あの後僕は、健さんに連絡をして海水浴場に将成を迎えに来てもらった。
迎えに来てもらったのは、将成の所為である。救急車を呼ぼうとしたところ将成に止められてしまったからだ。
体調が思わしくないのに救急車に乗りたくないという我儘を言う彼に内心腹が立ったが、今ここで将成の気分を損ねさせれば何をされるか分からなかった。
「……見つけてくれて助かった。ありがとう奥村くん」
「いえ、僕は、何も……」
病院に着き、無事に将成は病室へと運ばれていった。
ひとまずは安心だ。
健さんが休憩スペースに控えていた僕に缶コーヒーを持ってきてくれた。彼が入院沙汰になると、いつも『健さん』と『缶コーヒー』がセットでくるというイメージがついてしまった。僕は恐縮しながら健さんから缶コーヒーを受け取る。プルトップを開け中身をひと口飲む。ほろ苦い味が口いっぱいに広がった。
「……将成な、この間、余命宣告されたんだ」
健さんが缶コーヒーを一口飲む。
「最近調子が戻らなくてな。検査したら、もう永くないって言われたんだ。小さい頃から散々大人まで生きられないと言われてきていたから、なんとなく、覚悟はしていたんだが……。いざ現実を目の前にすると、どうしたらいいのか……わかんねえな」
健さんの声は震えていた。当たり前だ。愛している家族の命の宣言をされたのだ。それも、将成も自分で聞いたという。
将成は本当に強いひとだ。そして、弱さを見せないひとだ。
あの海に行ったのは、現実逃避をしたかったからだろうか。いや、きっと家族に自分の弱さを見られたくなかったからだと僕は思う。
「…………あと……どのくらいなんですか……」
僕は気丈を装って健さんに問う。健さんは言い難そうに、それでも教えてくれた。
「保って、あと半年だそうだ」
あと半年。それを『長い』と思うのか、『短い』と思うのか。僕はこの時、どちらに感じただろうか。感情がぐちゃぐちゃでこの時は何も考えられなかった。
恐らく、険しい顔をしていたからだろうか。健さんが僕に微笑んだ。
「……大丈夫だ。少なくとも、成人はできる。小さい頃からの夢だった大人になることは叶えられるんだ。本当に、それだけは良かったと思う」
健さんが僕を見た。その表情は、将成によく似ていた。
「君と、君のお母さんのおかげで将成は今日まで生きてこられた。将成を見捨てないでくれて、本当にありがとう……‼」
そう言って健さんは頭を下げた。僕はどうしていいのか分からず挙動不審になってしまった。けれどここで僕が「そんなことはないです」と否定してしまえば、それは母さんの今までも否定することになる。
僕は、頷くことしかできなかった。
迎えに来てもらったのは、将成の所為である。救急車を呼ぼうとしたところ将成に止められてしまったからだ。
体調が思わしくないのに救急車に乗りたくないという我儘を言う彼に内心腹が立ったが、今ここで将成の気分を損ねさせれば何をされるか分からなかった。
「……見つけてくれて助かった。ありがとう奥村くん」
「いえ、僕は、何も……」
病院に着き、無事に将成は病室へと運ばれていった。
ひとまずは安心だ。
健さんが休憩スペースに控えていた僕に缶コーヒーを持ってきてくれた。彼が入院沙汰になると、いつも『健さん』と『缶コーヒー』がセットでくるというイメージがついてしまった。僕は恐縮しながら健さんから缶コーヒーを受け取る。プルトップを開け中身をひと口飲む。ほろ苦い味が口いっぱいに広がった。
「……将成な、この間、余命宣告されたんだ」
健さんが缶コーヒーを一口飲む。
「最近調子が戻らなくてな。検査したら、もう永くないって言われたんだ。小さい頃から散々大人まで生きられないと言われてきていたから、なんとなく、覚悟はしていたんだが……。いざ現実を目の前にすると、どうしたらいいのか……わかんねえな」
健さんの声は震えていた。当たり前だ。愛している家族の命の宣言をされたのだ。それも、将成も自分で聞いたという。
将成は本当に強いひとだ。そして、弱さを見せないひとだ。
あの海に行ったのは、現実逃避をしたかったからだろうか。いや、きっと家族に自分の弱さを見られたくなかったからだと僕は思う。
「…………あと……どのくらいなんですか……」
僕は気丈を装って健さんに問う。健さんは言い難そうに、それでも教えてくれた。
「保って、あと半年だそうだ」
あと半年。それを『長い』と思うのか、『短い』と思うのか。僕はこの時、どちらに感じただろうか。感情がぐちゃぐちゃでこの時は何も考えられなかった。
恐らく、険しい顔をしていたからだろうか。健さんが僕に微笑んだ。
「……大丈夫だ。少なくとも、成人はできる。小さい頃からの夢だった大人になることは叶えられるんだ。本当に、それだけは良かったと思う」
健さんが僕を見た。その表情は、将成によく似ていた。
「君と、君のお母さんのおかげで将成は今日まで生きてこられた。将成を見捨てないでくれて、本当にありがとう……‼」
そう言って健さんは頭を下げた。僕はどうしていいのか分からず挙動不審になってしまった。けれどここで僕が「そんなことはないです」と否定してしまえば、それは母さんの今までも否定することになる。
僕は、頷くことしかできなかった。
