決して身長が高い方ではない私だったが、そんな私でも通路を進むには少し身を低くしなくてはいけなかった。横へ伸びる、数メートルの通路があった。通路はすぐに行き止まりになり、ドアが一枚だけ、あった。
よくできたドアだ。金属製のものを白く綺麗に塗装して、洋館の入り口かのような見た目をしている。
ドアノブに手をかけ、回して見るとどうやら施錠はされていないようだ。
しかし、開けるのは少し躊躇われた。鍵穴を見つけたので内部の様子がわからないものかと覗き込んでみたのだが何も見えない。中の部屋が暗いのではなく、鍵穴はしっかりと隙間なく潰されているのだ。
鍵穴から顔を上げつつドアを真正面から見据えると、危うく天井にぶつかりそうになる。人の気配がして振り返ってみたが、こんな場所に誰かいるわけもない。ここは人の住む家で、その家の中のさらに怪しい地下空間なのだ。おそらくは祖母がこしらえた、目的不明の空間である。入ってみようなどと考える者はいない。
どうしてこんな空間を作ったのか、至極当然の疑問が浮かんだ。こんな場所を作って、祖母は何をしていたのか。まさか本を読むためではあるまい。
自分だけの秘密の場所。この確定的な情報のないワードだけが脳内を飛び交って、どうやらそれ以外を全て跳ね除けているようだ。あまりに唐突な出来事に対し当たり障りのない見解だけが主張を許されている。少なくとも私の目から見た祖母は、こんな摩訶不思議な隠し部屋を作るようなことをしない人だ。そう思った。
好奇心と恐怖とに同時に襲われ、私はもう一度ドアと対峙した。これを開ければ、きっと祖母の秘密が明らかになる。しかし秘密は、こんな場所にあるのだから決して明るいものではないだろう。愛していた祖父との思い出の品が眠っていると言うわけではないはずだ。
いや、案外そうなのかもしれない。祖母は付箋の中に思い出という言葉を使った。だからここにあるのは誰にも汚されたくない、触れられるとしてもそれは心を許したごく限られた人物だけにとどめておきたいような、そんな思い出なのかもしれない。
親戚の人間は皆、金に薄汚い性分をしている。祖母の実の娘で、私の母であるあの女性だってそれは同じなのだ、祖母はきっと乱心していたのだろう。そうなれば、地下に思い出という名の宝を隠し持っていたいと願うものなのかもしれない。
いずれにせよ、正体を知りたくば私はこのドアを開けなくてはならない。まさか槍や矢が飛んでくるような罠が配置されているはずもないだろうが、それに似た危ない気配のようなものがこのドアからは放たれているような気がする。
槍は胸を突き、矢は頭に刺さる。致死的だ、あくまで人を殺すための道具だ。殺傷のための道具が置かれていたら、私はきっと反応できないかもしれない。
よくできたドアだ。金属製のものを白く綺麗に塗装して、洋館の入り口かのような見た目をしている。
ドアノブに手をかけ、回して見るとどうやら施錠はされていないようだ。
しかし、開けるのは少し躊躇われた。鍵穴を見つけたので内部の様子がわからないものかと覗き込んでみたのだが何も見えない。中の部屋が暗いのではなく、鍵穴はしっかりと隙間なく潰されているのだ。
鍵穴から顔を上げつつドアを真正面から見据えると、危うく天井にぶつかりそうになる。人の気配がして振り返ってみたが、こんな場所に誰かいるわけもない。ここは人の住む家で、その家の中のさらに怪しい地下空間なのだ。おそらくは祖母がこしらえた、目的不明の空間である。入ってみようなどと考える者はいない。
どうしてこんな空間を作ったのか、至極当然の疑問が浮かんだ。こんな場所を作って、祖母は何をしていたのか。まさか本を読むためではあるまい。
自分だけの秘密の場所。この確定的な情報のないワードだけが脳内を飛び交って、どうやらそれ以外を全て跳ね除けているようだ。あまりに唐突な出来事に対し当たり障りのない見解だけが主張を許されている。少なくとも私の目から見た祖母は、こんな摩訶不思議な隠し部屋を作るようなことをしない人だ。そう思った。
好奇心と恐怖とに同時に襲われ、私はもう一度ドアと対峙した。これを開ければ、きっと祖母の秘密が明らかになる。しかし秘密は、こんな場所にあるのだから決して明るいものではないだろう。愛していた祖父との思い出の品が眠っていると言うわけではないはずだ。
いや、案外そうなのかもしれない。祖母は付箋の中に思い出という言葉を使った。だからここにあるのは誰にも汚されたくない、触れられるとしてもそれは心を許したごく限られた人物だけにとどめておきたいような、そんな思い出なのかもしれない。
親戚の人間は皆、金に薄汚い性分をしている。祖母の実の娘で、私の母であるあの女性だってそれは同じなのだ、祖母はきっと乱心していたのだろう。そうなれば、地下に思い出という名の宝を隠し持っていたいと願うものなのかもしれない。
いずれにせよ、正体を知りたくば私はこのドアを開けなくてはならない。まさか槍や矢が飛んでくるような罠が配置されているはずもないだろうが、それに似た危ない気配のようなものがこのドアからは放たれているような気がする。
槍は胸を突き、矢は頭に刺さる。致死的だ、あくまで人を殺すための道具だ。殺傷のための道具が置かれていたら、私はきっと反応できないかもしれない。
