僕にだけ愛の重い王子様な幼なじみ君

お兄ちゃんは自分の頭を自分でかき乱している。僕はお兄ちゃんの言葉に驚き涙が引っ込んだ。

「俺らの口からはみゆがどう思ってたのか全ては分からない。陽太も辛かったが、みゆも相当悩んで、苦しんだ三年間だったし、それに、距離はあるかもしれないけど、冷めたわけでも、嫌いになったわけでもない。1つ聞いたのは、陽太の気持ちを優先してる。らしい。」
「もう一度、話し合って。大丈夫。美幸が優しいのは分かってるでしょ?」

みゆのお姉ちゃんもお兄ちゃんも保護者のように優しく見守ってくれてる。思わず口角が上がった。

「その顔を見れて安心した。大丈夫。ね?」

みゆのお姉ちゃんは相変わらず頭を撫でてくれた。いつもと違って優しくてみゆを思い出して、安心できた。

「陽太?」
「みゆ……、」

振り返ると、みゆが立っていた。嫉妬したかな?お姉さんとカフェにいるのか、とか、いつから見て居たか分からないけどお姉さんに撫でられていたところを見ていたら、最近のみゆは少ないけど、嫉妬するよね。気まずくて目線を下げる。

「そういえば母さんが陽太に用があるみたいなんだ。着いてきてくれる?」

悩む。みゆとは一度話した方がいいのは分かってる。それに、正直この距離は辛い。

「頼んだ商品は颯太に食わせるから。行きなさい。」

お姉さんは強い視線で促す。僕は立ちあがってみゆの後を追った。


家に向かってる時間としては短いはずなのに何倍も長く感じた。その間も色々な考えが頭をよぎる。みゆは僕の気持ちを優先している。それに触れてこないのも、距離があるのも優しさなのだろう。でもこの満たされないのはどうしたらいいのだろう。理解しようとしても過去が邪魔をする。もしまたみゆが冷たくなったら。理由は聞いたけどあまり詳細は聞けなかった。それもあるのかな?
だから一度ちゃんと話そう。失うなら自分で選ぼう。

「お邪魔します。」
「あ、……出かけたか。
ごめん、母さん出かけたみたいだから少し待っててくれる?」
「うん、」

みゆのお母さんは少し出かけてしまったみたいで部屋に案内された。


「みゆ、少し話があるんだけど、」

みゆは飲み物を持ってきてくれて、目の前に座る。

「何?」
「あのさ、みゆって、中学の頃、何があったの?」

唐突な重い話に、驚いたのか、目を大きくしてから目線を合わせる。

「陽太に冷たくしてた時の話か?」

僕はゆっくり上下に頭を動かす。みゆはいつかは聞かれると思った。という表情で口を開く。

「距離を取っていた理由は、昔、小学生の時に俺が名前でいじめられてただろ?その時に唯一かばってくれたのは陽太だけだった。それがきっかけに中学生の頃に恋に気づいた。でも陽太を見ると複雑な感情を抱いた。それは愛情とか、嫉妬とか、独占欲とか。当時はあまりにも怖くて距離をおいた。」

確かにみゆはいつから僕のことを好きなのか気になって居たけどそんなに前からとは。

「じゃあ、なんで急に高校から近づいてきたの?」

みゆは言いにくそうに口を開く。

「中学生の間は何をしても心の穴は空いたままだった。
だけど、高校に上がる直前に陽太のお兄さんに、
『お前まさか陽太を泣かせることしてないよな?最近元気がなくて、大好きなアイスも食べずに、みゆー!と唸ってるけど。』
って言われて、俺は陽太の隣にいる資格はないと思ってた。こんなに汚い感情を持っているし。
でも、お兄さんは
『陽太の隣にいないお前も、お前の隣にいない陽太もダメなんだよ。』
珍しく泣きそうな表情で言われたから、ああ、第三者から見ても俺はそばにいてもいいんだ。いや、いないとお互い辛いんだ。とそう思ったんだ。」

その話聞いてない。みゆの心がぽっかり空いてるのも、戻ってきてくれたのも好かれてたんだと少しだけ安心できる。それならもっと付き合う前みたいにスキンシップを。

「じゃあ、なんで最近、スキンシップを取ってくれないの?」
「それは。
俺から告白したし、手紙のことも相当怖いと思うから俺からはやめておこうかなと思って。だから陽太から来るまで待ってる。」

中学の頃は理由も分からず、距離を置かれて毎日なんでだろ。何考えてるんだろう。もう一回みゆの視界に入りたい。そう思っていた。トラウマだったしどうしたらいいか分からなかった。近寄っても無視。話しかけても無視。
でも今は違う。理由を知ったうえで選べるし、みゆは待っててくれる。そう思えば、トラウマが少しだけ、良くなった気がする。

「ありがとう。話してくれて。正直、いろいろ思うことはある。またあの頃みたいにならないか。とか。」

僕は顔を見る。みゆの目には僕が映っている。

「僕と付き合ってください。」

僕は手を伸ばして視線を下げる。まるでプロポーズのようだ。

「……お願いします。」

みゆはそんな僕に笑いもせずに手を掴み引き寄せられる。久しぶりに入ったみゆの腕の中は前より熱くて、僕は視界を歪ませながら背中に腕を回した。

「あれ?!陽太君来てるの?渡したいものあるのよね!」
「お母さん!少し待ってよ!」

下から、みゆのお母さんと焦っているみゆのお姉ちゃんの声がする。

「ふふ。」

思わず二人とも顔を見合わせて、笑みをこぼしてしまった。
だってこれが現実だとさらに実感できたから。