そして、これが残念ながら本物の骨であるということを、私はガラスケースの上にそっと置かれた手帳の中身を読んで知ることなる。
手帳に書かれていたのは、祖母の手記であった。
『この文章を読むことになるのが一体誰になるか、この世に留まり続ける現段階では私に見当つきません。しかし私は、確かにこの世界に私という人間が実在したのだという証明を残すためにこれをしたためておこうと思います。先に申し上げます。私は、人を殺しました。殺したのは大人ではありません、子供です。まだ年端もいかぬ男の子を殺めました。
意外なことかもしれませんが(あるいは全く意外ではないかもしれませんが)、私はその子を憎くて殺したわけではないのです。私自身の欲のために殺しました。殺し方は、衰弱です。生きながら絶望していく男児を、この狭く暗い空間の中に閉じ込めて死なせました。
きっと、これを読む者は理由を求めるでしょう。私には理解できないことなのですが、世の中の人間というのは他者を殺すのに何か理由を求めているようです。理由なくば他人を殺めてはならぬ、しかもたといその理由が全く筋の通った内容であっても、最後には刑務所に監禁され罰を受けるということになっています。私はこれを、このルールを嫌いです。なぜ、殺害が犯罪になるのでしょうか。他者の命を奪い抹消する行為が、これ以上ないほどの卑劣な罪として裁かれなくてはいけないのでしょうか。人間はもっと他にもたくさん、夥しい罪を犯しています。罪を犯せば捕まります、されども殺人だけは余計に重い罰が課せられます。殺しだけはいつの時代、どこの文化圏でも最も忌み嫌われる犯罪のようです。私にはこの理屈が、わかりません。
殺しが罪ならば、人は生まれにして罪を背負いながら生きているではありませんか。生きるために動物を育てて殺します。それだけなら良いのですが、幼子の頃から虫を捕ってきては殺します、鳥同士を戦わせて血の出るのを楽しみます。牛がツノで付き合って、血まみれになるのに熱狂します、これらに関しては、人間たちの愉悦のためであります。楽しさで動物をいたぶり、殺し、殺し合わせるのです。生きるための殺生ではないのです。これが裁かれなくて、でも人を同じく扱えば逮捕されるという、よく訳のわからない仕組みをいつの間にか人は作り上げてしまっているようでございます。
人間の法律なんだから、人間本位で考えても良いではないか。そのような悍ましい抗議のの声が聞こえる心地ですが、これについても私は首を振り、そうではないのだよと申し上げる所存であります。
人間のための法律だから、人間を守るためにあるとその者は仰りたいようです。
手帳に書かれていたのは、祖母の手記であった。
『この文章を読むことになるのが一体誰になるか、この世に留まり続ける現段階では私に見当つきません。しかし私は、確かにこの世界に私という人間が実在したのだという証明を残すためにこれをしたためておこうと思います。先に申し上げます。私は、人を殺しました。殺したのは大人ではありません、子供です。まだ年端もいかぬ男の子を殺めました。
意外なことかもしれませんが(あるいは全く意外ではないかもしれませんが)、私はその子を憎くて殺したわけではないのです。私自身の欲のために殺しました。殺し方は、衰弱です。生きながら絶望していく男児を、この狭く暗い空間の中に閉じ込めて死なせました。
きっと、これを読む者は理由を求めるでしょう。私には理解できないことなのですが、世の中の人間というのは他者を殺すのに何か理由を求めているようです。理由なくば他人を殺めてはならぬ、しかもたといその理由が全く筋の通った内容であっても、最後には刑務所に監禁され罰を受けるということになっています。私はこれを、このルールを嫌いです。なぜ、殺害が犯罪になるのでしょうか。他者の命を奪い抹消する行為が、これ以上ないほどの卑劣な罪として裁かれなくてはいけないのでしょうか。人間はもっと他にもたくさん、夥しい罪を犯しています。罪を犯せば捕まります、されども殺人だけは余計に重い罰が課せられます。殺しだけはいつの時代、どこの文化圏でも最も忌み嫌われる犯罪のようです。私にはこの理屈が、わかりません。
殺しが罪ならば、人は生まれにして罪を背負いながら生きているではありませんか。生きるために動物を育てて殺します。それだけなら良いのですが、幼子の頃から虫を捕ってきては殺します、鳥同士を戦わせて血の出るのを楽しみます。牛がツノで付き合って、血まみれになるのに熱狂します、これらに関しては、人間たちの愉悦のためであります。楽しさで動物をいたぶり、殺し、殺し合わせるのです。生きるための殺生ではないのです。これが裁かれなくて、でも人を同じく扱えば逮捕されるという、よく訳のわからない仕組みをいつの間にか人は作り上げてしまっているようでございます。
人間の法律なんだから、人間本位で考えても良いではないか。そのような悍ましい抗議のの声が聞こえる心地ですが、これについても私は首を振り、そうではないのだよと申し上げる所存であります。
人間のための法律だから、人間を守るためにあるとその者は仰りたいようです。
