の隅に赤文字で【失敗】って出てるな。
怪我をするなってミッションは、高難易度すぎたか。
まぁ散歩というか、循環?
そして水の出し入れができるよう、一カ所だけスライムが数匹入れる程度の小さな部屋を基礎に埋め込んだ。
「水辺のスライムは、乾くと死んじゃうの」
「か、乾くだけで死ぬのか……」
スライムの弱小っぷりが、俺の予想を超えていた。
エリサがそんなスライムを一匹箱から取り出し、何かやっている。
――と思ったら、スライムが光りだした!?
「ど、どうなっているんだ?」
「エリちゃんがスライムをテイムしたのよ」
「テイムって、スキルを持っていたのか!?」
レイアは頷き、【錬金術】と風魔法の【カッター】、【テイミング】の三つのスキルをエリサは持っていると教えてくれた。
スライムをテイムして、命令するのか。土管の中をぐるぐる巡回しろって。
あー、いや。彼女風に言うと散歩、か。
土管は一番大きなスライムのサイズに合わせて作ってある。だから土管の中で跳ねることはできない。前進あるのみ。
あとは一方通行になるよう、スライム部屋のスタート地点の土管は床の高さに合わせて接合。逆に部屋へと戻るゴールの方は少し高い位置につける。
「あら、スライムをテイムしたのね~」
「パーラ。子供たちは?」
「今はルナと一緒に畑よぉ~」
「助かるよ。夜も面倒を見てくれてありがとう」
どういたしまして、とパーラが応える。
俺とエリサ、そして猫の姿のレイアは、学生寮タイプの集合住宅建築だ。戸建ての方には暖炉を作るから、このスライムヒーターは集合住宅の方だけでいい。
今日はスライムがいるし、集合住宅だと小部屋を何個もクラフトして合体させるから、子供たちがうろついていると危ない。そこでパーラとルナに、子供たちの面倒をまた頼んだのだ。
「その子、水属性になったのね~」
「ん? 水属性になった?」
「えぇ~。スライムは最初、何の属性も持っていないのよ~。あたしたちとは真逆ね~」
生まれたときに得意属性が決まるアルパカディア。生まれたときには何の属性も持たないスライム。確かに真逆だ。
「スライムはねぇ~、生息している環境で属性がついたりするの~」
「それだと、属性がつかないままな奴もいるってこと?」
「そうよ~。でもテイムするとね~、必ず何かしらの属性がつくの~」
「へぇ。それってランダムで?」
それに答えたのは、テイムした本人であるエリサだった。
「意図的に属性をつけられるの~。なって欲しい属性に必要なものを、スライムの体にくっつけておくだけなんだけどねぇ」
そう言ってエリサが水の入ったお椀を見せた。よく見るとスライムが濡れている。
彼女はさらに追加で四匹のスライムをテイムしたが、全部水属性だ。
「テイムした子にね、土管の中でスライムが詰まってしまわないようお散歩誘導してもらうの~」
「だからテイミングスキル持ちがいないと、スライムヒーターは機能しないのか」
「うん~。バックしちゃう子とかもいるからぁ」
常に前進させるために、テイムしたスライムには監督させるってことか。
完成した土管に水を流し込む。量は多くなくていい。土管の途中ぐらいまで、少し水が流れ込めば十分なんだとか。
ゴール付近の土管は傾斜があるので、水は届かない。
そうすることで水を求めるスライムたちが、部屋の方へと進みたくなるからだ。
「あとはお酒を入れたら完成だよ~」
ということで、午後からレイアはエリクサーを飲み、人の姿に戻って森へと行くことになった。
「志導が行くなら、アタシも一緒に行く!」
「パティ、町の外は危険なんだぞ?」
「ふふん。この辺りのモンスターなんて、全然怖くないもん。アタシだって兄貴に鍛えられてたんだ。志導を守れるんだから!」
はぁ……そうは言ってもなぁ。
「志導くん。パティは確かにまだ子供だけど、獣人族の身体能力はすごく高いの。子供のパティだって、新米冒険者よりよっぽど戦えると思うわよ」
「ぐぬぬぬ。なんで子供のとこだけ、強調すんのさ」
「え? 私間違ったこと言った?」
「ふんぬぅ」
な、なんかこの二人、仲が悪いのかな?
あとなんでエリサは俺を見て笑っているんだ?
「だからね、志導くん。私とエリちゃん、それからパティの三人で森へ行くから、あなたはここでみんなの家造りの方をお願い」
「あ、なるほど。そういうことか。うん、わかったよ。三人が頑張っている間に、俺もこっちで頑張るよ」
「え!? し、志導は一緒じゃないの?」
「そうよぉ~。みんなの家、早く建ててあげたいでしょ~?」
「ふんぎぃ~」
やっぱり、仲悪いよな?
なんか納得いかない様子のパティは、助けを求めるような顔で俺を見る。
「し、志導ぉ~」
「あー、頑張ってこい、パティ」
ポンっと頭に手を添えて軽く撫でてやる。
するとどうだ。パティの表情はぱぁっと明るくなって、「頑張る!」と元気に返事をした。
こんなことで元気になるとは。やっぱり兄貴と離れて寂しいんだろうな。
「し、志導くんっ」
「ん? どうしたんだ、レイア」
なんか頬を膨らませて、リスみたいだ。
「な、なんでも……なんでもないもん」
「そ、そうか?」
どうしたんだ、レイアは。あとまだ俺のこと見て笑っているな、エリサは。
「気を付けて、レイア。三人の中じゃ、きっと君が一番戦闘に慣れてるだろうし。だからって絶対無茶はしないでくれよ。怪我なんてしてほしくないし。……あぁ、やっぱ俺も行こうかなぁ」
「志導くん……」
「でも俺が行っても役に立てないもんなぁ。守ってやるどころか、守られる方だし」
言ってて情けない。
「そ、そんなことないわっ。志導くんがいてくれるから……ここにいてくれるから、安心できるんだから」
「レイア……。そうだな。君が帰る場所を作らなきゃな。あ、そうだ。ミッションにしないか?」
「え、ミッション?」
「あぁ。怪我無く無事に戻ってくる。それが君へのミッションだ」
無事に帰ってきてほしい。そういう願いからなんだけど、スキルは柔軟に対応したようだ。
レイアには【怪我をせずに帰宅する】というミッションが課せられた。
数時間後――ほぼ完成したと言っても過言ではない集合住宅を前に、俺は満足げにそれを見上げていた。
そこへレイアたちが戻ってくる。
「お、おかえり! 材料はどうだ……どうしたんだ、レイア?」
しょんぼりと項垂れたレイアが、悲しそうに俺を見た。
「失敗、しちゃった」
「え? し、失敗?」
いったい何を?
「木の枝に引っかかって、腕に擦り傷作っちゃったのぉ」
あ、あぁ……ミッション失敗、か。
あはは。クラフトに夢中で気づかなかったけど、視界の隅に赤文字で【失敗】って出てるな。
怪我をするなってミッションは、高難易度すぎたか。



