秋が過ぎ冬が近くなって、空に透明感のある青が広がるようになったころ。おれの描いた絵が、コンクールで入賞を果たしたと、うれしい知らせを受けた。
美術の先生がよそのクラスでも話してしまったのだろうか。なぜか学校中にうわさが広まり、おれは一躍“有名人”扱いされてしまった。
「すげーよな、青木先輩って」
「ほんとにあの絵描いたの?」
「普段地味なのに意外〜!」
そんな声が飛び交って、廊下を歩くだけで視線を浴びる。
知らない誰かに褒められるのは、素直にうれしい。でも、おれは何も変わってない。描きたい絵を描いただけだ。ただ、それだけだったのに。まるで、突然スポットライトの真ん中に放り出されたみたいで、とまどうばかりの日々が続いた。
そんなある日のこと。
「毎日ぼっちで絵ばっか描いてるとかさ〜、すげーかもしれねぇけど、あーはなりたくねぇな」
「わかるわかる。なんか関わりにくくね?」
たまたま通りかかった廊下の角から、そんな声が聞こえてきた。
おれはよろりと、壁に片手をついた。
——ああ、そうか。
これが“本音”だったのか。
わかっているつもりでいたけれど、けっこうショックだった。実際に耳にすると、苦しいもんだな。
反論するつもりもなかった。ほんとのことだったから。
おれは、胸に鈍い痛みを抱えたまま、その場を離れようとした。
だが、次の瞬間。
「おい、今の訂正しろよ」
イラッとした、聞き慣れた声が飛んできたんだ。
「先輩のこと悪く言ってんじゃねぇよ。おまえら何も知らねぇくせに!」
立石が悪口を言った二人組につかみかかっている!!
「やめろっ」
美術の先生がよそのクラスでも話してしまったのだろうか。なぜか学校中にうわさが広まり、おれは一躍“有名人”扱いされてしまった。
「すげーよな、青木先輩って」
「ほんとにあの絵描いたの?」
「普段地味なのに意外〜!」
そんな声が飛び交って、廊下を歩くだけで視線を浴びる。
知らない誰かに褒められるのは、素直にうれしい。でも、おれは何も変わってない。描きたい絵を描いただけだ。ただ、それだけだったのに。まるで、突然スポットライトの真ん中に放り出されたみたいで、とまどうばかりの日々が続いた。
そんなある日のこと。
「毎日ぼっちで絵ばっか描いてるとかさ〜、すげーかもしれねぇけど、あーはなりたくねぇな」
「わかるわかる。なんか関わりにくくね?」
たまたま通りかかった廊下の角から、そんな声が聞こえてきた。
おれはよろりと、壁に片手をついた。
——ああ、そうか。
これが“本音”だったのか。
わかっているつもりでいたけれど、けっこうショックだった。実際に耳にすると、苦しいもんだな。
反論するつもりもなかった。ほんとのことだったから。
おれは、胸に鈍い痛みを抱えたまま、その場を離れようとした。
だが、次の瞬間。
「おい、今の訂正しろよ」
イラッとした、聞き慣れた声が飛んできたんだ。
「先輩のこと悪く言ってんじゃねぇよ。おまえら何も知らねぇくせに!」
立石が悪口を言った二人組につかみかかっている!!
「やめろっ」

