不思議な家(re-build)

 そして最後になりますが、先に記した通り男児の遺体は粉々に砕きました。レガシーとしてどこかへ隠しています。それからある程度時間が経ってくると、事件のほとぼりも冷め、どうやら私の名前が警察の捜査線上に上がることはなかったことと推定できます。
 そこで、改めてレガシーを欲しました。おじいさんも死んで、やはり私は自由です。自由は孤独の裏返しです。このまま一人で生きて行くにはこの家は大きくて寂しい。同居人が欲しいと感じるようになってきたのです。
 今度のレガシーは、どこにも運ばない。ずっと地下室に眠らせて、私の死ぬる瞬間まで私の手元に置いておこう。そう決めました。
 そうなのです。あなたの目の前にある人骨は、一人目のものではないのです。二人目です。私はついに、己が欲求を抑えるのに失敗したと言う次第なのです。もしかすると、死ぬ寸前まで子供の亡骸を求め続けるのかもしれません。いつか警察に捕まり、周りから糾弾せられるかもしれません。それで私は、構わないと思っています。
 あなたの眼前に置かれている人骨は、確かにこの世に生を受けて存在していた子供のものです。扱いは、どうとでも任せます。
 以上が、私の手記です』

 手記を手に取り目を通していくにつれ、私は己の胃の中に黒々としたものが蓄積されているかのような感覚に陥った。祖母の書いたのはただの手記ではなく、殺人録とでも呼ぶべき暗澹たるものだ。こんなもののために私は家の中をあちらこちら探検したと言うのか。
 玄関の壁を切り開き、ぞっとするような悪寒に苛まれながら歩んだ道の果てに、殺人の記録。それも一人だけではない、少なくとも二人の子供を祖母は殺している。
 一人は骨を瓶詰めにされどこかへ隠された。二人目となったのはあの地下室の中に安置されていた。あるいは三人、四人では済まないかもしれない。もっと多くの人間を(おそらくは子供を)狙って捕らえ、殺害していることもあり得る。
 この私だって対象となり得たと言うことを文脈から読み取り、背筋の寒い思いがした。もはやこれまで抱いていた祖母の幻想は打ち砕かれた。
 私は居間のソファに座り、一人でこの手記を読んでいた。流石にあの空間にいながら祖母のメッセージを読み解く気にはなれなかったからだ。
 私は手記を、ひとまず自分の使っている二階の寝室に持ち込んだ。ベッドの横に配置されているキャビネットの一番上の引き出しを開け、そこに手記を収めた。いずれはもっと上手な隠し場所を見出さなくてはならないだろうが、とりあえず数日はここに入れていて問題ないはずだ。
 寝室を出ると、私の使っている部屋の反対にかつての祖母の部屋が見える。ドアは閉ざされていて、私はそこに入ったがためにこの手記を発見するに至ったのだと、この数時間の経緯を思い返した。