事務所に戻れば、各々が手分けして抱える荷物を元の場所に返している。
マナは、自身が抱えていたフープを置きながら、ふと書類に目を向ける。
(だめだ。やっぱり、気になってしまう。
今が公演前じゃなくて良かった。
エアリアルフープは、集中しないと大怪我をしかねない演目だから…。)
プロジェクトの事を考えながら作業をすれば、これまたあっという間のことだった。
「ミカ。マキ。」
「こっちも大丈夫。」
「俺も大丈夫。」
「じゃあ、会議を始めようか。」
会議室は、片付けるスタッフ達で溢れかえっている。
会議室を使うよりも、ラウンジを利用した方が、じっくりと話をすることができるだろう。
「私は、契約しようと思う。」
最初に口を割ったのは、ミカだった。
「街に来たサーカスを見たことがきっかけで、三人で海外進出することを目指して、歌や踊りの表現力を磨いた。
体力強化とか、宣伝とか、自由に活動できない中でも、地道に活動をして頑張ってきた。」
ミカは、思い返すように目を瞑りながら、話を続ける。
「本当に大変だった。不安や現状と相対して闘ってきた。
そろそろ報われてもいいと思うんだ。」
今に目を向けた。
「5年かけてここまで来たけど、まだまだ海外進出の夢は遠い。
そんな中で通りかかった貴重なチャンスなんだよ。」
マキが、目を逸らす。
「私は、この波に乗りたい。
挑戦したい。」
「…私は、見送った方がいいと思う。」
マナは、不和を生むことよりも、率直な意見を述べることを選んだ。
「話を聞いて資料を見る限り、参加した場合は、
レヴァトリーチェさんと私たちは、個別契約を結ぶということになると思う。
『泉門』で三人セットの契約なら、『泉門』というグループに需要があると考えているということになると思う。
でも、それぞれが個別契約をするとなると、『泉門』に属しているメンバー“それぞれ”の能力を評価してオファーしたんじゃないかと思う。
つまり、『泉門』としての活動は、それほど重要視されていない。
海外進出はできるけど、『泉門』というグループとしての活動が確約されているわけじゃない。」
マナは、寂しげな表情を見せた。
「『泉門』として活動を続けられるのか分からない。
それに、海外に行くから日本での活動は、ほぼ不可能。
日本にいるファンを置いてきぼりにしてしまうかもしれない。
『泉門』というグループで作り上げてきたものは、事実上の解散とともに霧散してしまう。」
ミカとマキの顔を見て、訴えかける。
「私は、『泉門』で海外進出したいよ…。」
「…それは…。」
ミカは、言いかけた言葉を飲み込んだようだった。
「…俺は、まだ迷ってる。」
マキは、どこか取り繕った表情をしていた。
説得は難しかった。
2人の答えが決まっていることに、抑えた感情を表出させそうになりながら、振り絞って堪える。
「ひとまず、お開きにしようか。」
マナは、自身が抱えていたフープを置きながら、ふと書類に目を向ける。
(だめだ。やっぱり、気になってしまう。
今が公演前じゃなくて良かった。
エアリアルフープは、集中しないと大怪我をしかねない演目だから…。)
プロジェクトの事を考えながら作業をすれば、これまたあっという間のことだった。
「ミカ。マキ。」
「こっちも大丈夫。」
「俺も大丈夫。」
「じゃあ、会議を始めようか。」
会議室は、片付けるスタッフ達で溢れかえっている。
会議室を使うよりも、ラウンジを利用した方が、じっくりと話をすることができるだろう。
「私は、契約しようと思う。」
最初に口を割ったのは、ミカだった。
「街に来たサーカスを見たことがきっかけで、三人で海外進出することを目指して、歌や踊りの表現力を磨いた。
体力強化とか、宣伝とか、自由に活動できない中でも、地道に活動をして頑張ってきた。」
ミカは、思い返すように目を瞑りながら、話を続ける。
「本当に大変だった。不安や現状と相対して闘ってきた。
そろそろ報われてもいいと思うんだ。」
今に目を向けた。
「5年かけてここまで来たけど、まだまだ海外進出の夢は遠い。
そんな中で通りかかった貴重なチャンスなんだよ。」
マキが、目を逸らす。
「私は、この波に乗りたい。
挑戦したい。」
「…私は、見送った方がいいと思う。」
マナは、不和を生むことよりも、率直な意見を述べることを選んだ。
「話を聞いて資料を見る限り、参加した場合は、
レヴァトリーチェさんと私たちは、個別契約を結ぶということになると思う。
『泉門』で三人セットの契約なら、『泉門』というグループに需要があると考えているということになると思う。
でも、それぞれが個別契約をするとなると、『泉門』に属しているメンバー“それぞれ”の能力を評価してオファーしたんじゃないかと思う。
つまり、『泉門』としての活動は、それほど重要視されていない。
海外進出はできるけど、『泉門』というグループとしての活動が確約されているわけじゃない。」
マナは、寂しげな表情を見せた。
「『泉門』として活動を続けられるのか分からない。
それに、海外に行くから日本での活動は、ほぼ不可能。
日本にいるファンを置いてきぼりにしてしまうかもしれない。
『泉門』というグループで作り上げてきたものは、事実上の解散とともに霧散してしまう。」
ミカとマキの顔を見て、訴えかける。
「私は、『泉門』で海外進出したいよ…。」
「…それは…。」
ミカは、言いかけた言葉を飲み込んだようだった。
「…俺は、まだ迷ってる。」
マキは、どこか取り繕った表情をしていた。
説得は難しかった。
2人の答えが決まっていることに、抑えた感情を表出させそうになりながら、振り絞って堪える。
「ひとまず、お開きにしようか。」
