空の色が、太陽を隠すように薄暗くあまり綺麗じゃない。
匂いも、少しジメジメする季節。
気を抜くと、空が泣くように雨が降り始める。
僕は、雨宿りをするために、車という乗り物の陰に隠れていた。
この時期は、昼寝をすることが難しい。雨による湿度で、毛並みもシットリする。あまり好きではない。
早く空が泣き止むことを祈りながら、人の行き来を眺めていた。
「今日もここにいるのか?危ないぞ!」
怒りと心配が入り混じる、低い声が聞こえる。見上げると、上下紺色の服を着た人物が僕をみていた。確か、ジャージ?という服らしい。見るたびに、爪が引っかかりそうで痛そうな不思議な服だ。
「これから仕事だから、離れてろ。轢かれる。」
車の扉を無造作に開きながら、持っていた荷物を投げ入れる。今日も、相変わらず不機嫌そうだなと思った。
ジャージを着た人は、いつ会っても憂鬱そうな表情をしている。その、仕事というものが好きではないのだろうか?
雨が好きではない僕と、同じなのかもしれないと思った。そんなことを考えていたら、準備が整ったのか。その男が僕に近づき、一言。「ほら、どいてろ。」と言って、僕を強引に車から遠ざけた。
「じゃあな。あめ。」
そう言って、車に乗り込み男は出発した。
雨は、好きじゃない。でも、その男は僕を「あめ」と呼んだ。
それから1週間が経った。相変わらず、空は泣いている。いつものように、ジャージの人が使っている車の陰で雨宿りをしていた。すると、雨音に混ざって無造作な足音が近づいてくる。この音が聞こえると、あの人の出発時間だ。僕は、怒られる覚悟をしながら、その人物を待っていた。
「あ、あめ。またいたのか?」
男は、一言だけ僕につぶやき、車の扉を開けた。いつもより力が無い気がする。
僕は、違和感を感じ、思わず顔を見た。すると、顔色があまり良くない。憂鬱や不機嫌とは違い、辛そうに見えた。何より、ジメジメして暑さも感じるのに、震えてるように見える。あまりの違いに驚いて、足元の布に噛みつき、引っ張った。大丈夫?と訴えるように。
「ん?どうした。」
いつもなら、そこからぶっきらぼうな言葉が出てくるのに、続かない。僕は、本能的に危ないと感じた。これは、行かせてはいけないと。
僕は、車の上に乗り、出発の邪魔をした。
「ほら、どけ。」
いくら、冷たく言われようと僕は動かないと決めた。そして、伝わるか分からないがこう訴えた。――一緒雨宿りをしようと。
すると、伝わったのか。優しくほほ笑み、僕の背中に手を伸ばした。
「そうか、休めってことか。まぁ、生徒たちにも悪いしな。」
そう言って、車の鍵をかけ直し、家の中へ戻って行った。そんな優しい顔ができるのかと、初めて知った。
次の日の夕方。ゆうちゃんとまいちゃんが、「ただいまぁ〜」と挨拶をしながら、会いに来てくれる。僕は、いつも通り、おかえりなさいの意味を込めて、ゆっくりしっぽをふった。
「昨日と今日ね。梅本先生が風邪でお休みだったの。大丈夫かな。」
ゆうちゃんは、僕の頭を撫でなが、心配している。
「大丈夫だよ!だって、運動大好きな怖い先生だよ!」
まいちゃん、あっけらかんとしながら言い放った。すると、無造作な足音と共に、聞き馴染みのある低い声が聞こえてくる。
「怖い先生で悪かったな。」
予想外の人物登場に、思わず二度見をした。そこに立っていたのは、ジャージの男。
「う、梅本先生!?」
まいちゃんは、ウサギのようなジャンプ力で、ゆうちゃんの後ろに隠れる。ゆうちゃんは、驚きのあまり固まってしまった。ついでに僕もだ。
「皆して、化け物を見たような顔をするな。」
不機嫌そうに、梅本先生がぼやく。昨日と違って元気になって良かった。そして、この人の名前は「梅本先生」だと初めて知った。皆、ちゃんと名前があるんだなと。
「せ、先生。さようなら〜!」
まいちゃんは、怒られると思ったのか、一目散に走り出した。
「あ!まいちゃん!!先生、ねこさん。さようなら。」
ゆうちゃんは、慌ててお辞儀をしたのち、追いかけていった。
「相変わらずだな。あいつらは。」
そういいながらも、どこか優しさを感じる。
「後、昨日は止めてくれてありがとうな。明日も、雨降ってたら、雨宿りに使っていいぞ。じゃあ、また明日。あめ。」
言い終えると、梅本先生は家に戻って行った。いつも冷たい彼の言葉。今回は、少し温かく嬉しかった。
仕方がない。明日もここで雨宿りをしようかな。
匂いも、少しジメジメする季節。
気を抜くと、空が泣くように雨が降り始める。
僕は、雨宿りをするために、車という乗り物の陰に隠れていた。
この時期は、昼寝をすることが難しい。雨による湿度で、毛並みもシットリする。あまり好きではない。
早く空が泣き止むことを祈りながら、人の行き来を眺めていた。
「今日もここにいるのか?危ないぞ!」
怒りと心配が入り混じる、低い声が聞こえる。見上げると、上下紺色の服を着た人物が僕をみていた。確か、ジャージ?という服らしい。見るたびに、爪が引っかかりそうで痛そうな不思議な服だ。
「これから仕事だから、離れてろ。轢かれる。」
車の扉を無造作に開きながら、持っていた荷物を投げ入れる。今日も、相変わらず不機嫌そうだなと思った。
ジャージを着た人は、いつ会っても憂鬱そうな表情をしている。その、仕事というものが好きではないのだろうか?
雨が好きではない僕と、同じなのかもしれないと思った。そんなことを考えていたら、準備が整ったのか。その男が僕に近づき、一言。「ほら、どいてろ。」と言って、僕を強引に車から遠ざけた。
「じゃあな。あめ。」
そう言って、車に乗り込み男は出発した。
雨は、好きじゃない。でも、その男は僕を「あめ」と呼んだ。
それから1週間が経った。相変わらず、空は泣いている。いつものように、ジャージの人が使っている車の陰で雨宿りをしていた。すると、雨音に混ざって無造作な足音が近づいてくる。この音が聞こえると、あの人の出発時間だ。僕は、怒られる覚悟をしながら、その人物を待っていた。
「あ、あめ。またいたのか?」
男は、一言だけ僕につぶやき、車の扉を開けた。いつもより力が無い気がする。
僕は、違和感を感じ、思わず顔を見た。すると、顔色があまり良くない。憂鬱や不機嫌とは違い、辛そうに見えた。何より、ジメジメして暑さも感じるのに、震えてるように見える。あまりの違いに驚いて、足元の布に噛みつき、引っ張った。大丈夫?と訴えるように。
「ん?どうした。」
いつもなら、そこからぶっきらぼうな言葉が出てくるのに、続かない。僕は、本能的に危ないと感じた。これは、行かせてはいけないと。
僕は、車の上に乗り、出発の邪魔をした。
「ほら、どけ。」
いくら、冷たく言われようと僕は動かないと決めた。そして、伝わるか分からないがこう訴えた。――一緒雨宿りをしようと。
すると、伝わったのか。優しくほほ笑み、僕の背中に手を伸ばした。
「そうか、休めってことか。まぁ、生徒たちにも悪いしな。」
そう言って、車の鍵をかけ直し、家の中へ戻って行った。そんな優しい顔ができるのかと、初めて知った。
次の日の夕方。ゆうちゃんとまいちゃんが、「ただいまぁ〜」と挨拶をしながら、会いに来てくれる。僕は、いつも通り、おかえりなさいの意味を込めて、ゆっくりしっぽをふった。
「昨日と今日ね。梅本先生が風邪でお休みだったの。大丈夫かな。」
ゆうちゃんは、僕の頭を撫でなが、心配している。
「大丈夫だよ!だって、運動大好きな怖い先生だよ!」
まいちゃん、あっけらかんとしながら言い放った。すると、無造作な足音と共に、聞き馴染みのある低い声が聞こえてくる。
「怖い先生で悪かったな。」
予想外の人物登場に、思わず二度見をした。そこに立っていたのは、ジャージの男。
「う、梅本先生!?」
まいちゃんは、ウサギのようなジャンプ力で、ゆうちゃんの後ろに隠れる。ゆうちゃんは、驚きのあまり固まってしまった。ついでに僕もだ。
「皆して、化け物を見たような顔をするな。」
不機嫌そうに、梅本先生がぼやく。昨日と違って元気になって良かった。そして、この人の名前は「梅本先生」だと初めて知った。皆、ちゃんと名前があるんだなと。
「せ、先生。さようなら〜!」
まいちゃんは、怒られると思ったのか、一目散に走り出した。
「あ!まいちゃん!!先生、ねこさん。さようなら。」
ゆうちゃんは、慌ててお辞儀をしたのち、追いかけていった。
「相変わらずだな。あいつらは。」
そういいながらも、どこか優しさを感じる。
「後、昨日は止めてくれてありがとうな。明日も、雨降ってたら、雨宿りに使っていいぞ。じゃあ、また明日。あめ。」
言い終えると、梅本先生は家に戻って行った。いつも冷たい彼の言葉。今回は、少し温かく嬉しかった。
仕方がない。明日もここで雨宿りをしようかな。
