僕にだけ愛の重い王子様な幼なじみ君

「美幸!入るわよ!」

僕らは慌てて離れて髪を直しながらスマホを見てるふりをする。

「あら。何もしてないじゃない。何を心配してたの?心音は。」
「お邪魔してます。」

後ろから覗いているお姉さんは安堵からか崩れ落ちた。心配してくれてありがとう。お姉さんの声がしなかったら多分抱き合ってるところを見られていただろう。あ、でも、それは昔からか。何も変には見えないのかな?

「陽太君、これ、お母さんに渡してくれる?中々予定が合わなくて。」

重めのものを渡された。中身は何だろう。

「じゃあ、僕は帰ります。」
「ありがとう!あ、明日楽しみね!お母さんにも伝えておいて!」

僕は荷物をまとめて家から出る。明日は、毎年恒例の家族友達旅行だ。どういうことかというと、僕の家族、みゆの家族、それから康太の家族。と幼馴染が家族まとめて揃う日。何をするかというと、水上アスレチックと、大人たちの希望で夏なのに温泉。そして皆で一つの家に泊まり大人はお酒を飲んで大騒ぎをする。そんな旅行だ。


「陽太!起きなさい!」

次の日、旅行のため両親はすっかり張り切って、起きようと思ってた時間のだいぶ前に起こされた。

「おはよう。最近一緒にいれなくてごめんな!この旅行中は一緒にいるから!」

お兄ちゃんも起きていたため熱烈なハグを受ける。僕は手を回して優しくお兄ちゃんの背中を叩く。

「ほら!二人とも準備して!皆もうそろそろ出るって!うちだけよ!」

早くない?!本当に皆楽しみなんだな。そう思い慌てて支度をした。


「おはよう!」

久しぶりに家族総出で会った。皆それぞれ会話をしている。

「陽太。おはよう。」

恋人になった翌日なため、なんだか心臓が沢山走った後のようだ。しかもみゆの空気がなんか甘い。

「お、おはよう。」

挨拶をするとみゆはいつも通りテレビの話を始める。

「じゃあ、車に乗りましょう。」

3家族もいるから1つの車に乗りきらず、結果、みゆのお父さんがマイクロバスを運転してくれることになった。このために免許を取ったみたい。

「陽太、こっちに。」

お兄ちゃんが康太のお兄ちゃんと話している隙を見てみゆは僕の腕を引っ張って後ろの方の2人席に座る。

「陽太は今日眠くない?」
「大丈夫!」

いつも通りを演じているが心の中は祭りのようだ。すると、

「みゆ?」

みゆは手を繋いできた。顔を見るとシーっと指を立てている。僕も嬉しくて握り返す。

「皆乗った?行くよ!!」
「出発進行!!」

バスに乗ってる時に大人たちは話したり、カラオケをしたりして楽しんでいた。僕らは肩をくっつけたり、1つの携帯とイヤホンで映画を見ていた。この距離感は久しぶりで嬉しかった。

「着いたよ!」

始めは水上アスレチック!運よく天気もいい。話を聞いて、ライフジャケットを着て、早速入る。

「ああ!冷たくて気持ちいい!!」

今日は真夏だから少しぬるいけど全然冷たい。アスレチックまで移動して、滑りながらも進んでいく。

「わ!」
「大丈夫?」

みゆと康太と3人で助け合いながら難易度の高いのに挑む。

「みゆ……。」

1人だけ登れたので2人に教えようと振り返ると、みゆは綺麗な女の人を助けていて、明らかに女の人は頬を染めている。

「陽太!すごいな!登れたのか!」

みゆから聞きたかったのにお兄ちゃんに言われた。嫌じゃないけど心が痛む。

「ありがとう。」
「どうした?楽しまないのか?!」

僕が下に降りるとお兄ちゃんは近寄ってきて僕の頬を触る。

「陽太。行こう。」

どこから現れたのか、みゆが来てお兄ちゃんの手を僕から剥がす。

「はいはい。悪かったな。」

お兄ちゃんは僕らの関係を知っているから茶化すように笑い離れていく。

「時間だって!」

別の場所に移動しようとしたとき、僕らの遊べる時間が終わってしまった。


「おかえり!楽しかった?」

お母さんたちはおしゃべりをしながら荷物番をしていたみたいだ。次はバナナボードに乗る。わくわくしながら走って向かった。


「疲れたな。」

帰りのバスは皆、疲れ切って無言で乗って眠りについた。お母さんたちは何もしてないから元気だけど。

「陽太。」

そう言われ顔を見ると、みゆは自分の肩を軽く叩いている。これは肩を貸すということか?でも眠くて限界だった僕はそこで意識がなくなった。


「着いたよ!」

目を開いて体を起こすと、みゆも寝ていた。僕の頭に乗せてくれても良かったのに、窓枠に頭を乗せている。

「みゆ。」

軽い力で叩いて起こす。すぐに目を開けるがボーっとしている。

「み「陽太……?」」

僕の名前を呼んだ次の瞬間、抱き寄せられる。

「み、みゆ!?」
「あ、ごめん。」

強い力で抱きしめていたが、僕の声にハッとなりすぐに離れた。

「い、行こうか。」
「ああ。」

僕は顔を手で冷ましてバスから降りた。