嫁と呼ばれたい俺はぬい活で告白したいと思います

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「俺との写真はSNSにあげてないじゃん」

 伊知郎から送られてきたSNSのリンクを開いてみれば、確かにそこには伊知郎の日常があった。さかのぼれば中学の時からやっているらしく、試合結果とかその時食べた食事とかがアップされていた。バスケ部のころの伊知郎は、有名なバスケ作品のキャラクターに似せた髪型をしていて、今と大分違っていた。

「なんか新鮮」

 バスケのエースナンバーである四番のユニフォームを着た伊知郎は、元気いっぱいと言う笑顔を浮かべている。

「バスケのユニフォームって露出が多すぎるよ」

 二の腕どころか肩まで出ているデザインのユニフォームは、中学生ながらいかにもスポーツマンといった伊知郎の筋肉がよくわかる。周りと比較しても、伊知郎は筋肉室な方だった。

「それで松浦さんは伊知郎の事ヒーローって言ったんだ」

 全く興味がなかったけれど、市内の三つの中学生で練習試合をすれば、伊知郎のいる東中(がっちゅう)が一番成績が良かったようだ。

「良かった。俺テニス部で」

 そんなことを言いながら、俺は自分の二の腕をまくって確認してみる。テニスの素振りの影響で、実は右手の方が長くなっているのが嫌いなのだ。

「右腕だけなら、何とか?」

 スマホケースの画面を拡大して伊知郎の腕と見比べてみる。

「体育の授業で伊知郎上手にシュート決めてたもんな」

 それで余計に新谷がイラついていたのかもしれない。学年末テストが終わると、一、二年だけの球技大会があるのだ。それの種目がバスケとバレーなんだよな。どちらも俺は苦手種目である。伊知郎の勇姿を近くで見たいけど、足手まといになるからバレーを選ぶしかない。そうすれば試合は被らないから、応援ができるはずである。

「ユニフォームもあり、なのかな?」

 俺は机の上に並べて置いてある俺と伊知郎のぬいぐるみを見た。伊知郎の顔は文化祭と体育祭の集合写真からの切り抜きである。

「この顔、めっちゃ好きかも」

 オムライスを前にして、二人で並んで撮った写真の伊知郎は、SNSにアップされた写真より笑顔である。

「押しが尊いって、こーゆー事かよ」

 俺は伊知郎に対する気持ちを()()の一言で片付けることにした。考えたら負けな気がするからだ。

「ノート渡したの俺なんだぞ。負ける訳にはいかないからな。絶対に勝って言うことをひとつきいてもらうんだ」

 俺はノートを広げて学年末テストに向けての復習を始めた。やる内容はもちろん伊知郎と勝負した一学期の内容である。テストの採点をした感じだと、松浦さんが言う通り、伊知郎は勉強もスポーツもできるヒーローということになる。現にバスケはかなり上手かった。
 中学時代メガネだったというのは、SNSにあげられた写真からもわかった。コンタクトを買ってもらったときに、それまでつかっていたメガネの写真もあげていたからだ。メガネの形はレトロ感のある丸型だった。加工アプリを使って伊知郎の顔にメガネをつけてみたけれど、ガリ勉くんと言う感じはしなかった。むしろ知的でかっこよかったのだ。

「てか、俺がコンタクトじゃないことバレてるよな」

 あの日、伊知郎は俺がコンタクトがズレて泣いたと思って対処してくれたけれど、目薬をさす時に気がついたと思うんだよな。俺の目にコンタクトが入ってないことに。

「騙してごめんだけど、推しの気を引くためにはあざといのも有効って伊知郎が神と言ってた配信者がいってたんだからありだよな」

 あと二回、伊知郎と図書館で勉強したらその後はひたすら自主勉をするしかない。そして絶対五組入りして、伊知郎との勝負に勝つんだ。
 そのために、密かにぬい活を進める決心をした俺なのであった。