天狗の神様の契約花嫁

 一ノ宮家で父と義妹がもめている頃。
 天宮家ではメノウに初仕事が舞い込んでいた。
『もうし、巫女姫さま。お助け願い申します』
 そんな声がして、桜のお姉さんの木に向かえば桜の木に怪我をして止まる一羽の鳥が見える。
「あら、あなた怪我しているわね。大変、すぐに手当てをしましょう」
 そう言って手を差し出せば、一羽の鳥は手のひらに降り立ちくたっとその身を預けてくる。
 温かく包み込み、メノウは急ぎ屋敷内で呼べば来ると言っていた佐彦を呼ぶことにした。
「佐彦様、どうか来てくださいませ」
 メノウが声を出せば、風に乗るように佐彦が空からやって来る。
「メノウ、どうした?」
 そんな声を掛けつつ降り立った佐彦にメノウは手の中の鳥を見せる。
「助けてって声がして見に行ったらこの子が。怪我をしております」
 そう言って見せると佐彦様は鳥を見やって眉を寄せた。
「穢れを受けたか。それでは羽ばたけまい。いま、治してやろう」
 そう言って佐彦様が手をかざすと、淡い光が差し込んで鳥に降り注ぐ。
 するとぐったりしていた鳥は一気に元気を取り戻したらしく、すくっと自分の足で立つと、羽を動かし羽ばたきクルっとw他紙たちの頭上を一周するとすとんと、私の手のひらに戻って来た。
『ありがとうございます、若君、巫女姫。大変助かりました』
 掌で、首を下げて上げてと動く姿が大変可愛らしくほっこりする。
「お主は父である猿田彦に連なる者だから癒せたにすぎぬが、役に立ったようでなによりだ」
 そんな佐彦様にも、向きを合わせてこくんと首を上下させている。
 きちんと感謝を述べる鳥のなんと愛らしいことか!
『若君か猿田彦様を目指して頑張っていたのですが、桜様のところで力尽きてしまいまして。巫女姫様が声を聞き届けてくださり助かりました。本当にありがとうございます。感謝のしるしによろしければ眷属を一羽差し上げましょう』
 そんな鳥さんの声にこたえて、もう一羽姿を見せた鳥さんはとっても小さいのにまるっとしたフォルムでクリッとした黒目の愛らしい小鳥だった。
『まだ赤ちゃんなので言葉は上手く話せませんが、こちらの言うことは分かります。そして目で見た者を伝えることが得意な早く飛ぶ小鳥です。きっとお役に立ちましょう。巫女姫様、どうかお受け取り下さい』
 そんな鳥さんの言葉に私は頷き、新たに手のひらに来た小さな小鳥に声をかけた。
「初めまして、今日からよろしくね」
『ちぃ、ぴぴ。よおちくね』
 可愛らしい子どもの声で返事が届く。
 クリッとした黒目は私を見つめて小首をかしげた。
 可愛いが渋滞している!!
「うむ、良い小鳥だな。眷属として側に居ても嵩張らず、ちょうどいいだろう。メノウに仕えよ」
『ぴちち、わかた』
 下っ足らずな幼児の声の返事に佐彦様は頷き人差し指でそっと撫でている。
 私も撫でてあげるとふかふかの羽毛が、ゆびさきをモフンと包み込んだ。
 極上!可愛すぎる!
 そんな私たちのやり取りを怪我の治った鳥が満足そうに眺めていた。
『あぁ、巫女姫。この子まだ名前が無いので付けてやってください。そうすれば眷属としての絆も深まりましょう』
 そんな鳥さんの言葉に、目の前の小鳥さんを見つめて考える。
 真っ白な中に尾羽が茶黒で、背の一部に同じく茶黒の柄模様。
 でも、ほぼ真っ白の丸いフォルム。
「ユキちゃんでどうかしら?」
 安直というなかれ、名前はシンプルで覚えやすいのが一番だ。
 私の声掛けにユキはぴぴぴ!と羽を広げて返事をする。
 どうやらお気に召したらしい。
「えぇ、あなたは今日からユキちゃんよ」
 思わず手に乗せたまま頬ずりすれば小鳥のユキもスリッと寄ってきてくれる。胸の羽毛がもふっと柔らかい。
『ぴちちち、ユキちゃん。がんばる』
 本当に可愛い眷属さんが仲間に加わりました。
 私たちの様子を助けた鳥さんは満足げに見た後に、元気になったのでしっかりと飛び立って帰っていきました。
「メノウの初仕事だったな。幽世の住人を助けた。あれは穢れに見舞われた鳳凰だったから、染まり切る前に助けられて良かった。けがれて現世に行くと穢れを振りまいて厄災を招くから。早期発見と治癒に感謝だな。ありがとう、メノウ」
 私の聴感覚で初めて国守りのお手伝いが出来た人なりました。
 だから、すっかり忘れていたのです。
 義妹がやらかして、居たことの末路。
 そこから次の事件が起きることは予測できていませんでした。