嫁と呼ばれたい俺はぬい活で告白したいと思います

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「優一くんって、いつも教科書読んでるの?」

 休み時間は十分しかないというのに、わざわざ違う教室にまでやってきて俺の一人時間の邪魔をする女子がウザイ。教科書を読みながら、俺は背中を廊下に向けて教室内に体を向けているのだ。ここまであからさまに拒絶の姿勢を見せていると言うのに、なんだって女子どもは図々しくも俺に声をかけてくるんだろう。

「そうだね。予習だから」

 返事をしながらも、俺は絶対に女子の方なんて見てやるつもりなんてない。邪険にされている事になぜ気が付かないんだろう?たぶん馬鹿なんだろうな。

「さすがは学年トップだよねぇ」

 俺のことを褒めて気分よくさせれば振り向くとでも思っているんだろうか。それなら本当に邪魔すんなよ。としか思わないんどけどね。俺としては。

「ありがとう」

 お礼を言いながらも俺は振り返らない。教科書を見ている振りをしつつ、俺の目線は教科書のその先にあるからだ。窓際の席、換気のために風に揺れるカーテンのせいでその姿が見え隠れしている。冬の日差しを浴びて髪が薄茶色に輝いて、ガラス細工みたいに見える。いつも通りに片手に本を持つ姿勢で、肘を机についている。目線だけを動かして読んでいるらしく、頭が動く気配は無い。特別綺麗な顔をしている訳では無い。目立つ訳でもない。ただ、ある日突然俺はその横顔が忘れられなくなってしまったのだ。