「きゃっ……!!」
思わず瞼を伏せる。
折口先輩に見せられたスマホの画面にはいわゆるHな行為をしている男女の動画が流されていた。
私はアダルトムービーでもふざけて見せられたのかと思っていた。
「はは。山園さんって、エロい身体してる割には初々しいかわいらしい反応するんだね。こういうの見たことない?」
「あるわけないです。消してください」
「だーめだって。自分の目でよく見てみなよ。ここに映ってるのが誰なのかを」
「……え?」
私は恐る恐る瞼を開いていく。
やっぱり素肌を晒した男女が絡み合っているだけで目を背けたくなるけれど……。
「……え、ママ……?」
「せいかーい! ちなみに相手の男は俺の父親」
足元が覚つかなくなる。
私には生まれた時からママはママで、ママの“女“の部分を強制的に見せられて吐き気のような気持ち悪さが迫り上がった。
自分の母親が快感に喘ぐ表情や痴態なんて見たくも知りたくもない……。
「俺が学校サボって自分家で休んでたら、誰も居ないと思って、始めちゃったんだよね」
「……嘘、こんなの……」
「これは親父ゆすって小遣いせびれると思って、動画回しておいたの。その後でちょっと調べさせてもらったんだけど、相手が山園さんの母親だったとはね」
「……」
「もう関係自体は長いらしいよ。山園さん、幼稚園くらいの時から母親が会計事務所で働き始めなかった? それ、俺の父親の事務所なの。親父そういう資格いっぱい持ってるから」
折口先輩から言われたことは当たっていた。
私が年長の時からお母さんは働くようになって、小学校低学年のうちは放課後や長期休みに学童にお世話になって。
それでも私のことで、扶養内でお家でお仕事していたあおくんのママには、ずいぶん助けられたと言っていた。
ママは仕事だと帰りが遅くなる日も私が小学校の高学年になってからは宿泊を伴う出張だって行くようになった。
まさか、そういうの全部、折口先輩の父親と?
「お互い家庭を壊す気はないみたいだし。割り切って楽しんでるみたいだよ。大人っていいよね」
折口先輩は自分の父親が不倫しているにも関わらず、なんてことなさそうに笑っていた。
「それに親父から金をせびるより、俺のほしいもの手に入れられそうだし」
「きゃっ……」
折口先輩は私の手を引き、古い体育倉庫の中へと誘い込んだ。
中は、むあっと蒸し暑い空気と埃っぽい匂いが漂っていて、まるでサウナのようだった。
折口先輩は私に綺麗な顔を近づけて不敵に笑う。
「俺の母親って弁護士でさ。鉄の女とか呼ばれちゃって、家事も育児も全く出来ないけど、仕事だけは出来すぎるの」
「……」
「俺の母親にこのこと知られたら、山園さんの母親、法律を駆使して徹底的に潰されると思うよ」
「……潰されるって……」
「少なくても慰謝料の支払い程度じゃ済まないと思うけど。俺の家なんて仮面夫婦だし、両親が離婚したとしても大したダメージないけどさ、山園さんの家は母親の不倫が明るみになって家庭崩壊しちゃったら困るよね。今、住んでるマンションも住めなくなるだろうし……」
今のマンションに住めなくなる?
あおくんと住んでる場所さえ離れてしまう?
私の家庭が壊れるよりも、そっちの方が強く響いて。
「い、嫌です!」
「そうだよね。嫌だよね? 大好きな“あおくん“とも離れちゃうもんね」
混沌とした頭を更にかき混ぜてくる折口先輩の言葉。
「ちょっと山園さんを見ていれば気づくって。1年1組の谷内蒼斗くん、ソフトテニス部なんだよね。同じマンションに住んでる幼なじみなんだっけ? あんなにかっこいい幼なじみがいたら、好きになっちゃうのはわかるな」
「どうして、それを……?」
「たぶん俺って探偵の才能あるんだよね。山園さんの母親のこととかも調べられちゃうし」
暑さのせいだけじゃなく、めまいがして倒れそうになっているのを折口先輩に腰を抱かれて支えられている。
「……私はどうすればいいんですか?」
「物分かりいいね」
折口先輩の手が制服越しに、胸元へ伸びてくる。
「っ……!」
「俺さ、ぶっちゃけ彼女とかめんどくさいからいらないの。束縛されるのとかクソだるい。けど、俺も思春期の男だから性欲ってのはどうしてもあるわけ。
俺たちも父親と母親を見習って割り切って楽しもうよ。このいつも揺れてる山園さんの大きな胸、触ってみたいと思ってた」
「いやっ……」
無遠慮に布越しで胸を揉まれて顔を背ける。
「……やめてください……。あおくんじゃなきゃ嫌です……」
「でも、そのあおくんさ、“澄玲ちゃん“に興味ないんでしょ?」
身体だけじゃなく、心の距離も縮めるように折口先輩が私の呼び方を変える。
「自分を一途に想ってくれる魅力的な女の子が近くにいるのに、何であおくんは澄玲ちゃんに手を出さないでいられるんだろうね? 同じ男として信じられない」
そんなの……あおくんが私を何とも思っていないからだ。
折口先輩に言われる前からわかっている……。
「澄玲ちゃんが俺に従ってくれているうちは黙ってるよ。澄玲ちゃんも自分の家族バラバラにして壊したくないよね?」
そう言われて、ママじゃなくて、パパの顔が浮かぶ。
私はパパに似たのか器用な方じゃないけれど、一生懸命家族のために働いてくれて、家事も頑張っているパパ。
『うちのパパも蒼くんのパパみたいにいっぱい稼いでくれてたら、ママもフルで働かなくて済んだのに』
ママが働き始めた時、そんな愚痴を私にこぼしていたけれど、いつの間にか言わなくなっていた。
外の世界でママはママから解放されて、女になっている。
パパもママもお互いがお互いなりに守ろうとしてる家庭を私が壊すわけにはいかなかった。
何より、これ以上あおくんと離れたくない……。
思わず瞼を伏せる。
折口先輩に見せられたスマホの画面にはいわゆるHな行為をしている男女の動画が流されていた。
私はアダルトムービーでもふざけて見せられたのかと思っていた。
「はは。山園さんって、エロい身体してる割には初々しいかわいらしい反応するんだね。こういうの見たことない?」
「あるわけないです。消してください」
「だーめだって。自分の目でよく見てみなよ。ここに映ってるのが誰なのかを」
「……え?」
私は恐る恐る瞼を開いていく。
やっぱり素肌を晒した男女が絡み合っているだけで目を背けたくなるけれど……。
「……え、ママ……?」
「せいかーい! ちなみに相手の男は俺の父親」
足元が覚つかなくなる。
私には生まれた時からママはママで、ママの“女“の部分を強制的に見せられて吐き気のような気持ち悪さが迫り上がった。
自分の母親が快感に喘ぐ表情や痴態なんて見たくも知りたくもない……。
「俺が学校サボって自分家で休んでたら、誰も居ないと思って、始めちゃったんだよね」
「……嘘、こんなの……」
「これは親父ゆすって小遣いせびれると思って、動画回しておいたの。その後でちょっと調べさせてもらったんだけど、相手が山園さんの母親だったとはね」
「……」
「もう関係自体は長いらしいよ。山園さん、幼稚園くらいの時から母親が会計事務所で働き始めなかった? それ、俺の父親の事務所なの。親父そういう資格いっぱい持ってるから」
折口先輩から言われたことは当たっていた。
私が年長の時からお母さんは働くようになって、小学校低学年のうちは放課後や長期休みに学童にお世話になって。
それでも私のことで、扶養内でお家でお仕事していたあおくんのママには、ずいぶん助けられたと言っていた。
ママは仕事だと帰りが遅くなる日も私が小学校の高学年になってからは宿泊を伴う出張だって行くようになった。
まさか、そういうの全部、折口先輩の父親と?
「お互い家庭を壊す気はないみたいだし。割り切って楽しんでるみたいだよ。大人っていいよね」
折口先輩は自分の父親が不倫しているにも関わらず、なんてことなさそうに笑っていた。
「それに親父から金をせびるより、俺のほしいもの手に入れられそうだし」
「きゃっ……」
折口先輩は私の手を引き、古い体育倉庫の中へと誘い込んだ。
中は、むあっと蒸し暑い空気と埃っぽい匂いが漂っていて、まるでサウナのようだった。
折口先輩は私に綺麗な顔を近づけて不敵に笑う。
「俺の母親って弁護士でさ。鉄の女とか呼ばれちゃって、家事も育児も全く出来ないけど、仕事だけは出来すぎるの」
「……」
「俺の母親にこのこと知られたら、山園さんの母親、法律を駆使して徹底的に潰されると思うよ」
「……潰されるって……」
「少なくても慰謝料の支払い程度じゃ済まないと思うけど。俺の家なんて仮面夫婦だし、両親が離婚したとしても大したダメージないけどさ、山園さんの家は母親の不倫が明るみになって家庭崩壊しちゃったら困るよね。今、住んでるマンションも住めなくなるだろうし……」
今のマンションに住めなくなる?
あおくんと住んでる場所さえ離れてしまう?
私の家庭が壊れるよりも、そっちの方が強く響いて。
「い、嫌です!」
「そうだよね。嫌だよね? 大好きな“あおくん“とも離れちゃうもんね」
混沌とした頭を更にかき混ぜてくる折口先輩の言葉。
「ちょっと山園さんを見ていれば気づくって。1年1組の谷内蒼斗くん、ソフトテニス部なんだよね。同じマンションに住んでる幼なじみなんだっけ? あんなにかっこいい幼なじみがいたら、好きになっちゃうのはわかるな」
「どうして、それを……?」
「たぶん俺って探偵の才能あるんだよね。山園さんの母親のこととかも調べられちゃうし」
暑さのせいだけじゃなく、めまいがして倒れそうになっているのを折口先輩に腰を抱かれて支えられている。
「……私はどうすればいいんですか?」
「物分かりいいね」
折口先輩の手が制服越しに、胸元へ伸びてくる。
「っ……!」
「俺さ、ぶっちゃけ彼女とかめんどくさいからいらないの。束縛されるのとかクソだるい。けど、俺も思春期の男だから性欲ってのはどうしてもあるわけ。
俺たちも父親と母親を見習って割り切って楽しもうよ。このいつも揺れてる山園さんの大きな胸、触ってみたいと思ってた」
「いやっ……」
無遠慮に布越しで胸を揉まれて顔を背ける。
「……やめてください……。あおくんじゃなきゃ嫌です……」
「でも、そのあおくんさ、“澄玲ちゃん“に興味ないんでしょ?」
身体だけじゃなく、心の距離も縮めるように折口先輩が私の呼び方を変える。
「自分を一途に想ってくれる魅力的な女の子が近くにいるのに、何であおくんは澄玲ちゃんに手を出さないでいられるんだろうね? 同じ男として信じられない」
そんなの……あおくんが私を何とも思っていないからだ。
折口先輩に言われる前からわかっている……。
「澄玲ちゃんが俺に従ってくれているうちは黙ってるよ。澄玲ちゃんも自分の家族バラバラにして壊したくないよね?」
そう言われて、ママじゃなくて、パパの顔が浮かぶ。
私はパパに似たのか器用な方じゃないけれど、一生懸命家族のために働いてくれて、家事も頑張っているパパ。
『うちのパパも蒼くんのパパみたいにいっぱい稼いでくれてたら、ママもフルで働かなくて済んだのに』
ママが働き始めた時、そんな愚痴を私にこぼしていたけれど、いつの間にか言わなくなっていた。
外の世界でママはママから解放されて、女になっている。
パパもママもお互いがお互いなりに守ろうとしてる家庭を私が壊すわけにはいかなかった。
何より、これ以上あおくんと離れたくない……。



