「うぅ、冷えて来たなぁ」
一日中、町の瓦礫の撤去作業を続け、ゴーレムは……見つからなかった。
日中は太陽が出ていたからそうでもなかったけど、日が暮れると途端に肌寒くなる。
「そ、そうね……それでなんだけど志導くん。これ使ってっ」
レイアが差し出したのは、毛糸のベスト?
これ、アルパディカ毛糸じゃないか。
「あ、余っている毛糸を使いたいって言ってたの、これを編むためだったのか」
「う、うん。志導くん、着替えを持ってないでしょ? だから……あとこれもっ。それとこっちもっ」
「え? え?」
彼女の小さな巾着から出てきたのは、シャツとズボン!?
「せ、せめてパジャマぐらいはと思って」
「どうやって縫ったんだ!? だってミシンなんてなかっただろうに」
「ふふ。ミシンだけが服を縫う道具じゃないわよ。針と糸があれば、なんとかなるんだから。あ、あとハサミね」
ハサミはアッパーおじさんたちの毛刈りをする時に使ったものがある。糸はアーサ産だし、針は彼女の自前のものだ。
布も何日か前に「作りたいものがあって」というから、アーサ糸を万能クラフトで編んで渡してあった。
そっか。クラフトで服も縫えばよかったんだな。
「ありがとう。いやぁ、着替えとかすっかり忘れて……もしかして臭ってた!? え、ごめんっ。臭かったんだろう?」
「ち、違うわ。そうじゃ……えっと、少し、だけ……で、でも仕方ないものっ。だって着替えがなかったんだし」
「ごめん。ほんっとごめん。タオルで体を拭くとき、肌着はちゃんと洗ってはいたんだ。お湯で」
でも洗剤はなく、ただ手洗いしていただけだ。
洗った物はインベントリに入れ、水切り乾燥すると一瞬で乾いていた。上着やズボンは数日おきだったけど。
服……服かぁ。
「アーサ布だと肌着はいいとして、服を縫うにしては生地が薄いよなぁ」
「それはアーサ糸が細いからよ。もう少し糸を太くして布にすれば、生地も頑丈になてくるわ」
「なるほど。糸はまだまだ余ってるし、やってみるよ」
「それは明日。もう遅いから、休みましょう。明日の朝はきっと冷え込むと思うから。その、ベスト……」
「あぁ。パジャマの上から着させてもらうよ。ありがとう、レイア」
お礼を言うと、彼女は恥ずかしそうにベッドへと潜り込んだ。
そう。ベッドだ。
遂にベッドを手に入れたんだ。
マットレスの代わりに、ハンモックで使っていたロープを張ってある。その上に藁を包んだシーツを敷き、更にその上から毛皮を乗せてある。この毛皮はユタと、それからユラが狩ってきてくれたモンスターのものだ。
で、毛布はアルパカディア産。
俺も自分のベッドに入り、手を伸ばして間仕切りを開いて毛布に包まる。
教会には部屋が二つあったが、一つは元々倉庫として使われていたらしく、いろんなものが置かれていた。それに天井も高かったため、めちゃくちゃ寒い。
こっちの部屋は、教会を管理していた人の休憩室として使われていて、でも住んではいなかったようだ。
だから教会にはキッチンがなく、それは礼拝堂の方に用意した。
後々、隣の倉庫をリフォームしてキッチンにしたいな。
あと……俺とレイア、同室ってのは申し訳ない。
部屋を増築するか、隣の部屋が天井高いし、ロフトを作ってそこで寝るか、もしくは礼拝堂に俺の部屋を作るか……何か考えないとな。
レイアは若い女の子なんだし、知った顔だと言ったって男と同室なんて恥ずかしいだろう。
俺も少し恥ずかしい。だから間仕切りをクラフトしたんだ。
朝は冷え込むだろうなぁ。この部屋に暖炉があってよかった。
明日は暖炉用の薪を……あ。
「あああぁぁぁぁぁっ!」
「キャッ。何? え、どうしたの?」
「あっ。ご、ごめんっ。驚かせて」
思わず叫んでしまった。けどそれだけ重大だってこと。
「明日……霜が降りるだろうか」
「霜? うぅん、そうね。時期的にそろそろかも」
「畑っ。大丈夫だと思う?」
「あ……そ、そうね。ここは少し標高があるし、私の集落より寒いだろうから……全滅なんてことはないだろうけど、寒さに弱い種類の野菜は厳しい、かも」
しまったぁ。寒冷対策もしなきゃと思ってたのに。
「この世界じゃビニールなんてないだろうしなぁ」
「ビニールハウスのこと? うぅん、残念だけどビニールはないわねぇ」
ビニールはないとすると……黒く染めた布を被せる?
なんかそういうの、テレビとかでも見たけど。
だがアーサ色が十分あるとしても、畑を覆うサイズの布となると結構な量になる。
教会裏の菜園ならいいけど、新しく拡張している畑までは回らない。
それに、アーサ布で保温効果があるのかどうか。
ビニールの代わり……ビニールの……。
その時、風で窓のガラスがカタカタ音を立てた。
窓のガラス……ガラスだ!
「ガラスハウス!」
「え?」
「だからガラスハウスだ。ガラスならこの世界にも、この町にもある。瓦礫拾いしていても、砕けたガラス片がいっぱいあったろ? あれを拾い集めれば、かなりの量にならないかな」
そして万能クラフトで再形成して、大きなガラス板にする。
これなら、ガラスハウスもクラフト出来るんじゃないかな!
一日中、町の瓦礫の撤去作業を続け、ゴーレムは……見つからなかった。
日中は太陽が出ていたからそうでもなかったけど、日が暮れると途端に肌寒くなる。
「そ、そうね……それでなんだけど志導くん。これ使ってっ」
レイアが差し出したのは、毛糸のベスト?
これ、アルパディカ毛糸じゃないか。
「あ、余っている毛糸を使いたいって言ってたの、これを編むためだったのか」
「う、うん。志導くん、着替えを持ってないでしょ? だから……あとこれもっ。それとこっちもっ」
「え? え?」
彼女の小さな巾着から出てきたのは、シャツとズボン!?
「せ、せめてパジャマぐらいはと思って」
「どうやって縫ったんだ!? だってミシンなんてなかっただろうに」
「ふふ。ミシンだけが服を縫う道具じゃないわよ。針と糸があれば、なんとかなるんだから。あ、あとハサミね」
ハサミはアッパーおじさんたちの毛刈りをする時に使ったものがある。糸はアーサ産だし、針は彼女の自前のものだ。
布も何日か前に「作りたいものがあって」というから、アーサ糸を万能クラフトで編んで渡してあった。
そっか。クラフトで服も縫えばよかったんだな。
「ありがとう。いやぁ、着替えとかすっかり忘れて……もしかして臭ってた!? え、ごめんっ。臭かったんだろう?」
「ち、違うわ。そうじゃ……えっと、少し、だけ……で、でも仕方ないものっ。だって着替えがなかったんだし」
「ごめん。ほんっとごめん。タオルで体を拭くとき、肌着はちゃんと洗ってはいたんだ。お湯で」
でも洗剤はなく、ただ手洗いしていただけだ。
洗った物はインベントリに入れ、水切り乾燥すると一瞬で乾いていた。上着やズボンは数日おきだったけど。
服……服かぁ。
「アーサ布だと肌着はいいとして、服を縫うにしては生地が薄いよなぁ」
「それはアーサ糸が細いからよ。もう少し糸を太くして布にすれば、生地も頑丈になてくるわ」
「なるほど。糸はまだまだ余ってるし、やってみるよ」
「それは明日。もう遅いから、休みましょう。明日の朝はきっと冷え込むと思うから。その、ベスト……」
「あぁ。パジャマの上から着させてもらうよ。ありがとう、レイア」
お礼を言うと、彼女は恥ずかしそうにベッドへと潜り込んだ。
そう。ベッドだ。
遂にベッドを手に入れたんだ。
マットレスの代わりに、ハンモックで使っていたロープを張ってある。その上に藁を包んだシーツを敷き、更にその上から毛皮を乗せてある。この毛皮はユタと、それからユラが狩ってきてくれたモンスターのものだ。
で、毛布はアルパカディア産。
俺も自分のベッドに入り、手を伸ばして間仕切りを開いて毛布に包まる。
教会には部屋が二つあったが、一つは元々倉庫として使われていたらしく、いろんなものが置かれていた。それに天井も高かったため、めちゃくちゃ寒い。
こっちの部屋は、教会を管理していた人の休憩室として使われていて、でも住んではいなかったようだ。
だから教会にはキッチンがなく、それは礼拝堂の方に用意した。
後々、隣の倉庫をリフォームしてキッチンにしたいな。
あと……俺とレイア、同室ってのは申し訳ない。
部屋を増築するか、隣の部屋が天井高いし、ロフトを作ってそこで寝るか、もしくは礼拝堂に俺の部屋を作るか……何か考えないとな。
レイアは若い女の子なんだし、知った顔だと言ったって男と同室なんて恥ずかしいだろう。
俺も少し恥ずかしい。だから間仕切りをクラフトしたんだ。
朝は冷え込むだろうなぁ。この部屋に暖炉があってよかった。
明日は暖炉用の薪を……あ。
「あああぁぁぁぁぁっ!」
「キャッ。何? え、どうしたの?」
「あっ。ご、ごめんっ。驚かせて」
思わず叫んでしまった。けどそれだけ重大だってこと。
「明日……霜が降りるだろうか」
「霜? うぅん、そうね。時期的にそろそろかも」
「畑っ。大丈夫だと思う?」
「あ……そ、そうね。ここは少し標高があるし、私の集落より寒いだろうから……全滅なんてことはないだろうけど、寒さに弱い種類の野菜は厳しい、かも」
しまったぁ。寒冷対策もしなきゃと思ってたのに。
「この世界じゃビニールなんてないだろうしなぁ」
「ビニールハウスのこと? うぅん、残念だけどビニールはないわねぇ」
ビニールはないとすると……黒く染めた布を被せる?
なんかそういうの、テレビとかでも見たけど。
だがアーサ色が十分あるとしても、畑を覆うサイズの布となると結構な量になる。
教会裏の菜園ならいいけど、新しく拡張している畑までは回らない。
それに、アーサ布で保温効果があるのかどうか。
ビニールの代わり……ビニールの……。
その時、風で窓のガラスがカタカタ音を立てた。
窓のガラス……ガラスだ!
「ガラスハウス!」
「え?」
「だからガラスハウスだ。ガラスならこの世界にも、この町にもある。瓦礫拾いしていても、砕けたガラス片がいっぱいあったろ? あれを拾い集めれば、かなりの量にならないかな」
そして万能クラフトで再形成して、大きなガラス板にする。
これなら、ガラスハウスもクラフト出来るんじゃないかな!



