vino/nelle/vene

「私たちも総力をもって取り組む、大型プロジェクトになります。
 本計画を通じて、『泉門』の皆様の活動を後押しできればと考えております。」

 増子は、一層熱を込めて、取引を持ちかける。

「【“門出”お披露目イベント】は、本日から1カ月後に予定しております。
 流石に準備期間は互いに必要になりますので、2週間前には参加の可否についてご連絡いただきたく存じます。
 そして、イベント開催までの間にご契約いただき、海外へと出発する手筈となっております。」

 ちらっと時計を見れば、話し始めてから30分以上経過していた。
 観客は誰一人として残っていない。
 このまま立ち話をしていると、撤収するために慌ただしく動くスタッフの邪魔になってしまいそうだった。

「…っと、お忙しい中、失礼いたしました。
 本計画の詳細については、お渡しした書類に記してあります。
 もしご不明な点がございましたら、最終ページに連絡先を記載しておりますので、そちらからご連絡いただければと思います。」

 増子は、滑らかな頭に帽子をのせる。

「よいお返事を、お待ちしております。」

 まるで嵐のように強烈な印象を残して去っていった。

(話し合わなければならないことが沢山ある。)

「ミカ!マキ!
 事務所に戻ったら話し合おう。」

 『泉門』のメンバーとスタッフ、全員で手分けして撤収作業を行えば、あっという間に作業が完了した。

 しかし、いつもよりも呆気ない終わりのように思えたのは、
それほど例のプロジェクトの話が衝撃的で、突然の話だったことの現れだろう。
 マナが見渡せば、ステージの遠くの方で作業するミカも、
2階席付近でトランポリンのネットを片付けるマキも、
心ここにあらずという様子だった。

「よし!じゃあ、事務所に戻ろう!」
「「「はい!!」」」