嫁と呼ばれたい俺はぬい活で告白したいと思います

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「今日から二年生か」

 去年と同じ時間に家を出てきたと言うのに、既に校舎には大勢の生徒がいて俺は大分驚いた。自転車置き場は暫定でそのまま一年のクラスの場所に置くよう指示されているから、いつもの場所に自転車を停めた。

「伊知郎はまだ、来てないかぁ」

 三学期になってようやく覚えた伊知郎の自転車は見当たらない。俺と同じメーカーの自転車である。すこし離れたところに東中(がっちゅう)のステッカーが貼られた自転車が置かれていた。きっと松浦さんだろう。駅から歩いてくる生徒は、正門ではなく横門から入ってくるので、そのまま真っ直ぐ昇降口に行ってしまう。

――大丈夫、大丈夫。

 俺は自分に言い聞かせた。三学期の終わりに渡された学年末テストの成績表と通知表を見る限り、五組落ちする理由は見当たらなかった。
 俺は無意識に首の赤いネックウォーマーを引き上げて、口元を隠した。背負うカバンには透明ポーチがぶら下がっている。透明な塩ビの上から中のぬいぐるみをひとなでした。

――大丈夫。
 
 暫定と言われているから、使う下駄箱も一年の時の場所だ。無意識に伊知郎の下駄箱を確認してしまう。けれど、やっぱり伊知郎の靴は入ってはいなかった。

「四階まで上がるのも今日が最後かぁ」

 校舎の北側にある階段はハッキリ言って寒い。伝統のある古い校舎なので、ぶっちゃけコンクリートに塩ビの床材が貼られているだけの作りなのだ。

「うー今日も寒い」

 思わずそんなことを口にしながら、やや小走りで俺は四階にある一年一組に向かった。
 二年のクラスは教卓上に張り出されているらしく、既に登校している生徒が代わる代わる教卓の上を覗き込んでいた。二年のクラスを見て喜ぶ者と落胆する者がいて、俺は少し警戒してしまった。

――これは、表情に気をつけないとやらかすやつだ。

 首の赤いネックウォーマーをさらに上にあげ、鼻まで隠して俺は教卓に向かった。貼られているのは出席簿だった。名前の横に書かれた数字が二年のクラスらしい。俺の名前は一番上だから、迷うことなく確認することができる。
 覗き込んだ教卓の上に貼られた出席簿、一番上にある俺の名前【安達優一】の横に書かれた数字を確認した時、横から伸びてきた手がその下の方にある名前を指さした。当然俺の目線はそこに行く。

 隣に立っているであろう、その人物を確認しようと顔を横に動かした時、顔の一部が軽く触れ合ったのはナイショだ。