超絶クールな先輩は俺の前でふにゃふにゃのSubになる


「朔せんぱい。せんぱーい? おーい、朔」
「ん……?」
「やべっ。……起きてます? 身体の調子はどうですか」

 気づけば自分がソファに座って、足元から風谷が見上げていた。徐々に記憶が戻ってくる。

「ぼく……寝てた? ごめん」
「いや謝らないで下さい! 一瞬ですよ? あとどっちかというと、眠そうにぼーっとしてる感じでした」

 僕は頭を抱えたくなった。寝ていたことにではない。いまは服を着ているけど……記憶はきっちりと残っている。

 今日のプレイでも、言われるがまま服を脱ぎ、褒められて、興奮して……前回と同じような流れになった。
 たくさん褒めてもらって、撫でて甘やかしてもらって、ぼうっとしたまま服を着せられて。それでいまに至る。
 
「えっと……調子はいい。めちゃくちゃいい。アキは……どうだ?」
「よかった! 俺も絶好調っすね。しばらく薬はいらなそうです。ありがとうございます、先輩」

 この反応は……今日のプレイも風谷的にアウトではなかったようだ。喜んでアレをやっているとすれば、やはりこいつもDomなんだなと納得せざるを得ない。
 
 いまは決して俺に触れない距離で、先輩後輩という態度を貫いている。まだ自分にプレイの影響が残っているのか、そんなことが少し寂しかった。

「お前、薬飲んでんの? プレイの頻度増やしたほうがいいか?」
「いいですって! なんか周期とかなく、まだ安定してないみたいなんですよねー。先輩の方が忙しいだろうし、わざわざここへ来るのも大変だし……」

 ダイナミクスの持つ本能の強さとか、影響の受けやすさは人によって大きく異なる。ランクもあると聞くし、風谷は上位のDomなのかもしれない。
 
「無理すんなよ。軽いプレイでいいなら学校でやればいいだろ」
「え。学校……って……」

 ほんのりと頬を赤らめた風谷を見て、僕は自分の失言に気付いた。いや、勘違いするほうがおかしい。こんなこと学校でやらないっつーの!
 こっちまで恥ずかしくなってくるから、慌てて風谷を睨んだ。

「おい、勘違いすんなよ……」
「あっ、す、すみません! あの……じゃあまた連絡してもいいですか」
「……うん」

 夜の帳が下りはじめたころ、表面上はなにもなかったような顔をして、僕らはそれぞれ帰路についた。
 心中は複雑な思いでいっぱいだった。胸のなかで、風谷の存在が想像以上のスピードで大きくなっているのを感じているから。まだプレイの快感が身体に残っている気がして、ひとり頬を赤らめる。
 
 次はいつになるだろう。またっていうかここしばらくずっと連絡を取っているから、調子が悪くなればすぐに教えてくれるはずだ。