天狗の神様の契約花嫁

 おぎゃーという元気な産声と共にタケが取り上げてくれた我が子は男の子だった。 
 しかし、私が感じてタケが予測していた通り次の波がガツンとやって来る。
「メノウ様、もうひと踏ん張りですよ。こっちはまだ膜が破れていないので今破いちゃいますからね」
 そんな声と共にパチンと音がして、再び痛みの波が襲い掛かって来る。
 張り裂けそうなほど大きくなったお腹、たまに感じる一人ではない動き。
「よし、すでに全開、膜も破れた。いきんでいいよ」
 その言葉に再び痛みと共に紐を引っ張りながいきむ体制に入る。
「ん-!!はぁはあ」
「メノウ様、もう少し一度で二回頑張ってごらん」
「むりよぉ」
 と話しながら、また痛みの波でいきむ。
 何度か繰り返せば先ほども感じたぬるっとした感覚。
「よし、もういきまなくていいよ」
 その声掛けに私は、はぁはぁと息を付いているうちにもう一度ぬるっとしてもう一つの産声が上がる。
「んぎゃー」 
 あとから生まれた子は女の子だった。
 なんとはちきれそうだったお腹の中には双子ちゃんが居たのである。
 栄が先の男の子と女の子両方綺麗にした後に連れてきてくれた。
「メノウ様、お疲れ様です。男の子と女の子どちらもお元気ですよ」
 男の子は佐彦様に似た赤い瞳に私の銀髪、女の子は佐彦様の濃紺の髪と私の紫の瞳をそのまま引き継いでいる。
 そんな両親の色を各々持った子どもたちはお顔は瓜二つだった。
 色が違わなければ、男女でしか違いが分からないほどにそっくりな双子の兄と妹。
「ふふ、とっても可愛いわね。一気に二人も増えるなんて、にぎやかになりそうね」
 私は二人を抱きしめて、穏やかな気持ちで微笑んだ。
「そうですね。本当に素晴らしいことです」
 栄もとっても嬉しそうに松もタケも一仕事終えて、安堵の表情を浮かべている。
 そして私の後産が落ち着いた頃ようやく佐彦様が駆け付けて、間に合わなかったとがっくりうなだれていたのはご愛敬。
 タケが慰めていた言葉に集約されてしまったが、私は初産で双子の出産なのに破水と陣痛から二時間足らずでの出産になったスピード出産であり、かなりの安産だったのだという。
 後産の排出もスムーズだったし、出血も最小限。
 双子も単体児並にそれぞれ体重があったことから、それはお腹が重かったはずだとタケが私が苦しがっていたことに納得してくれた。
「佐彦様、男の子と女の子です。名前、どうしましょうね?」
 私の問いかけに佐彦様は私と一緒に並んで眠る双子を眺めつつ言った。
「男の子は朝陽、女の子は夕月でどうだろうか?」
 佐彦様の言った名前をそれそれの顔を見て考える。
「とってもいいと思います。朝陽、夕月。無事に生まれてきてくれてありがとう」
 そんな声かけと共に子どもたちを抱きしめる。
 私たちを見守りながら佐彦様が私の頬をそっと撫でて言う。
「メノウ、お疲れ様。こんなに元気な子を二人も、頑張ってくれておありがとう」
 そう言って額にキスを一つ。
 微笑み合う私たちの間で朝陽と夕月は同じタイミングでくわぁっとあくびをしている。
 お腹の中から一緒だった二人はきっと仲良しね。
 そんなことを考えつつも、私はしばしまどろみ子どもたちと共に眠る。
「ありがとう、メノウ。少しゆっくりお休み」
 そうして、神様の花嫁になって一年半。
 神様の子を産んで、私は十九歳でお母さんになった。