不思議な家(re-build)

 この本題に関しては、全くの私の興味関心ごとと受け取っていただきたいと存じます。私は痛みと恐怖とで泣き叫ぶ五歳の男の子の横に椅子を置いて、飽きることなく見つめていました。もちろん、見つめているのは泣いている男児の姿にございます。
 よく、人の親というのは我が子が不機嫌になり天地をひっくり返さんばかりに大声を張り上げた際、これ以上ないほどの大事だとして必死に泣き止ませる努力をいたします。これがもし、両親という機嫌取りのいない場所であったなら子供はどのようになるのでしょうか。これを、私は知りたかったのです。
 通常であれば、我が身を抱き抱え、自分の泣きべそ一つにびくびくして、そうして不安になっている親。この親がいなくなれば、子供はしもべを失うこととなるのです。
 それまでなら、確かに一つ泣いて見せれば御機嫌取りが四方八方から押し寄せます。きっと子供はこの時に思っているのです。ああ、私の一挙手一投足に大勢の人間が動いてくれる。これらは今私の手足の代わりとなり物を運んできてくれる。このように思っているに相違ないと、確信に近い物を胸裏に抱いています。
 いたずらに泣き叫び、大人たちの慌てるのを楽しんで見ている節があるのです。これに憤りを感じるうち、私にはその興味が芽生えてきたのです。
 この泣いているのを放置したなら、子供は弱るのでしょうか。
 試してみたくなりました。ですが、そう簡単に試せるはずもございません。人攫いなど大仕事です、決して簡単に、新たなルールに付き従っている警察の魔の手から逃れて完遂できることではないのです。また、我が孫を対象にしようと思い立ったこともあるのですが、気づけば働きに出てしまい適性の年齢を過ぎてしまいました。
 どこかに良い子はいないものかと思案しているうちに、私の住むこの家の近くにある若い一家が越してきたのです。若い夫婦は、やはり幼い子を抱いていていました。これに狙いを定めました。なんのことはない、自分は近所に住んでいる老婆なのですよと優しく声をかけて取り入り、時間をかけて相手を油断させるよう私は暗躍しました。そう、暗躍したのです。
 夫婦が来てからおよそ半年ほど、計画は動きませんでした。時間のない私がどうしてこんなに時をかけたのか、今では自分でもわかりません。どうせ臨終まで時間もないのだからやりたいようにやろうなどと、思い切りよく動けなかったのです。どうやら、未だ生に執着していると言わざるを得ないのでしょう。
 経緯はどうであれ、とにかく私は人攫いを成功させて見せました。正義と興味とに突き動かされ、拷問、開始しました。
 最初の一五分ほどは、透くんは泣き叫んで必死に両親の庇護を求めていました。当然です、今までだってそのように、弱い者であるのを全面に押し出し恩恵を享受してきたのですから。