見ると、現れたのは非常に狭い空間だった。空間は、ただ空間としか言い表すことができない。いかにも窮屈で、子供だって横になることができないだろう。これを間違っても部屋とは言うまい。セメントの殺風景な灰色の四角い空間。刑務所で暮らす方が何倍も快適なはずだ。
その空間を調べて見ることにした私は、試しに足をそこに入れてみた。床にはどこか不安定な感触がある。吊り橋を渡っているような感じではなくて、どちらかといえばプラスチックのタライをひっくり返して、そこに足を置いているような不安定さだ。ここで飛び跳ねたりするわけにはいかないだろう。
ひょっとして、この床に仕掛けがあるのではないか。そう睨んだ。それ以外に狭い空間に存在し得るものはない。セメントの壁はあくまでこの空間をわずかにでも丈夫に保っておくためのものだろう。ここに秘密とやらを隠し持とうとするのは現実的ではない。
おそらく祖母は、壁の中をそっくりくり抜いてその中にこの異様なセメントの四角い箱を作ったのだ。元々存在しないはずの空間。親戚一同、どれだけ間取り図を睨んでも部屋などあるわけがないと、ここに手を加えるのはやめたのだ。壁を破っても、外につながっているだけ。いつか祖母が、車庫との間を繋ぐ連絡通路みたいなものをこしらえようとして結局取りやめた、そこまで考えて深くは追及しなかったのに違いない。あの連中は実に愚かしい、酒やタバコに脳をやられたような人間たちだから遺産が欲しくともあまり手間暇をかけたくなかったのだろう。
しかし、いつまた考えが変わってここへ押しかけてくるかもわからない。少なくとも私の母は、まだこの家について(と言うか祖母について)疑っている節があるのだから、やはりもう一度調べてみようと言い出す前に私自身で発見していたい。
正当に祖母の遺産を引き継げるとしたら、それは私意外にないのかもしれない。こう言うと実に増長した者の言い草ではあるが、実のところこれを私は半分本気、半分冗談で考えている。
遺書すら残さずこの世を去った祖母について、皆遺産を相続することを念頭に置いて話し合っていた。誰がこれだけもらうとか、自分にはきっとその資格があるとかないとか、醜く言い争いしていたのを私は覚えている。
祖母が亡くなったのは、私がまだ前の職場にいた頃だ。心臓にどうやら悪いものがあったらしく、長くは持つまいと前もって医者からは死の宣告がされていた。祖母はすんなりと受け入れ、それを知った周りの者は手にしている資産をどう扱うか問うていた。家は売却するのかとか、どこかに金銭的価値のある物品を所有していないかとか、そうしてそれは、誰にどう引き継いでもらうのかと言う話を、耳の痛くなるほどに問いかけていた。私は昔からそれほど強くお金を欲しいと思ったことがないので、親戚のそう言う話を黙ってそばで聞いているだけであった。
その空間を調べて見ることにした私は、試しに足をそこに入れてみた。床にはどこか不安定な感触がある。吊り橋を渡っているような感じではなくて、どちらかといえばプラスチックのタライをひっくり返して、そこに足を置いているような不安定さだ。ここで飛び跳ねたりするわけにはいかないだろう。
ひょっとして、この床に仕掛けがあるのではないか。そう睨んだ。それ以外に狭い空間に存在し得るものはない。セメントの壁はあくまでこの空間をわずかにでも丈夫に保っておくためのものだろう。ここに秘密とやらを隠し持とうとするのは現実的ではない。
おそらく祖母は、壁の中をそっくりくり抜いてその中にこの異様なセメントの四角い箱を作ったのだ。元々存在しないはずの空間。親戚一同、どれだけ間取り図を睨んでも部屋などあるわけがないと、ここに手を加えるのはやめたのだ。壁を破っても、外につながっているだけ。いつか祖母が、車庫との間を繋ぐ連絡通路みたいなものをこしらえようとして結局取りやめた、そこまで考えて深くは追及しなかったのに違いない。あの連中は実に愚かしい、酒やタバコに脳をやられたような人間たちだから遺産が欲しくともあまり手間暇をかけたくなかったのだろう。
しかし、いつまた考えが変わってここへ押しかけてくるかもわからない。少なくとも私の母は、まだこの家について(と言うか祖母について)疑っている節があるのだから、やはりもう一度調べてみようと言い出す前に私自身で発見していたい。
正当に祖母の遺産を引き継げるとしたら、それは私意外にないのかもしれない。こう言うと実に増長した者の言い草ではあるが、実のところこれを私は半分本気、半分冗談で考えている。
遺書すら残さずこの世を去った祖母について、皆遺産を相続することを念頭に置いて話し合っていた。誰がこれだけもらうとか、自分にはきっとその資格があるとかないとか、醜く言い争いしていたのを私は覚えている。
祖母が亡くなったのは、私がまだ前の職場にいた頃だ。心臓にどうやら悪いものがあったらしく、長くは持つまいと前もって医者からは死の宣告がされていた。祖母はすんなりと受け入れ、それを知った周りの者は手にしている資産をどう扱うか問うていた。家は売却するのかとか、どこかに金銭的価値のある物品を所有していないかとか、そうしてそれは、誰にどう引き継いでもらうのかと言う話を、耳の痛くなるほどに問いかけていた。私は昔からそれほど強くお金を欲しいと思ったことがないので、親戚のそう言う話を黙ってそばで聞いているだけであった。
