スタッフの指示に従いながら、帰路につく観客。
その中にいる仲睦まじく話す声が、マナの耳に届いた。
「まさか、マナが客席にいるなんて思わなかったよね〜!」
「全然気づかなかった。スポットライト当たった時も、誰だかわかんなかったし。
流石『泉門』って感じ。」
「わかる!観に行くたびに、良い意味で予想を裏切られるっていうか。
…こう、セオリー通りじゃない感じ!?観ていてすごくワクワクする!」
「めっちゃわかる!また観に行きたいよな!」
「次の休みの日は公演あるかな?
ええと、ホームページのお知らせによると…、今季の公演は今日が最後だったみたい。残念。」
「そっか〜…。じゃあ、来季観に行こうよ。」
「うん!」
今季全公演で、恙無く終了した。
観客は満足した表情で帰っていく。
ステージの袖から、マナは笑みを浮かべつつ、観客の背を目で追う。そして、ホッと一息をつく。
この時間が、何よりも大切であり、最も活動意欲を刺激される絶好の機会になる。
夢に向かって、暗闇を手探りで進んでいる『泉門』のメンバーにとって、帰っていく観客の様子で成果を実感できる貴重な機会だ。
談笑しながら帰る者。
圧倒されたように放心状態で歩く者。
そして、アルバイトスタッフとメンバーが浮かべる達成感溢れる表情。
どれも、今日の挑戦によって得られたものである。
今日も最後の時までパフォーマンスをやりきった。
夢に一歩ずつ近づいていることがわかり、非常にうれしく思う。
マナは、アルバイトスタッフに撤収の指示をかけながら、ステージ下にいるミカに声をかけようとした。
しかし、声は宙をさまよい、終いには消失した。
今日の現場関係者であるという覚えのない男が、ミカに名刺を渡していた。
「いやぁ~!圧巻のステージでしたね!
鳥肌もすごいし、髪も逆立っちゃうかと思いましたよ。
あ、そういえば僕、坊主頭でした。はっはっは!」
セルフツッコミをしつつ、自分の言葉に爆笑する男が目の前にいることを忘れ、ミカは名刺を見て固まっている。
「これは失礼、申し遅れました。
株式会社レヴァトリーチェの増子(ましこ)と申します。この坊主頭はこう見えて、常務取締役を担っております。」
「株式会社レヴァトリーチェって、かつて日本中を熱中させた有名なダンスグループを沢山プロデュースしてきたっていう、
あの有名な!?」
「ご存じでしたか!
弊社ではこれまで、日本全国のアミューズメント施設を拠点に、パフォーマーグループの育成、及び公演監督を行なっておりました。
しかしこの度、海外進出が決定しまして。
日本で有名な泉門さんとコラボをさせていただきたいと思い、伺いました。」
恭しく言葉を放ちながら、増子と名乗る男は薄手のカーディガンの下に隠していた、A4ファイルを飲み込めそうなビジネスバッグから、三部の書類を取り出した。
「急な訪問で不躾かと存じますが、よろしければこちらの計画資料もお受け取りください。」
増子はそう言いつつも、ちゃっかり三部の資料をミカに渡した。
その中にいる仲睦まじく話す声が、マナの耳に届いた。
「まさか、マナが客席にいるなんて思わなかったよね〜!」
「全然気づかなかった。スポットライト当たった時も、誰だかわかんなかったし。
流石『泉門』って感じ。」
「わかる!観に行くたびに、良い意味で予想を裏切られるっていうか。
…こう、セオリー通りじゃない感じ!?観ていてすごくワクワクする!」
「めっちゃわかる!また観に行きたいよな!」
「次の休みの日は公演あるかな?
ええと、ホームページのお知らせによると…、今季の公演は今日が最後だったみたい。残念。」
「そっか〜…。じゃあ、来季観に行こうよ。」
「うん!」
今季全公演で、恙無く終了した。
観客は満足した表情で帰っていく。
ステージの袖から、マナは笑みを浮かべつつ、観客の背を目で追う。そして、ホッと一息をつく。
この時間が、何よりも大切であり、最も活動意欲を刺激される絶好の機会になる。
夢に向かって、暗闇を手探りで進んでいる『泉門』のメンバーにとって、帰っていく観客の様子で成果を実感できる貴重な機会だ。
談笑しながら帰る者。
圧倒されたように放心状態で歩く者。
そして、アルバイトスタッフとメンバーが浮かべる達成感溢れる表情。
どれも、今日の挑戦によって得られたものである。
今日も最後の時までパフォーマンスをやりきった。
夢に一歩ずつ近づいていることがわかり、非常にうれしく思う。
マナは、アルバイトスタッフに撤収の指示をかけながら、ステージ下にいるミカに声をかけようとした。
しかし、声は宙をさまよい、終いには消失した。
今日の現場関係者であるという覚えのない男が、ミカに名刺を渡していた。
「いやぁ~!圧巻のステージでしたね!
鳥肌もすごいし、髪も逆立っちゃうかと思いましたよ。
あ、そういえば僕、坊主頭でした。はっはっは!」
セルフツッコミをしつつ、自分の言葉に爆笑する男が目の前にいることを忘れ、ミカは名刺を見て固まっている。
「これは失礼、申し遅れました。
株式会社レヴァトリーチェの増子(ましこ)と申します。この坊主頭はこう見えて、常務取締役を担っております。」
「株式会社レヴァトリーチェって、かつて日本中を熱中させた有名なダンスグループを沢山プロデュースしてきたっていう、
あの有名な!?」
「ご存じでしたか!
弊社ではこれまで、日本全国のアミューズメント施設を拠点に、パフォーマーグループの育成、及び公演監督を行なっておりました。
しかしこの度、海外進出が決定しまして。
日本で有名な泉門さんとコラボをさせていただきたいと思い、伺いました。」
恭しく言葉を放ちながら、増子と名乗る男は薄手のカーディガンの下に隠していた、A4ファイルを飲み込めそうなビジネスバッグから、三部の書類を取り出した。
「急な訪問で不躾かと存じますが、よろしければこちらの計画資料もお受け取りください。」
増子はそう言いつつも、ちゃっかり三部の資料をミカに渡した。
