第1話「筆姫と白髪の従者」
◯雪村家の屋敷で施術の時間
村人であるお婆さんの足に筆で「良」という文字を書く咲良。
咲良「はい。これでもう大丈夫ですよ」
お婆さん「足が楽になったよ、ありがとう。ありがとう」
お婆さんは嬉しいそうに何度も頭を下げる。
お婆さん「筆姫様がこの村に居てくれて本当にありがたや、ありがたや」
咲良(ズキン)
心が痛む咲良。
咲良「いいえいいえ。お大事になさってください」
晴彦「次の患者様です」
ひっきりなしに訪れる患者たち。
(筆姫とは筆を使い対象の人の身体に文字を書くことでその通りの利益を与える力を持つもの)
咲良(ふぅ)
晴彦「少し休まれますか?」
咲良「いいえ。大丈夫」
晴彦「……」
笑顔で施術を続ける咲良。
◯日が暮れて施術が終わる
咲良(疲れた)
ふらつく咲良の腕を支える晴彦。
咲良「ありがとう……」
晴彦「あなたという人は……どうしてそんなに愚かなのですか?」
咲良「え、お、愚か?」
晴彦「はい。一日であれ程の患者を診れば疲れるに決まっているでしょう。だからあれ程上限を設けるべきだと……」
咲良「はいはい。わかってるってば。だけど苦しんでる患者様たちをほっとけないでしょ」
晴彦「ですが……」
咲良「これが私の仕事なんだから。だからもう意地悪言わないでよ。お腹も空いたし」
複雑そうな顔の晴彦。
◯雪村の居間
咲良の両親、きょうだい達が席に座って待っている。
咲良の父「おかえり咲良。疲れただろう?」
咲良「ただいま、お父様」
咲良の母「さぁさ。食事の準備ができているわ。咲良の好物ばかりよ。はやく食べましょう」
咲良「はい、お母様。晴彦も一緒に」
咲良の父「晴彦? それはいけないよ咲良。晴彦は家族ではないからね」
下を向く晴彦。
咲良の母「そうよ。ほら、そんなところにいつまでも突っ立っていないでさっさと離れにお行きなさい」
咲良「そんな言い方……晴彦も一日手伝ってくれて疲れているの」
晴彦「咲良様……もう」
咲良を制止しようとする晴彦。
咲良の父「咲良、それは当たり前だよ。役立たずの鬼の子を拾ってやったんだから」
咲良「それは……」
晴彦「その通りでございます。では失礼します」
その場を立ち去る晴彦。
咲良の母「……ほんといつ見ても嫌ねぇ。あの真っ白い髪に薄緑の目」
咲良は悲しそうに席に座り食事をとる。
◯離れに続く廊下
廊下を歩く咲良。手におにぎりの乗ったおぼんを持っている。
咲良(晴彦もお腹を空かせているはずだわ)
咲良「晴彦。入るね」
離れの戸をそっと開ける咲良。
晴彦「咲良様……何しに来たんですか?」
晴彦の前には患者達の名前や症状等が書かれた紙がある。
咲良「お腹が空いてると思って……おにぎりを持って来たの」
晴彦「……俺に構わないでください」
冷たく言う晴彦。
晴彦「あなた疲れているんでしょう? 明日もまた俺の忠告等聞かずに大勢の患者を診るんですから、ご自分の身体を休ませてはどうですか? それと、もうここには来ないでください」
咲良(どうしてそんなに冷たいの? 昔はあんなに仲がよかったのに)
子供の頃の二人を思い浮かべる。
咲良「……怒ってる?」
晴彦「……別に」
咲良「嘘……」
咲良(さっきの両親の言ったこともそうだけど、きっと私のことも軽蔑しているんでしょう? だって全部嘘だもの……筆姫の力なんて本当は無いのに。仕事なんて言って、村の人々を騙しているということを晴彦も本当はわかっているはず。だって一番近くで見ているのだから)
晴彦「俺は明日の準備があるのではやく出ていってくれませんか?」
晴彦は背中を向けて書類を整理しながら冷たく言う。
咲良(……一番近くにいるのに一番遠くに感じる。誰よりも側に居てほしいのに……)
咲良は手を伸ばし晴彦の背中に触れようとする。
バッと振り返る晴彦。
晴彦「何するんですか?」
怖い顔で咲良を見る晴彦。
咲良「ご、ごめんなさい」
謝る咲良に少し表情が緩む晴彦。
晴彦「……別に」
ドタドタドタッと足音が廊下に響く。
使いの男「ここにいるのか? 入るぞ」
荒っぽく戸が開く。
使いの男「そなたが筆姫か」
咲良「え?」
使いの男「雪村家の長女として生まれ、筆の術を受け継ぐ者。それで間違いはないな?」
咲良「そうですけど、あ、あなたは?」
使いの男「私は村の領主である時雨様に使える者」
咲良「領主様の?」
使いの男「訳あってそなたが必要だ。来てもらおう」
強引に咲良の手を掴もうとする使いの男。
咲良「きゃあっ」
咲良を守るように素早く二人の間に入る晴彦。
咲良「は、晴彦」
晴彦「咲良様に近寄らないでください」
使いの男を睨む晴彦。
◯雪村家の屋敷で施術の時間
村人であるお婆さんの足に筆で「良」という文字を書く咲良。
咲良「はい。これでもう大丈夫ですよ」
お婆さん「足が楽になったよ、ありがとう。ありがとう」
お婆さんは嬉しいそうに何度も頭を下げる。
お婆さん「筆姫様がこの村に居てくれて本当にありがたや、ありがたや」
咲良(ズキン)
心が痛む咲良。
咲良「いいえいいえ。お大事になさってください」
晴彦「次の患者様です」
ひっきりなしに訪れる患者たち。
(筆姫とは筆を使い対象の人の身体に文字を書くことでその通りの利益を与える力を持つもの)
咲良(ふぅ)
晴彦「少し休まれますか?」
咲良「いいえ。大丈夫」
晴彦「……」
笑顔で施術を続ける咲良。
◯日が暮れて施術が終わる
咲良(疲れた)
ふらつく咲良の腕を支える晴彦。
咲良「ありがとう……」
晴彦「あなたという人は……どうしてそんなに愚かなのですか?」
咲良「え、お、愚か?」
晴彦「はい。一日であれ程の患者を診れば疲れるに決まっているでしょう。だからあれ程上限を設けるべきだと……」
咲良「はいはい。わかってるってば。だけど苦しんでる患者様たちをほっとけないでしょ」
晴彦「ですが……」
咲良「これが私の仕事なんだから。だからもう意地悪言わないでよ。お腹も空いたし」
複雑そうな顔の晴彦。
◯雪村の居間
咲良の両親、きょうだい達が席に座って待っている。
咲良の父「おかえり咲良。疲れただろう?」
咲良「ただいま、お父様」
咲良の母「さぁさ。食事の準備ができているわ。咲良の好物ばかりよ。はやく食べましょう」
咲良「はい、お母様。晴彦も一緒に」
咲良の父「晴彦? それはいけないよ咲良。晴彦は家族ではないからね」
下を向く晴彦。
咲良の母「そうよ。ほら、そんなところにいつまでも突っ立っていないでさっさと離れにお行きなさい」
咲良「そんな言い方……晴彦も一日手伝ってくれて疲れているの」
晴彦「咲良様……もう」
咲良を制止しようとする晴彦。
咲良の父「咲良、それは当たり前だよ。役立たずの鬼の子を拾ってやったんだから」
咲良「それは……」
晴彦「その通りでございます。では失礼します」
その場を立ち去る晴彦。
咲良の母「……ほんといつ見ても嫌ねぇ。あの真っ白い髪に薄緑の目」
咲良は悲しそうに席に座り食事をとる。
◯離れに続く廊下
廊下を歩く咲良。手におにぎりの乗ったおぼんを持っている。
咲良(晴彦もお腹を空かせているはずだわ)
咲良「晴彦。入るね」
離れの戸をそっと開ける咲良。
晴彦「咲良様……何しに来たんですか?」
晴彦の前には患者達の名前や症状等が書かれた紙がある。
咲良「お腹が空いてると思って……おにぎりを持って来たの」
晴彦「……俺に構わないでください」
冷たく言う晴彦。
晴彦「あなた疲れているんでしょう? 明日もまた俺の忠告等聞かずに大勢の患者を診るんですから、ご自分の身体を休ませてはどうですか? それと、もうここには来ないでください」
咲良(どうしてそんなに冷たいの? 昔はあんなに仲がよかったのに)
子供の頃の二人を思い浮かべる。
咲良「……怒ってる?」
晴彦「……別に」
咲良「嘘……」
咲良(さっきの両親の言ったこともそうだけど、きっと私のことも軽蔑しているんでしょう? だって全部嘘だもの……筆姫の力なんて本当は無いのに。仕事なんて言って、村の人々を騙しているということを晴彦も本当はわかっているはず。だって一番近くで見ているのだから)
晴彦「俺は明日の準備があるのではやく出ていってくれませんか?」
晴彦は背中を向けて書類を整理しながら冷たく言う。
咲良(……一番近くにいるのに一番遠くに感じる。誰よりも側に居てほしいのに……)
咲良は手を伸ばし晴彦の背中に触れようとする。
バッと振り返る晴彦。
晴彦「何するんですか?」
怖い顔で咲良を見る晴彦。
咲良「ご、ごめんなさい」
謝る咲良に少し表情が緩む晴彦。
晴彦「……別に」
ドタドタドタッと足音が廊下に響く。
使いの男「ここにいるのか? 入るぞ」
荒っぽく戸が開く。
使いの男「そなたが筆姫か」
咲良「え?」
使いの男「雪村家の長女として生まれ、筆の術を受け継ぐ者。それで間違いはないな?」
咲良「そうですけど、あ、あなたは?」
使いの男「私は村の領主である時雨様に使える者」
咲良「領主様の?」
使いの男「訳あってそなたが必要だ。来てもらおう」
強引に咲良の手を掴もうとする使いの男。
咲良「きゃあっ」
咲良を守るように素早く二人の間に入る晴彦。
咲良「は、晴彦」
晴彦「咲良様に近寄らないでください」
使いの男を睨む晴彦。
