義母と桜子は父に離縁された後義母の生家の男爵家に戻ったが、義母の兄が男爵になっており肩身の狭い思いをしながら過ごしていると風のうわさに聞いた。
既に侯爵夫人でも令嬢でもなくなった二人は、働かざる者食うべからずという現男爵の考えでしっかり家業である商家の店先で働いているという。
最初こそ文句を言いながらだったものの、働くことが向いていたらしくそのうち楽しそうに二人とも生き生きと働きだしたとのこと。
のちに義母は分不相応な家に嫁いだ私が悪かったのだと晩年に語ったという。
それこそ義母と義妹が男爵家の支援を受けて、のれん分けで新たな商売を始めたりしてしっかり地道に歩んでいくので二人はそれなりに安定した生活を送れるようになっていく。
そこに辿り着くまでもいろいろあるが、二人は支え合って努力したらしい。
しっかり神様は見ているのできちんと罰の後に更生した者は、その努力に見合うように見守るそうだから。
二人は大丈夫でしょう。
父は一ノ宮を再興しようとあがき、もがき努力は続けたものの自身が選んだ相手と娘を捨てるという行為も神様は見ていた。
私のことも捨てたも同然の父は、自分の益しか考えぬ愚か者という判定を神々に受けそれでは要らぬなという判断が下り一ノ宮家は没落し、ついぞ名前を聞かなくなるようになる。
むかし、そんな家もありましたね。
最後の当主が先妻の子を大切にせず、最後は後妻と娘も切り捨てて没落したとしっかり歴史に残ってしまった。
汚点というかのちには家族は大切にせよという教訓の一説にされてしまった。
悪い例の話である。
そうして一ノ宮家の件が片付いた頃、白鷗家の問題が表面化し始めた。
希望さんが男爵家の後妻に入る話である。
やはり資金繰りが上手くいかず、泣く泣く希望さんを嫁がせるしかないところまで追いつめられている白鷗家は希望さんにも話をし、卒業まで残り二か月で退学結婚の話がまとまりつつあった。
だんだん元気がなくなっていく希望さんを心配しているものの、彼女から話は上がってこない。
天宮家に居れば各家の情報はそれこそ集まって来るし、私には聴感覚があるのだそれ以上に私のところには情報が生き物たちから寄せられてくる。
だから希望さんが話さなくとも、希望さんの最新情報が逐一藤のお祖母ちゃんから寄せられてくる。
白鷗家にも立派な藤棚があるからだ。
『巫女姫や、とうとう顔合わせが明後日に、逃がさないとばかりに一週間後には嫁入りが決まったぞ』
藤のお祖母ちゃんの言葉に私はすくっと立ち上がるとユキを肩に乗せて栄を探す。
「栄!お願いがあります」
そう部屋から顔を出して廊下に声を出せば、スッと現れる栄。
本当に、いつもどこに居ても声を出せば現れる栄はとてつもない万能神使である。
「メノウ様、お呼びですね。いかがいたしましたか?」
栄に私は柳を呼び車を出してほしいこと行先は白鷗家であることを伝えた。
車の準備中に佐彦様も呼び出すことにする。
「佐彦様、お話がございます」
私の声に佐彦様は庭先の窓から現れた。
「メノウ、なにかあったのか?」
佐彦様の問いかけに私は、藤のお祖母ちゃんから聞いた希望の話をする。
白鷗家が傾かないために長女の望みが男爵の後妻に入る。
男爵は支援の代わりに希望を娶るから逃がしたくなくて明後日の顔合わせの後は一週間後に婚姻するという強行スケジュールを控えていること。
しかも、男爵が顔合わせ後にそのまま希望を自宅に連れ込み逃げられないよう手を付けようと画策していることまで男爵家の木々からのタレコミで私が把握していること。
私の従姉妹であり初めて仲良くなった友人でもある希望をこのまま嫁がせられないので、天宮家に迎え入れて私の侍女として千佳子と共に現世の大屋敷で働いてもらおうと考えていることを伝えると佐彦様は実にあっさりと許可を出してくれた。
「あぁ、メノウの大事な友人だね。もちろん現世の邸へ雇い入れるのは構わないよ。メノウを下に見て態度が悪かった使用人は既に解雇済みで人手が足りていないと執事頭も言っていたし、侍女頭は空席のままで執事頭に代行させているんだ。希望さんのご両親や兄弟も受け入れ可能だから、メノウの望むとおりに動いて構わない。メノウの血の繋がった親戚で友人だもの。我が家でも大事な家族に変わりないからね」
そんな佐彦様の言葉を受けて安心を手に私は柳の運転でご訪問の便りを送る前に、白鷗家へ突撃したのだった。
白鷗家に着くと感慨深いものがある。
母が一ノ宮に嫁ぐ前に、ここで過ごしていたと話を聞いているからだ。
しかし、母も歓迎されていたわけではないので母屋では暮らさず離れで勉強とマナーを繰り返す日々だったと語ってくれていたことを思い返す。
晩年弱った母を、移るかもしれないと母屋から私たちがのちに暮らす粗末な離れに父が追いやった時も母はどうしようもない人だと話ながら達観した様子を見せていた。
そうなることをあらかじめ先見で知った居たのだろう。
知っていてもその道をたどることにどれほどの悔しさや悲しさがあったかと思うとやるせない。
母は、十八歳で私を産み、二十三歳でこの世を去った。
早すぎるし、もっと一緒に居たかった。
それが叶わぬことを悟っていて、あんなにも私のためにプレゼントや必要な時期に合わせた手紙まで用意していた母。
ここも、母には優しい場所ではなかったはずだ。
それでも、私はここにいる希望から優しさと理解と、似たものを感じる力の波長ゆえの居心地の良さを感じていた。
今後も交友関係は続くだろうと思っていたのに、男爵家に嫁げば公爵家私との交流を男爵にいいようにされると危惧して交流を断ち切られてしまうと白鷗家の藤が危惧して藤のお祖母ちゃん伝いに知らせてくれた。
楽しかったけれど、私との交流も終わりだと語っていたことを……。
絶対終わらせてなんかやらない、希望にも幸せになってほしい。
私の大切な友達で従姉妹。
私に残された、母方の親族でもあるのだから。
諦めないわよ、私は意気込んで白鷗家の門をくぐった。
その様子を観察している者は、しっかりとカラスたちに監視されていることを彼らは知らない。
既に侯爵夫人でも令嬢でもなくなった二人は、働かざる者食うべからずという現男爵の考えでしっかり家業である商家の店先で働いているという。
最初こそ文句を言いながらだったものの、働くことが向いていたらしくそのうち楽しそうに二人とも生き生きと働きだしたとのこと。
のちに義母は分不相応な家に嫁いだ私が悪かったのだと晩年に語ったという。
それこそ義母と義妹が男爵家の支援を受けて、のれん分けで新たな商売を始めたりしてしっかり地道に歩んでいくので二人はそれなりに安定した生活を送れるようになっていく。
そこに辿り着くまでもいろいろあるが、二人は支え合って努力したらしい。
しっかり神様は見ているのできちんと罰の後に更生した者は、その努力に見合うように見守るそうだから。
二人は大丈夫でしょう。
父は一ノ宮を再興しようとあがき、もがき努力は続けたものの自身が選んだ相手と娘を捨てるという行為も神様は見ていた。
私のことも捨てたも同然の父は、自分の益しか考えぬ愚か者という判定を神々に受けそれでは要らぬなという判断が下り一ノ宮家は没落し、ついぞ名前を聞かなくなるようになる。
むかし、そんな家もありましたね。
最後の当主が先妻の子を大切にせず、最後は後妻と娘も切り捨てて没落したとしっかり歴史に残ってしまった。
汚点というかのちには家族は大切にせよという教訓の一説にされてしまった。
悪い例の話である。
そうして一ノ宮家の件が片付いた頃、白鷗家の問題が表面化し始めた。
希望さんが男爵家の後妻に入る話である。
やはり資金繰りが上手くいかず、泣く泣く希望さんを嫁がせるしかないところまで追いつめられている白鷗家は希望さんにも話をし、卒業まで残り二か月で退学結婚の話がまとまりつつあった。
だんだん元気がなくなっていく希望さんを心配しているものの、彼女から話は上がってこない。
天宮家に居れば各家の情報はそれこそ集まって来るし、私には聴感覚があるのだそれ以上に私のところには情報が生き物たちから寄せられてくる。
だから希望さんが話さなくとも、希望さんの最新情報が逐一藤のお祖母ちゃんから寄せられてくる。
白鷗家にも立派な藤棚があるからだ。
『巫女姫や、とうとう顔合わせが明後日に、逃がさないとばかりに一週間後には嫁入りが決まったぞ』
藤のお祖母ちゃんの言葉に私はすくっと立ち上がるとユキを肩に乗せて栄を探す。
「栄!お願いがあります」
そう部屋から顔を出して廊下に声を出せば、スッと現れる栄。
本当に、いつもどこに居ても声を出せば現れる栄はとてつもない万能神使である。
「メノウ様、お呼びですね。いかがいたしましたか?」
栄に私は柳を呼び車を出してほしいこと行先は白鷗家であることを伝えた。
車の準備中に佐彦様も呼び出すことにする。
「佐彦様、お話がございます」
私の声に佐彦様は庭先の窓から現れた。
「メノウ、なにかあったのか?」
佐彦様の問いかけに私は、藤のお祖母ちゃんから聞いた希望の話をする。
白鷗家が傾かないために長女の望みが男爵の後妻に入る。
男爵は支援の代わりに希望を娶るから逃がしたくなくて明後日の顔合わせの後は一週間後に婚姻するという強行スケジュールを控えていること。
しかも、男爵が顔合わせ後にそのまま希望を自宅に連れ込み逃げられないよう手を付けようと画策していることまで男爵家の木々からのタレコミで私が把握していること。
私の従姉妹であり初めて仲良くなった友人でもある希望をこのまま嫁がせられないので、天宮家に迎え入れて私の侍女として千佳子と共に現世の大屋敷で働いてもらおうと考えていることを伝えると佐彦様は実にあっさりと許可を出してくれた。
「あぁ、メノウの大事な友人だね。もちろん現世の邸へ雇い入れるのは構わないよ。メノウを下に見て態度が悪かった使用人は既に解雇済みで人手が足りていないと執事頭も言っていたし、侍女頭は空席のままで執事頭に代行させているんだ。希望さんのご両親や兄弟も受け入れ可能だから、メノウの望むとおりに動いて構わない。メノウの血の繋がった親戚で友人だもの。我が家でも大事な家族に変わりないからね」
そんな佐彦様の言葉を受けて安心を手に私は柳の運転でご訪問の便りを送る前に、白鷗家へ突撃したのだった。
白鷗家に着くと感慨深いものがある。
母が一ノ宮に嫁ぐ前に、ここで過ごしていたと話を聞いているからだ。
しかし、母も歓迎されていたわけではないので母屋では暮らさず離れで勉強とマナーを繰り返す日々だったと語ってくれていたことを思い返す。
晩年弱った母を、移るかもしれないと母屋から私たちがのちに暮らす粗末な離れに父が追いやった時も母はどうしようもない人だと話ながら達観した様子を見せていた。
そうなることをあらかじめ先見で知った居たのだろう。
知っていてもその道をたどることにどれほどの悔しさや悲しさがあったかと思うとやるせない。
母は、十八歳で私を産み、二十三歳でこの世を去った。
早すぎるし、もっと一緒に居たかった。
それが叶わぬことを悟っていて、あんなにも私のためにプレゼントや必要な時期に合わせた手紙まで用意していた母。
ここも、母には優しい場所ではなかったはずだ。
それでも、私はここにいる希望から優しさと理解と、似たものを感じる力の波長ゆえの居心地の良さを感じていた。
今後も交友関係は続くだろうと思っていたのに、男爵家に嫁げば公爵家私との交流を男爵にいいようにされると危惧して交流を断ち切られてしまうと白鷗家の藤が危惧して藤のお祖母ちゃん伝いに知らせてくれた。
楽しかったけれど、私との交流も終わりだと語っていたことを……。
絶対終わらせてなんかやらない、希望にも幸せになってほしい。
私の大切な友達で従姉妹。
私に残された、母方の親族でもあるのだから。
諦めないわよ、私は意気込んで白鷗家の門をくぐった。
その様子を観察している者は、しっかりとカラスたちに監視されていることを彼らは知らない。



