【中編】ブルー、ステイ、サイド

 「……私の初めては全部あおくんがいいです」

 それでも、やっぱりあおくん以外の人に身体を触られたりするなんて考えられなかった。

 「見た目はエロいのに中身は純情な子って、かわいいよね。そういうのそそるだけってわかんない?」

 折口先輩に私のセーラー服とキャミソールを鎖骨辺りまで捲りあげられた。
 ブラジャーに包まれた私の胸が折口先輩の目の前にさらされる。

 「想像以上にでかくて綺麗。谷間すごいね。これ本当に男に見られたり揉まれたことないの?」
 「ありません……」

 普段、人に見せるはずのない場所を折口先輩に間近で凝視されて恥ずかしくて倒れそうだった。
 
 「じゃあ、キスとセックスはしない」
 「……どういうことですか?」
 「あっちの世界でいうと、本番行為はしないってこと」
 「本番って……何ですか?」
 「そういうのも知らないんだ。要するに澄玲ちゃんのあそこに俺のコレを挿れないってこと」

 折口先輩は私の手を握って、自分の股間を触らせるように押し付けてきた。
 ズボン越しでも硬く熱を持った感触が手のひらを通じて伝わってくる。
 さすがにこれが何なのかわからないほど、無知にはなりきれない。

 「やあっ……」
 「顔、赤くしちゃってかわいいね。コレ挿れられるとこ想像した?」
 「……してません……」
 「澄玲ちゃんは、あおくんに初めてをとっておきたいんだよね? その代わり、それ以外のことは澄玲ちゃんとさせてもらうから」
 「あっ……」
 「そしたら絶対に黙っててあげるよ」
 「あっん……」

 器用にブラジャーをずらされ、胸の先端を摘まれ、弄ばれる。
 その強い刺激に背中が弓なりにしなった。
 
 「やっぱりここも綺麗な色してるね。もう固くなってるし」
 「んんっ……あっ」
 「片手じゃ収まんないか。澄玲ちゃんって普段の声はかわいいけど、感じてる声はエロくなるんだろうと思ってた」
 「やめっ……んんっ」
 「あー、全部かわいすぎて、やばいかも」

 さっきまでの余裕だった折口先輩の態度が嘘のように、私の胸の感触を手で確かめながら荒い息を吐いて先端の突起に激しく吸いついてきた。

 「だめ……それ、いやっ……」
 「大きいだけじゃなくて、柔らかくて澄玲ちゃんの反応もいいよね、最高」

 こうして私と折口先輩の秘密の関係は始まった。
 キスとセックスはしない……そんな約束は守られているものの、初めてされる行為や教えられることが知らないことばかりで、こんな恥ずかしいこともするんだと最初は戸惑っていた。
 けれど、折口先輩は乱暴なことも痛いこともしてこないし、私を気持ち良くさせようとしてくれているのがわかって、次第に私は行為に身を委ねるようになっていく。
 学校のどこかに呼び出される時もあったけど、私の家に折口先輩が来る時が多かった。
 両親が留守がちで居なくて、中学に程近い私の家は密会するのにちょうど良かったらしい。
 折口先輩は中学校で有名だし、マンション内への出入りにはかなり気を遣っていたけれど。

 「どこもかしこも敏感で感じやすいよね。澄玲ちゃんは」

 折口先輩は私によく言ってくるものの、他の子と比べようもないしわからなかった。
 それでも私の身体はどこをどうされれば気持ちよくなるのか、男の人の身体は興奮するとどうなるのか、しっかり学習していく。
 自分が女だと身体に眠っていた本能が目覚めていくたびに、あおくんにしてほしい……そんな気持ちが強くなっていった。
 二学期の終業式。
 ソフトテニス部の新人戦で一年生ながら団体戦のメンバーに入り、個人戦でもペアの上級生と都内ベスト16まで勝ち上がったあおくんが体育館の壇上で表彰されているのを見ていた時、自分との違いを痛感させられた。
 いつだって日の当たる場所を歩いているようなあおくんが私には眩しくて遠くて。
 あおくんが部活のない日はホームセンター横の広場で自主練しているのを知っている。
 実はそっとその様子を観察したりしていた。
 ある日、折口先輩に広場が見える公園に呼び出され、自主練で真剣に壁打ちをしているあおくんを見ながら、私が感じる場所を同時に執拗にいじられて、達してしまったこともあった。

 「俺にイかされてる澄玲ちゃんの姿、あおくんに気づかれなくて良かったね」

 折口先輩に耳元で囁かれて、涙目の中、またあおくんが遠ざかっていくような気がしていた。

 私は勉強に身が入らなくなり、赤点こそないものの、どの科目も成績が振るわず、中2になってから家庭教師の先生をつけられた。
 それを面白く思わなかったのは折口先輩だった。
 私の身体を弄んで性欲を発散させていた時間が必然的に減らされることになったのだから。

 「ま。でも、すぐ辞めることになるんじゃない?」
 「どうしてですか?」
 「澄玲ちゃんと2人きりで部屋に居たら、誘惑されちゃうでしょ?」
 「そんなの、しません」
 「澄玲ちゃんが自分から誘惑しなくても、そうなるって。俺みたいな物分かりのいい男ばっかりじゃないから、澄玲ちゃんキスもエッチも家庭教師の男にされちゃうかもよ。その時間、初日以外は親が家に居ないんでしょ?」
 「……」
 「そんな不安そうな顔しないでよ。そんなにあおくん以外とするの嫌なんだ?」
 「……当たり前です」
 「いいよ。二人きりになる時は俺が別の部屋で、こっそり待機していてあげる」
 「え?」
 「科目は数学と理科だっけ? 実質2時間くらいか。それくらいなら隠れていてやるよ。何かされそうになったら俺を呼びな」

 私を脅迫している折口先輩が私を守るようなことを言ってくるのが不思議だった。
 折口先輩が私を傷つけてこないのはわかってきていたけれど、私の身体だけが目当てだとばかり思っていたから。
 家庭教師の先生は真面目そうな好青年風の有名大に通う男の人だった。
 初日のママとの挨拶の時は普通だったけれど、2日目からは偶然を装って私の胸を肘でつついてきたり、気がつくと私の胸元ばかり見ていたり。
 それでも耐えながらやり過ごし、家庭教師の先生が帰宅してから、隠れていた折口先輩にベッドへ押し倒された。

 「あーあ、別の男と一緒の澄玲ちゃんの姿を想像してたら俺がもたないって」
 「あっん、んんっ……」

 しつこいくらい折口先輩に身体中を舐められたり、弄られて、私は泣き叫ぶように喘ぎながら何度も昇り詰めることになってしまった。
 結局3回目で家庭教師の先生が私に襲いかかってきたのを折口先輩に助けられ未遂に終わる。
 家庭教師の先生も自分が悪いとわかっていたからか、私の両親に折口先輩のことは漏らさなかった。

 「――澄玲ちゃん。俺とちゃんと付き合おうよ」