朝から晩までどこにいても暑い時期。
とある公園で、軽快な音楽に合わせて皆が、体を動かしている。
これは、ラジオ体操というもので、夏休みの風物詩でもあると、ゆうちゃんお父さんが言っていた。
ゆうちゃんが遊びに来る時間が、朝になる1か月が始まる。
僕は、どうやってこの暑さから逃げようか試行錯誤を繰り返しながら、いつもの道でお昼寝をしていた。
「ぶち。こんなに暑いのに、相変わらずね。」
目を開けると、歩きづらそうな黒く光る足が見える。これは、確かハイヒールと言っていた。そのまま顔を上げると、毛並みを1つに纏めた女が立っていた。上下黒色の服で、とても堅そうだ。
「見て、今日も私決まっているでしょ?このスーツ、夏仕様なんだ。」
そういって、くるっと回ってみせる。
僕のことを「ぶち」と呼ぶ人物。彼女は、美里という人だ。
なぜ、名前を知っているのか。
それは、出会って最初に自己紹介をしてくれたから。
「あら、可愛い。私は、美里っていうの。よろしくね!」
彼女は、とてもフランクな人間だ。朝、僕を見つけると必ず挨拶をして、出かけていく。
毎日楽しそうな彼女は、梅本先生と真逆で。見ていてとても面白かった。
どんなに暑くても、彼女はびしっと決めている。短所など無いのではと錯覚するほど、素敵な人物。美里は、必ず僕に「いってきます!」と笑顔で手を振り出かけて行った。
空が暗くなり、月が顔を出す。
この時期は、太陽が夜更かしをするせいか、月は寝坊がちだ。
僕は、あまりの暑さにうまく昼寝ができず、ボーしながら暗くなった住宅街を歩いていた。すると、コツ、ズー、コツという不規則な足音が聞こえてくる。僕は、ゆっくり近づくと、そこにはふらつきながら歩く、美里さんがいた。
「あ~、ぶち~。おつかれさまです!」
呂律が回らずフラフラしながら、右手を上げる。なぜか指だけは綺麗に揃っている。確か、今野さんから、敬礼というポーズだと教えてもらった。でも、彼らがする敬礼と違って、なんだかかっこよくない。
そして、彼女からは頭が、クラクラするようなニオイがする。これは、なんだ!?僕は、見たことがない美里さんに、驚きのあまり固まってしまう。
彼女は、夜の静けさとは似つかわしくない大きな声で、話し始めた。
「もう、聞いて〜!あの〜、上司が〜。ほんろに、ムカつくの!もう、イヤ!」
ハキハキ話す彼女しか知らない僕は、何を話しているのかさっぱり分からない。昼間寝られなかった影響もあり、どんどん思考が止まっていく。
僕は、呆気に取られていると、「美里!」と呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこには梅本先生が立っていた。
「うわぁ……悪いな、あめ。こいつ、酔っぱらってんな。」
梅本先生は、ヤレヤレと頭をかかえている。
「あ!お兄ちゃん、たっだいま〜。」
美里さんは、フニャフニャとしながら座りこむ。
僕は、救世主が現れたと思い、駆け出した。そして、足元の裾を噛みつき引っ張る。
「妹が迷惑をかけた。」
梅本先生は、大きな溜息をつきながら、美里さんに近づく。
「ほら、立て!」
うん……。頷いたまま、美里さんは動かなくなる。そして、スーという呼吸が聞こえた。
「最悪だ。」
梅本先生は、項垂れる。そう。美里さんは眠ってしまったのだ。思わず僕もあんぐりしてしまった。
次の朝。僕は、梅本先生家の近くを通る。すると、後ろから「ねこさん。」と呼ぶ声が聞こえた。僕は、振り返るとゆうちゃんがお父さんと一緒にいた。新聞配達の時間だ。
「今日は、ここにいるなんて。おはよう。」
そう言って、二人は思い思いに僕を撫でる。外はじりじりと暑いのに、穏やかな気持ちになる。二人の温かさに安らいでいると、コツコツという足音が聞こえてきた。この音はもしかして。近づいてきたのは、真っ青な顔をした美里さんだった。
「ぶち。おはよう。」
少し気まずそうにしている。そして、ものすごい勢いで缶詰を差し出しながら頭を下げた。
「本当に昨日はごめん。」
あまりの凄さに、ゆうちゃん親子は驚く。ゆうちゃんお父さんが、困惑しながら質問を投げかけた。
「あの、どうしたのですか?」
「はい。実は、昨日の夜に仕事の飲み会がありまして。そこで飲みすぎてしまい……。」
ここまでくると、ゆうちゃんお父さんは察しがついたようで、アハハと乾いた笑いが起きる。ゆうちゃんはよく分かっていない様子だ。
「本当にごめんね。ぶち。これは、お詫びです。」
僕は、缶詰から開かれた香りに食欲がそそられる。これは、マグロという味!僕は、勢いよく飛びつき、無我夢中で堪能する。やっぱり、旨い!
僕の様子を見て、3人が声を出して笑った。
夏の朝は、笑顔が絶えない。僕は、そんな日々が大好きだ。
とある公園で、軽快な音楽に合わせて皆が、体を動かしている。
これは、ラジオ体操というもので、夏休みの風物詩でもあると、ゆうちゃんお父さんが言っていた。
ゆうちゃんが遊びに来る時間が、朝になる1か月が始まる。
僕は、どうやってこの暑さから逃げようか試行錯誤を繰り返しながら、いつもの道でお昼寝をしていた。
「ぶち。こんなに暑いのに、相変わらずね。」
目を開けると、歩きづらそうな黒く光る足が見える。これは、確かハイヒールと言っていた。そのまま顔を上げると、毛並みを1つに纏めた女が立っていた。上下黒色の服で、とても堅そうだ。
「見て、今日も私決まっているでしょ?このスーツ、夏仕様なんだ。」
そういって、くるっと回ってみせる。
僕のことを「ぶち」と呼ぶ人物。彼女は、美里という人だ。
なぜ、名前を知っているのか。
それは、出会って最初に自己紹介をしてくれたから。
「あら、可愛い。私は、美里っていうの。よろしくね!」
彼女は、とてもフランクな人間だ。朝、僕を見つけると必ず挨拶をして、出かけていく。
毎日楽しそうな彼女は、梅本先生と真逆で。見ていてとても面白かった。
どんなに暑くても、彼女はびしっと決めている。短所など無いのではと錯覚するほど、素敵な人物。美里は、必ず僕に「いってきます!」と笑顔で手を振り出かけて行った。
空が暗くなり、月が顔を出す。
この時期は、太陽が夜更かしをするせいか、月は寝坊がちだ。
僕は、あまりの暑さにうまく昼寝ができず、ボーしながら暗くなった住宅街を歩いていた。すると、コツ、ズー、コツという不規則な足音が聞こえてくる。僕は、ゆっくり近づくと、そこにはふらつきながら歩く、美里さんがいた。
「あ~、ぶち~。おつかれさまです!」
呂律が回らずフラフラしながら、右手を上げる。なぜか指だけは綺麗に揃っている。確か、今野さんから、敬礼というポーズだと教えてもらった。でも、彼らがする敬礼と違って、なんだかかっこよくない。
そして、彼女からは頭が、クラクラするようなニオイがする。これは、なんだ!?僕は、見たことがない美里さんに、驚きのあまり固まってしまう。
彼女は、夜の静けさとは似つかわしくない大きな声で、話し始めた。
「もう、聞いて〜!あの〜、上司が〜。ほんろに、ムカつくの!もう、イヤ!」
ハキハキ話す彼女しか知らない僕は、何を話しているのかさっぱり分からない。昼間寝られなかった影響もあり、どんどん思考が止まっていく。
僕は、呆気に取られていると、「美里!」と呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこには梅本先生が立っていた。
「うわぁ……悪いな、あめ。こいつ、酔っぱらってんな。」
梅本先生は、ヤレヤレと頭をかかえている。
「あ!お兄ちゃん、たっだいま〜。」
美里さんは、フニャフニャとしながら座りこむ。
僕は、救世主が現れたと思い、駆け出した。そして、足元の裾を噛みつき引っ張る。
「妹が迷惑をかけた。」
梅本先生は、大きな溜息をつきながら、美里さんに近づく。
「ほら、立て!」
うん……。頷いたまま、美里さんは動かなくなる。そして、スーという呼吸が聞こえた。
「最悪だ。」
梅本先生は、項垂れる。そう。美里さんは眠ってしまったのだ。思わず僕もあんぐりしてしまった。
次の朝。僕は、梅本先生家の近くを通る。すると、後ろから「ねこさん。」と呼ぶ声が聞こえた。僕は、振り返るとゆうちゃんがお父さんと一緒にいた。新聞配達の時間だ。
「今日は、ここにいるなんて。おはよう。」
そう言って、二人は思い思いに僕を撫でる。外はじりじりと暑いのに、穏やかな気持ちになる。二人の温かさに安らいでいると、コツコツという足音が聞こえてきた。この音はもしかして。近づいてきたのは、真っ青な顔をした美里さんだった。
「ぶち。おはよう。」
少し気まずそうにしている。そして、ものすごい勢いで缶詰を差し出しながら頭を下げた。
「本当に昨日はごめん。」
あまりの凄さに、ゆうちゃん親子は驚く。ゆうちゃんお父さんが、困惑しながら質問を投げかけた。
「あの、どうしたのですか?」
「はい。実は、昨日の夜に仕事の飲み会がありまして。そこで飲みすぎてしまい……。」
ここまでくると、ゆうちゃんお父さんは察しがついたようで、アハハと乾いた笑いが起きる。ゆうちゃんはよく分かっていない様子だ。
「本当にごめんね。ぶち。これは、お詫びです。」
僕は、缶詰から開かれた香りに食欲がそそられる。これは、マグロという味!僕は、勢いよく飛びつき、無我夢中で堪能する。やっぱり、旨い!
僕の様子を見て、3人が声を出して笑った。
夏の朝は、笑顔が絶えない。僕は、そんな日々が大好きだ。
