そして私は知っていた、男爵が実は母の和代を気に入っていたのにおじい様が母を一ノ宮に嫁がせてしまったことを逆恨みしていたこと。
私以上に母に似た希望を見つけて、二十年近く前に手にできなかった母の代わりに希望を手籠めにしようとしていること。
その気持ちだけで、囲い込みのために白鷗家に圧力と周囲の企業を引きはがして貧困を加速させたこと。
もうそれだけの行いで私の中では男爵許すまじである。
そもそも、母の時の時点でも二十歳も年上だったのに、希望とでは孫と爺である。
それでどうして幸せな結婚になろうというのか、あしなが爺さんするつもりでもないところからして許すまじ。
「もうね、この世にこんなに凶悪なじい様が居ることに驚きを隠せなかったわ。だからね、うちのお母様に言いつけたら天宮家の女性陣がまぁお怒りで。きっと男爵家は根こそぎなくなると思うの。だから心配しなくていいし、希望さんや伯父様達は良かったら天宮家でお仕事しませんか?お屋敷が大きいので仕事はたくさんあるんです。ご一家で住み込みも大丈夫なのでお考えいただければ」
私がニコニコと話すと、白鷗家も傾いたとはいえ伯爵家であり国を支えて来た巫女の家系なので天宮家がどんなうちか知っているのだ。
そんなお母様がお怒りだと告げれば少し、不安そうになるのも分かります。
女神のお怒りですからね、ごもっともです。
男爵は情け容赦なく裁かれるでしょう、完膚なきまでに。
神とは、そういった存在なので。
特に創世期の神々である猿田彦神と天宇受売命は鏡のように自身の行いを返す神であるので。
行いが卑怯で理不尽であるならば、それ相応に同じく卑怯で理不尽なことが返ってくるのである。
そんな神々の行いは、巫女の家系ならではでご存じの様子。
若干、引きつってはいるものの安堵しているのもうかがえた。
女神が男爵に罰を下すなら、なんの憂いもなくこの結婚をなかったことにと男爵に提案することができるのだから。
「天宮家が問題ないというのであれば、お言葉に甘えさせていただきたく存じます。下の子たちのことはもちろん希望にも女学館を無事に卒業してほしいですし。どうぞ、よろしくお願いいたします」
伯父様は私に頭を下げて天宮家へ来ることを承諾してくれた。
これで、希望も望まぬ結婚をしなくて済むし残りの二か月もしっかり女学館で過ごせるのだ。
「えぇ、こちらから提案しているのですから。もちろん、ぜひお越しください。とりあえず、取り急ぎ必要な物をもって今すぐ天宮のお屋敷へ向かいましょう。ご家族皆さん、一緒に」
私の言葉に、隣の部屋で控えていた希望さんのお母様や妹さん二人は伯父様と希望さんと一緒にさっと取り急ぎ必要な物をまとめてくれた。
行動が早くて大変助かる。
「さぁ、それでは参りましょう。天宮の大屋敷へ」
そうして私は柳が白鷗家に行くと言ったら用意した大きな車に希望さん一家も乗せて天宮の大屋敷へと向かうこととなった。
白鷗家は使用人たちに残りの荷物もまとめるように指示を出し、天宮家の眷属には邸の警護をお願いした。
留守中も不届き物が現れたりしたら追い払うように警戒してもらうことにしたのだ。
こうして男爵よりも早く動くことで私は希望さん一家を天宮家に保護することに成功した。
「いらっしゃい。とりあえず今日はここでゆっくり休むと良いわ」
天宮の大屋敷に帰るとお母様が玄関で出迎えてくれた。
私が希望さんを迎えに行き連れ帰ることをしっかり把握していたお母様は、白鷗家の面々のための部屋を準備してくれていたのだ。
「お母様、ただいま戻りました。こちらが希望さんで、後ろがご両親と妹さんたちです」
私が希望さん家族を紹介するとお母様は笑顔で出迎えてくれる。
「あの男爵については私がきっちりと教え込んで差し上げるから何も心配しなくていいわ。とりあえずゆっくり休んで頂戴。ここには男爵の手の者も見張りに来ることは叶いませんからね」
にっこり笑顔のお母様、背景が黒いオーラがわいてますがお怒りですものね、分かります。
私も、今なら同じオーラが出せそうですもの。
「ありがとうございます、お母様。私の我儘をかなえて頂いて」
そんな私の声にお母様は私を抱きしめて髪を撫でつつ言う。
「良いのよ、だってメノウちゃんの大事なお友達でしょう? それなら私にとっても庇護の対象よ。だから、助けていいのよ」
ウィンク一つで、お母様はすべて受け入れてくれるのだ。
懐の深さは天宮家で一番深く広い。
「神様ってのはね、存外自分本位だし、助けたければ助けて、無理な時は無理で何もしないそんな存在なの。でも、娘が願うのなら全力で答えるのが母というものよ。あなたのお母様が沢山の準備をしながら無念のうちに亡くなったことを私は知っているの。だから、あの子が出来なかった分も私が母としてメノウちゃんに注ぐと決めたの。だから私たちにあなたは何の遠慮も要らない。己の願いに正直でいなさい、それが巫女としての力を増すことにもなるから」
そんなお母様の言葉に、私は納得して頷き抱きしめてハイと答えたのだった。
私とお母様のやり取りを見て伯父様は安心した顔をしている。
天宮家に嫁いだ私は、嫁ぎ先で大変可愛がられているし旦那様も優しいので結構幸せなのです。
だからこそ、大事な友達の希望さんにも幸せになってもらいたい。
幸せになれない相手には嫁いでほしくないから。
今回は藤のおばあちゃんからの進言もあり、行動に出た。
白鷗家の藤の木も、心配していたから。赤ちゃんから見てきた子が不幸になる様子など見たくないのだ。
木々からしたら、赤ちゃんから見守ってきた子ども達は我が子同然なのだから。
藤はそれこそ希望さんのお父さんである伯父様も赤子のころから見守ってきた。
子と孫が不幸になるのを見過ごせなかった藤の木の気持ちを、天宮の藤のおばあちゃんも聞こえぬふりなど出来ない。
木々はそれこそ大地に根差した仲間の意識が強い。
あちこちの木々と繋がり、情報を共有するからこそ木々は仲間の声を無視することが出来ない。
そして声を聴き続けることから逃れられないからこそ、仲間の助けての声に全力で答えるべく動く。
それが木々たちの勤めであり、この国を一番見守っているといえる存在なのである。
今回も木々たちの声から救出に動くことが出来たので、やはり彼らの声をしっかり聞いていかねばならないと胸に刻んだのである。
私以上に母に似た希望を見つけて、二十年近く前に手にできなかった母の代わりに希望を手籠めにしようとしていること。
その気持ちだけで、囲い込みのために白鷗家に圧力と周囲の企業を引きはがして貧困を加速させたこと。
もうそれだけの行いで私の中では男爵許すまじである。
そもそも、母の時の時点でも二十歳も年上だったのに、希望とでは孫と爺である。
それでどうして幸せな結婚になろうというのか、あしなが爺さんするつもりでもないところからして許すまじ。
「もうね、この世にこんなに凶悪なじい様が居ることに驚きを隠せなかったわ。だからね、うちのお母様に言いつけたら天宮家の女性陣がまぁお怒りで。きっと男爵家は根こそぎなくなると思うの。だから心配しなくていいし、希望さんや伯父様達は良かったら天宮家でお仕事しませんか?お屋敷が大きいので仕事はたくさんあるんです。ご一家で住み込みも大丈夫なのでお考えいただければ」
私がニコニコと話すと、白鷗家も傾いたとはいえ伯爵家であり国を支えて来た巫女の家系なので天宮家がどんなうちか知っているのだ。
そんなお母様がお怒りだと告げれば少し、不安そうになるのも分かります。
女神のお怒りですからね、ごもっともです。
男爵は情け容赦なく裁かれるでしょう、完膚なきまでに。
神とは、そういった存在なので。
特に創世期の神々である猿田彦神と天宇受売命は鏡のように自身の行いを返す神であるので。
行いが卑怯で理不尽であるならば、それ相応に同じく卑怯で理不尽なことが返ってくるのである。
そんな神々の行いは、巫女の家系ならではでご存じの様子。
若干、引きつってはいるものの安堵しているのもうかがえた。
女神が男爵に罰を下すなら、なんの憂いもなくこの結婚をなかったことにと男爵に提案することができるのだから。
「天宮家が問題ないというのであれば、お言葉に甘えさせていただきたく存じます。下の子たちのことはもちろん希望にも女学館を無事に卒業してほしいですし。どうぞ、よろしくお願いいたします」
伯父様は私に頭を下げて天宮家へ来ることを承諾してくれた。
これで、希望も望まぬ結婚をしなくて済むし残りの二か月もしっかり女学館で過ごせるのだ。
「えぇ、こちらから提案しているのですから。もちろん、ぜひお越しください。とりあえず、取り急ぎ必要な物をもって今すぐ天宮のお屋敷へ向かいましょう。ご家族皆さん、一緒に」
私の言葉に、隣の部屋で控えていた希望さんのお母様や妹さん二人は伯父様と希望さんと一緒にさっと取り急ぎ必要な物をまとめてくれた。
行動が早くて大変助かる。
「さぁ、それでは参りましょう。天宮の大屋敷へ」
そうして私は柳が白鷗家に行くと言ったら用意した大きな車に希望さん一家も乗せて天宮の大屋敷へと向かうこととなった。
白鷗家は使用人たちに残りの荷物もまとめるように指示を出し、天宮家の眷属には邸の警護をお願いした。
留守中も不届き物が現れたりしたら追い払うように警戒してもらうことにしたのだ。
こうして男爵よりも早く動くことで私は希望さん一家を天宮家に保護することに成功した。
「いらっしゃい。とりあえず今日はここでゆっくり休むと良いわ」
天宮の大屋敷に帰るとお母様が玄関で出迎えてくれた。
私が希望さんを迎えに行き連れ帰ることをしっかり把握していたお母様は、白鷗家の面々のための部屋を準備してくれていたのだ。
「お母様、ただいま戻りました。こちらが希望さんで、後ろがご両親と妹さんたちです」
私が希望さん家族を紹介するとお母様は笑顔で出迎えてくれる。
「あの男爵については私がきっちりと教え込んで差し上げるから何も心配しなくていいわ。とりあえずゆっくり休んで頂戴。ここには男爵の手の者も見張りに来ることは叶いませんからね」
にっこり笑顔のお母様、背景が黒いオーラがわいてますがお怒りですものね、分かります。
私も、今なら同じオーラが出せそうですもの。
「ありがとうございます、お母様。私の我儘をかなえて頂いて」
そんな私の声にお母様は私を抱きしめて髪を撫でつつ言う。
「良いのよ、だってメノウちゃんの大事なお友達でしょう? それなら私にとっても庇護の対象よ。だから、助けていいのよ」
ウィンク一つで、お母様はすべて受け入れてくれるのだ。
懐の深さは天宮家で一番深く広い。
「神様ってのはね、存外自分本位だし、助けたければ助けて、無理な時は無理で何もしないそんな存在なの。でも、娘が願うのなら全力で答えるのが母というものよ。あなたのお母様が沢山の準備をしながら無念のうちに亡くなったことを私は知っているの。だから、あの子が出来なかった分も私が母としてメノウちゃんに注ぐと決めたの。だから私たちにあなたは何の遠慮も要らない。己の願いに正直でいなさい、それが巫女としての力を増すことにもなるから」
そんなお母様の言葉に、私は納得して頷き抱きしめてハイと答えたのだった。
私とお母様のやり取りを見て伯父様は安心した顔をしている。
天宮家に嫁いだ私は、嫁ぎ先で大変可愛がられているし旦那様も優しいので結構幸せなのです。
だからこそ、大事な友達の希望さんにも幸せになってもらいたい。
幸せになれない相手には嫁いでほしくないから。
今回は藤のおばあちゃんからの進言もあり、行動に出た。
白鷗家の藤の木も、心配していたから。赤ちゃんから見てきた子が不幸になる様子など見たくないのだ。
木々からしたら、赤ちゃんから見守ってきた子ども達は我が子同然なのだから。
藤はそれこそ希望さんのお父さんである伯父様も赤子のころから見守ってきた。
子と孫が不幸になるのを見過ごせなかった藤の木の気持ちを、天宮の藤のおばあちゃんも聞こえぬふりなど出来ない。
木々はそれこそ大地に根差した仲間の意識が強い。
あちこちの木々と繋がり、情報を共有するからこそ木々は仲間の声を無視することが出来ない。
そして声を聴き続けることから逃れられないからこそ、仲間の助けての声に全力で答えるべく動く。
それが木々たちの勤めであり、この国を一番見守っているといえる存在なのである。
今回も木々たちの声から救出に動くことが出来たので、やはり彼らの声をしっかり聞いていかねばならないと胸に刻んだのである。



