不思議な家(re-build)

 古臭い槍や矢でなければ、殺人的なガスであるかもしれない。濃度を極端に高めた二酸化炭素などが充満していれば、私はまず間違いなく死ぬはずだ。このドアの向こうにあるであろう秘密を守るべく、祖母が一つ、あるいは二つか三つの罠を用意していないとも限らない。思い出でなければ、ここにあるのはきっと資産価値のあるあの人の遺産なのだから。
 人を優しい気持ちにさせるものか、あるいは人を殺してしまうものか。どちらにせよ、ドアを開けた私はそのどちらであっても真正面から受け取らなくてはならないだろう。この地下の通路がより深い場所へつながっているとは、到底考えにくい。決定的なものがこのドアの向こうで待ち構えているはずだ。
 意を決して、私はドアを開けた。そこで目にするものがどんなものかを想像もせずに。
 入室した私を待ち構えていたのは、まず、小さな部屋であった。小人が住むには確かにちょうど良いかもしれないが、大人が横になって足を伸ばせないほどの、正方形の部屋。天井も低く、どこかから線を引っ張ってきているのだろう、裸の豆電球が吊られて淡い光を放っていた。
 電球に照らし出されている部屋は、私に拷問部屋を連想させた。灰色の床と壁と天井がある。部屋の中心には、これが自分の宝ですとばかり安置されているものがあった。それを目の当たりにして、私は息を呑んで立ちつくことになる。
 部屋の中央には、人骨が置かれていた。小さな木製のテーブルがあり、その上にガラス張りのケースが設置されている。ケースはテーブルとちょうど同じ幅を持っていて、どうやらこれはなんらかの手段で固定されれているようだった。そんなガラスケースの中に、一体分の人骨が寝かされている。
 仰向けになり、手足を投げ出した格好で眠っている誰か。この誰かは少なくとも大人ではない。とても小さな子供のようである。子供の白骨が、水槽の中の魚のように展示されている。どうやら全身の骨が全て揃っているようだ。指先の細かな部分でさえしっかりと配置されている。仰向けに寝ているが、この骨を支えるための筋肉はもちろんついていない。そのために頭部だけが妙に浮いていて、頭から下の部位は一段低い箇所にあった。枕を高くしすぎた時のようだ。
 この奇怪な飾り物以外には、部屋に何もないようである。あまりのことに私は言葉を失っていた。どれだけの時間かはわからないが、とにかく頭をぶつけないよう低くなりながら動けないでいた。
 当たり前のことだが、これを当初偽物の人骨だと疑った。エジプトの博物館にファラオのミイラが展示されているように、解剖学的観点から再現モデルを作り出し、飾ってあるのだと思い込もうとした。けれどどのような見地からもこれが偽物であるという結論には帰結しない。こんな大それた隠し部屋に人体模型を置く意味がないのだから。