18
「昼飯代約千円か」
帰宅したら当然ながら、家族は家にいた。土日の夕飯は早い。俺は部屋に戻りカバンの中身を机に出しながら、考えた。
「飯代五百円しかくれないんだよな」
学校の購買なら五百円あればパンを二つ三つ買って、ペットボトルのドリンクぐらい買えるだろう。だが、図書館に飲食スペースはない。弁当を持っていっても食べる場所はないのだ。もちろん、図書館の近くにはいくつかの飲食店がある。ファミレスは当然土日は混む。チェーン店の牛丼屋があるからそこを使えば五百円で確かにおさまる。母親はその考えで五百円を渡して来たのだろうけれど、伊知郎オススメの中華料理屋だと一食が、約千円なのだ。
「仕方がないよな。楽しい時間に出費は付き物だ」
俺は正月に親戚から貰ったポチ袋を引き出しから取り出した。
「千円札でくれたんだよな。あのおじさん」
親戚のおじさんが毎年沢山あげた感じを出すために、千円札でお年玉をくれるのだ。万札を期待しているから、毎年肩透かしを食うのだけれど、今年はこのポチ袋がありがたくて仕方がない。
「これで何とか、あと三回はしのげる」
俺は千円札の束を財布にしまい、あと三回確約された伊知郎との図書館デートを心待ちにして下に降りていった。
「学年末まで図書館で勉強するから昼飯代を下さい」
そして、夕飯の後に母親にお願いをした。
「家ですればいいじゃないの」
テレビを見ながらコーヒーを飲んでいた母親の視線が父親に移った。だから俺も父親の方を見る。
「マジで来年のクラス編成、成績順なんだよ。平均点か学年末テストの順位か微妙なところなんだよ。首席で入学して五組落ちはしたくない」
俺がそう言うと、 母親がため息を着いた。
「それなのよねぇ。地元の高校だから、近所の人みんな知ってるのよ。二年と三年のクラス編成が成績順って」
「え?そうなの」
その話に食いついてきたのは妹だった。
「そうだよ。その年によって基準が変わるけど、成績順なのは確か。平均点か最後の学年末テストの結果か、それはその年によって違うからなんとも言えない」
俺がそんな事を口にすると、妹はものすごく嫌そうな顔をした。
「うわぁ、高校入ってからも成績とか気にしないといけないとか、マジ無理」
「高校に入ったらその先の大学受験があるからな」
「私専門学校に行くわ」
「専門学校だって推薦のあるなしで受験が大変なんだぞ」
「うそー、面倒くさぁ」
「そもそも高校は成績悪いと進級できないからな」
「えー、ソコソコの成績で過ごしたい」
「俺の高校はそれをしたら即バレすんの」
「ほんと、それなのよねぇ」
母親がそう言って、もう一度父親の方を見た。
「首席で入学しているのはみんなにバレてるからなぁ。入学したあと成績が落ちたなんて噂されたら母さんだって恥ずかしいだろ」
「そうなんですけどね」
新入生代表挨拶があるから、夫婦揃って意気揚々とに入学式に望んだのである。その栄光からの失墜は本人である俺より両親の方が手痛いだろう。
「土日に図書館で勉強するのか」
テレビの方に向けていた顔を少しだけこちらに向けて、父親が聞いてきた。
「うん。同じクラスの、友だちと一学期のテストから復習してるんだ」
「それで四回か」
「そうなんだ。そうなんです。お父様、飯代を下さい。俺だけしけた飯は食えません」
「お年玉使えばいーじゃん」
「遊びに行ってる訳じゃないのに、なんでお年玉使わなくちゃいけないんだよ」
妹が恐ろしい事を口にしてきたけれど、それは既に対策済みである。親せきのおじさんからもらったお年玉は既に俺の財布の中である。
「ご飯代、いるの?」
「いるでしょ!いるよ。飯抜きで勉強なんかできないよ」
「お弁当じゃだめなの?」
「図書館は飲食禁止だよ」
「じゃあ、一日五百円でいいわよね?」
母親はそんなことを口にしながら父親の方を見た。
「親の見栄のためにも頑張ってくれよ」
そう言って、父親が自分の財布から二千円を俺に手渡してきた。
「えっ、ずるーい。お兄ちゃんだけ」
「お前は勉強しに図書館に行かないだろ」
「部活、部活で体育館に行くよー」
「あなたにはお弁当を作ります」
「えー、私も外食したい」
「じゃあ、明日のお昼は外食にしましょう」
「じゃあ、焼肉!」
「昼からそんな豪勢なものは食べません。ファミレスよ」
「やったぁ」
「イタリアンね」
「ちょ安なやつじゃん」
「当たり前です」
「俺は行かないからな」
「えー、お父さん来ないとマジでショボくなる」
「普段仕事で混んでる社食でたべてるからな。お父さんは家でインスタントラーメンを食べる」
家族がなんだかよく分からない会話を始めたので、俺は父親に礼を言って自分の部屋に戻った。何とか手に入れた二千円はかなりデカイ。まぁ、父親も会社の人たちに俺のことを自慢していたのだろうから、俺が来年五組に入れないのは相当なダメージだろう。母親だって、パート先の人たちに相当自慢していただろうから、休憩時間の自慢話のネタが無くなるのはキツイはずである。
「今日の復習をして、明日も伊知郎と図書館デートだ」
俺は気合いを入れると共に、机の上に並べて飾ってある自作のぬいぐるみを見た。結局色違いのネックウォーマーを付けてしまった。まだ、それしか着せていないけれど。
「沢山ノートを使った方の言うことをきくって言ってたもんな。この勝負、絶対に勝つ」
「昼飯代約千円か」
帰宅したら当然ながら、家族は家にいた。土日の夕飯は早い。俺は部屋に戻りカバンの中身を机に出しながら、考えた。
「飯代五百円しかくれないんだよな」
学校の購買なら五百円あればパンを二つ三つ買って、ペットボトルのドリンクぐらい買えるだろう。だが、図書館に飲食スペースはない。弁当を持っていっても食べる場所はないのだ。もちろん、図書館の近くにはいくつかの飲食店がある。ファミレスは当然土日は混む。チェーン店の牛丼屋があるからそこを使えば五百円で確かにおさまる。母親はその考えで五百円を渡して来たのだろうけれど、伊知郎オススメの中華料理屋だと一食が、約千円なのだ。
「仕方がないよな。楽しい時間に出費は付き物だ」
俺は正月に親戚から貰ったポチ袋を引き出しから取り出した。
「千円札でくれたんだよな。あのおじさん」
親戚のおじさんが毎年沢山あげた感じを出すために、千円札でお年玉をくれるのだ。万札を期待しているから、毎年肩透かしを食うのだけれど、今年はこのポチ袋がありがたくて仕方がない。
「これで何とか、あと三回はしのげる」
俺は千円札の束を財布にしまい、あと三回確約された伊知郎との図書館デートを心待ちにして下に降りていった。
「学年末まで図書館で勉強するから昼飯代を下さい」
そして、夕飯の後に母親にお願いをした。
「家ですればいいじゃないの」
テレビを見ながらコーヒーを飲んでいた母親の視線が父親に移った。だから俺も父親の方を見る。
「マジで来年のクラス編成、成績順なんだよ。平均点か学年末テストの順位か微妙なところなんだよ。首席で入学して五組落ちはしたくない」
俺がそう言うと、 母親がため息を着いた。
「それなのよねぇ。地元の高校だから、近所の人みんな知ってるのよ。二年と三年のクラス編成が成績順って」
「え?そうなの」
その話に食いついてきたのは妹だった。
「そうだよ。その年によって基準が変わるけど、成績順なのは確か。平均点か最後の学年末テストの結果か、それはその年によって違うからなんとも言えない」
俺がそんな事を口にすると、妹はものすごく嫌そうな顔をした。
「うわぁ、高校入ってからも成績とか気にしないといけないとか、マジ無理」
「高校に入ったらその先の大学受験があるからな」
「私専門学校に行くわ」
「専門学校だって推薦のあるなしで受験が大変なんだぞ」
「うそー、面倒くさぁ」
「そもそも高校は成績悪いと進級できないからな」
「えー、ソコソコの成績で過ごしたい」
「俺の高校はそれをしたら即バレすんの」
「ほんと、それなのよねぇ」
母親がそう言って、もう一度父親の方を見た。
「首席で入学しているのはみんなにバレてるからなぁ。入学したあと成績が落ちたなんて噂されたら母さんだって恥ずかしいだろ」
「そうなんですけどね」
新入生代表挨拶があるから、夫婦揃って意気揚々とに入学式に望んだのである。その栄光からの失墜は本人である俺より両親の方が手痛いだろう。
「土日に図書館で勉強するのか」
テレビの方に向けていた顔を少しだけこちらに向けて、父親が聞いてきた。
「うん。同じクラスの、友だちと一学期のテストから復習してるんだ」
「それで四回か」
「そうなんだ。そうなんです。お父様、飯代を下さい。俺だけしけた飯は食えません」
「お年玉使えばいーじゃん」
「遊びに行ってる訳じゃないのに、なんでお年玉使わなくちゃいけないんだよ」
妹が恐ろしい事を口にしてきたけれど、それは既に対策済みである。親せきのおじさんからもらったお年玉は既に俺の財布の中である。
「ご飯代、いるの?」
「いるでしょ!いるよ。飯抜きで勉強なんかできないよ」
「お弁当じゃだめなの?」
「図書館は飲食禁止だよ」
「じゃあ、一日五百円でいいわよね?」
母親はそんなことを口にしながら父親の方を見た。
「親の見栄のためにも頑張ってくれよ」
そう言って、父親が自分の財布から二千円を俺に手渡してきた。
「えっ、ずるーい。お兄ちゃんだけ」
「お前は勉強しに図書館に行かないだろ」
「部活、部活で体育館に行くよー」
「あなたにはお弁当を作ります」
「えー、私も外食したい」
「じゃあ、明日のお昼は外食にしましょう」
「じゃあ、焼肉!」
「昼からそんな豪勢なものは食べません。ファミレスよ」
「やったぁ」
「イタリアンね」
「ちょ安なやつじゃん」
「当たり前です」
「俺は行かないからな」
「えー、お父さん来ないとマジでショボくなる」
「普段仕事で混んでる社食でたべてるからな。お父さんは家でインスタントラーメンを食べる」
家族がなんだかよく分からない会話を始めたので、俺は父親に礼を言って自分の部屋に戻った。何とか手に入れた二千円はかなりデカイ。まぁ、父親も会社の人たちに俺のことを自慢していたのだろうから、俺が来年五組に入れないのは相当なダメージだろう。母親だって、パート先の人たちに相当自慢していただろうから、休憩時間の自慢話のネタが無くなるのはキツイはずである。
「今日の復習をして、明日も伊知郎と図書館デートだ」
俺は気合いを入れると共に、机の上に並べて飾ってある自作のぬいぐるみを見た。結局色違いのネックウォーマーを付けてしまった。まだ、それしか着せていないけれど。
「沢山ノートを使った方の言うことをきくって言ってたもんな。この勝負、絶対に勝つ」
