幼いという、有利。幼ければ何をしたって罪には問われません、これも私が首を傾げることの一つです。幼ければまだ若いのだしと言われて無罪放免、反省の色を滲ませる子供の顔の裏にはしかし、再犯する時の悪い顔が浮かんでいる。悍ましい。
ここは平等の場所ですよ、と私は透に声をかけました。その声は言下にき消されました。弱ければ助けてくれる、大人は皆自分を好いているのだという夢の世界にとどまろうとその子は必死のようです。
だが、ここは現実以外の何者でもない。強ければ勝ち、弱ければ負ける。複雑な規則が無駄に入り乱れた偽りの世界ではない。お前がいるのは、泣けば誰かが助けてくれる都合の良いところではないのだ、痛いのが辛ければ抗え、抗えないのなら逃げろ、逃げることもできなければ、大人しく死ね。それこそ世界の真実なのだ。
その子供はいつまでも、自分が一つの生物ではなく単なる子供でいられる世界を希求していました。機嫌を損ねたら部下がやってきて御機嫌取りをしてくれる、そんな甘ったれた世界に戻ろうとあくまで必死のようでした。これを私は、やはり放置して椅子に座り眺めていました。
殴るのをやめて三〇分ほどが経過してくると、子供はいい加減泣いてもしもべのやってくる気配がないことに気がついたようでした。ここがもっと薄暗くて寒い、真実を体現した場所であるのをやっとのことで察知したようです。まだ泣きべそではありましたが、いくらか現実感を持ち始めたようでした。
それきり大して動かなくなり(泣きじゃくっていた時には、全身ゆすって台の上から逃げ出そうとしていて、これを私は何度も阻んで台の上に固定していたのです)、興醒めのような気持ちがいたしました。こんなつまらない結果で実験を終わらせてはならぬ、もっといたぶって、劇的な最期を迎えてもらわなくては甲斐がない。しかしここで手を入れれば、真っ当な実験結果とは呼べなくなります。
葛藤の末に、再度子供を殴ったり爪で引っ掻いたりしてみると、果たして子供は思い出したように泣くのを再開させました。火がついたように泣くとは、あのような状態を指して言うのでしょう。またしてもその子は逃げ出そうと懸命に力を使い始めました。仕方がなく、私は用意していたロープを子供の腹の辺りにやりました。腹部をロープでぐるぐる巻きにして、テーブルの上から動けなくしたのです。
身動きの取れない恐怖がやってくると、子供はより一層強く泣いたのですが、やはり逃げ出す術がございません。私は落ち着いて椅子に腰掛け、庭の花でも眺めるような心地で男児を見やっていました。
最初の時とは異なり、男児はすぐに泣き止みました。これは私の考えによるものですが、ただの衰弱のようです。子供は、泣きつかれれば衰弱するのだ、そう思いました。
ここは平等の場所ですよ、と私は透に声をかけました。その声は言下にき消されました。弱ければ助けてくれる、大人は皆自分を好いているのだという夢の世界にとどまろうとその子は必死のようです。
だが、ここは現実以外の何者でもない。強ければ勝ち、弱ければ負ける。複雑な規則が無駄に入り乱れた偽りの世界ではない。お前がいるのは、泣けば誰かが助けてくれる都合の良いところではないのだ、痛いのが辛ければ抗え、抗えないのなら逃げろ、逃げることもできなければ、大人しく死ね。それこそ世界の真実なのだ。
その子供はいつまでも、自分が一つの生物ではなく単なる子供でいられる世界を希求していました。機嫌を損ねたら部下がやってきて御機嫌取りをしてくれる、そんな甘ったれた世界に戻ろうとあくまで必死のようでした。これを私は、やはり放置して椅子に座り眺めていました。
殴るのをやめて三〇分ほどが経過してくると、子供はいい加減泣いてもしもべのやってくる気配がないことに気がついたようでした。ここがもっと薄暗くて寒い、真実を体現した場所であるのをやっとのことで察知したようです。まだ泣きべそではありましたが、いくらか現実感を持ち始めたようでした。
それきり大して動かなくなり(泣きじゃくっていた時には、全身ゆすって台の上から逃げ出そうとしていて、これを私は何度も阻んで台の上に固定していたのです)、興醒めのような気持ちがいたしました。こんなつまらない結果で実験を終わらせてはならぬ、もっといたぶって、劇的な最期を迎えてもらわなくては甲斐がない。しかしここで手を入れれば、真っ当な実験結果とは呼べなくなります。
葛藤の末に、再度子供を殴ったり爪で引っ掻いたりしてみると、果たして子供は思い出したように泣くのを再開させました。火がついたように泣くとは、あのような状態を指して言うのでしょう。またしてもその子は逃げ出そうと懸命に力を使い始めました。仕方がなく、私は用意していたロープを子供の腹の辺りにやりました。腹部をロープでぐるぐる巻きにして、テーブルの上から動けなくしたのです。
身動きの取れない恐怖がやってくると、子供はより一層強く泣いたのですが、やはり逃げ出す術がございません。私は落ち着いて椅子に腰掛け、庭の花でも眺めるような心地で男児を見やっていました。
最初の時とは異なり、男児はすぐに泣き止みました。これは私の考えによるものですが、ただの衰弱のようです。子供は、泣きつかれれば衰弱するのだ、そう思いました。
