とうとう僕はここまでたどり着いた。
 駅前の二宮金次郎像まではもうすぐだ。

 角っこの塀を横切る。その塀の上にいたのは、区長の家の『おもち』だ。
 
 やたらとかわいい名前をしているくせに、僕にはふてぶてしい図体と態度をしてくる、あの猫だ。

 区長の家は大きくて、木の立て札が渋くてカッコいい。そしていいものをたくさん食べさせてもらっているのだろうか、おもちは名前通り丸みを帯びたフォルムだ。他の人にはまんまるくて愛きょうがある、と人気が高いのだが、僕にいわせれば、おもちは最大の強敵だ。

 威圧感が違う。空気が震えている。

「……頼む、見逃してくれ」

 僕は懇願(こんがん)した。
 これ以上の重さは耐えられない。けれども。

――——世の中を甘く見るな。

 そう返答があるように思える。
 おもちは塀から飛び降り、どしん、と地が鳴る。
 じわりと汗がにじみ出る。こんな、こんなやつに勝てるだろうか。

 おもちは猫キック、猫パンチといった連続猫技に加え、のしかかり技を繰り出してくる。ヘビー級重量の強敵なのだ。

 そして、おもちは僕に飛びかかった——