独占欲の強い王子様(?)幼なじみ君

みゆの表情に、何を言ったらいいか分からず
困っていると、すぐに飲み込んで普段の表情になる。

「俺がいるでしょって何?」

みゆは何も言わないし、窓も閉まってるから外からの音も聞こえなくて、ほとんど無音で怖い。そんな重い空気にこれしか言えなかった。

「……内緒。」

みゆは、口元で人差し指を立てて、少し潤んでる気がする瞳で見つめてくる。我を忘れて見入って、思考回路が停止する。色んな感情が含まれてそうなみゆの顔に、心臓がうるさいぐらい鳴る。

「な、内緒って、」

「……ほら、行こう!」

みゆはすぐに切り替えて、下駄箱へ向かっている。
内緒って何?!

「飲み物持ってくるね。
いつも通り、水でいいかな?」
「はーい。お願いします。」

帰り道の間、悩みながら話していたが、
あまりにも、みゆが普通過ぎてそんなに重要なことではないのかな。と思い考えをやめることにした。

「ほい。どうぞ。」
「てんきゅ!」

みゆが階段を上ってくる音がしたから、いつも通り、ドアを開けると、やはり、両手に色々持っていた。
そして一緒にお盆に乗ってる物を置くとベッドに腰をかける。

「てかさ、
康太とのメッセージ見た?
急いでたのってさ、また、合コンの人数集めだったみたいだね!
本人、恋する気なさそうなのにな。」

みゆの部屋に置いてある前回読んだ続きの漫画を
取り出す。

「……陽太は?
あ、そっか。
恋はしたいんだっけ?」

「おい!
失礼だろ!
全員みゆが取っていくからだろ!」

みゆも原因のひとつだろ!と少しイラっとしたが、みゆに当たるのもおかしいと思い、冗談っぽく怒る。

「ああ、もちろん。
……取っていったよ。」

いつもと違う、泣きそうなみゆの声に漫画から顔を上げる。

「どした?みゆ。
 !」

みゆは近寄ってきてあつい抱擁を受ける。また体調悪くなったのか。よくわからないが、昔から調子が悪くなると、スキンシップを取りたがるから今日も受け止める。

「ずるいよ。陽太。」

相当疲れたんだな。
近藤さんからの告白からおかしいから、また何か言われたんだろう。みゆだって、人間だから、振るのもきつい。って前言ってたな。

「はいはい。」

でも僕は無理には聞かずに腕を回して、少し早いみゆの心臓の音を聞く。
みゆの部屋だから部屋中、みゆの匂いがして
なんだか落ち着いてくるし、大好きだ。

「陽太、ありがとう。
な、このゲームやらない?」

僕から離れたみゆは落ち着いたのか、いつもみたいにみんなに見せるクールな顔になってた。


それから何週間か経ち、梅雨が訪れた。梅雨は嫌いだ。ジメジメするし、湿気で熱いし。

「おはよう。」
「はー。」

みゆと二人で教室に着いた数分後に
遅れて康太が来た。
寝坊したのもあるが、何か他に原因があるみたい。

「どしたの?康太。」
「それがさ、」

大きくため息をつきながら、席に着いた康太の話を聞くと、
昨日の合コンで相当しつこい女子がいて、最後に告白されて振ったらその子と仲のいい子に怒られてすごかったらしい。

「はは、それは大変だったね。」

想像以上の修羅場に苦笑いしか出ない。
康太は机に頭をのせて辛そうだ。

「だいじょう、」

手を伸ばして頭を撫でようとすると、横からみゆが僕の伸ばした手を掴んで、後ろから体を覆うように抱きしめてくる。

「はいはい。みゆごめんね?」
「陽太も大変だねー。
そんな大きな赤ちゃんがいて。」

康太は少し呆れているがもはや日常なため、いつも通りの笑顔で意味もなくシャーペンで遊んでいる。
僕は顔は見えないがみゆのサラサラな髪の毛を撫でる。
みゆは、例え康太でも基本的に僕がみゆ以外とスキンシップを取るのを嫌がる。
もう慣れているのと、少しだけ過去のことを思い出すから、大人しく受け止めている。

「あれ!今日も甘えん坊さん?」

そう言いながら慌てて入って来たのは連。遅刻ではないが、焦っていたようで髪がはねている。

「連!今日も寝坊?か!何してたんだよ!」
「いやー、友達と雑談が止まらなくて!」

連はいろんな人から声をかけられるし、寝坊の理由は大体、友達関連だ。
案の定、今もクラスメイトに呼び止められ雑談をしてる。

「東堂君!呼んでるよ!」

教室の扉の前を見ると、みゆに声をかけれるのが嬉しいのか、少し頬を染めたクラスメイト(女子)が呼んでいる。

「みゆ?
呼ばれてるよ。」

「うーん。」

みゆは僕から離れたくないみたいで、頭をグリグリと押し付けてくる。
くすぐったいよ。

「ほら。行ってきな!」

僕が引き離して背中を押すと、「まだ、陽太と居たかったのに」
と文句をブツブツ言いながらも向かった。

「……こういう所見ると王子だな。」

独り言を誰にも聞こえない音量で呟く。どういう意味かというと、みゆは僕たちの中にいる時は僕にべったりだが、外に出ると一応王子を演じている。今も、女子に「ありがとう。」と爽やかな笑みを見せて、優しく話している。

「いやー。
陽太もあんなに独占されたら、大変だな!」

連は友達と話し終わったのか、苦笑いしながら、こちらに来た。

「独占?
そう?」

僕は不思議で首を傾げる。よく分からないけど、中学生以外の時はこんな感じだったから。

「こわ!
まあ、一見さっぱりそうに見えるよな!
……いや、やっぱり重いか!陽太限定で!」

連はサムズアップして、片方の眉と口角をグッと上げて引きつったように笑う。