こんなかんたんなことに、どうしてもっとはやく気づかなかったんだろうな。あのときの寝言だって、もし自分だったらって淡い期待を抱いていたくせに。
ああ、そうだ。認めてやる。おれもだ。おまえと同じように、同じような気持ちで好きなんだよ。
だから、あきらめの境地でおれは承諾した。
「……わかったよ。嫌いにはならない。おまえの勝ちだ。ただし、その先はちょっと……まずはお友だちとしてだな、わかるだろ?」
うれしかったけれど、素直にOKするには、プライドがジャマをしていた。驚かされっぱなしの、振りまわされっぱなしじゃ、なんかしゃくにさわるからな。
「ん、先輩がそうしたいなら。おれもそれでいい。おれがいちばん大切にしたいのは、帆高先輩だけだから」
立石は本当にうれしそうに笑った。その笑顔を見るだけで、おれの胸がまた熱くなる。
「あ、そうだ。先輩、手、だして」
耳もとでささやかれてドキッとした。
「おまえ、また何……はっ、名前を書くんじゃないだろうな」
「書かねーよ。もっといいものあげるって」
「いいもの?」
なんだろう、と首をかしげていると。
立石はニヤリと笑いながら、おれの左手をたからもののようにそっとつつんだ。それをアホみたいに、ポカンと眺めるおれ。
そして、立石は油性ペンのキャップを外し——。
「おい、やっぱ書くんじゃねーか!」
ところが、その動きは、おれの予想とちょっとちがっていた。左手薬指にぐるっと、一本線が描かれたんだ。
そのあと立石は、自分の左手薬指にも、同じ線をすばやく描いた。
「ほら、ペアリング」
「なっ……!」
即席のペアリングを目の前にして、おれはワナワナ震えた。
ああ、そうだ。認めてやる。おれもだ。おまえと同じように、同じような気持ちで好きなんだよ。
だから、あきらめの境地でおれは承諾した。
「……わかったよ。嫌いにはならない。おまえの勝ちだ。ただし、その先はちょっと……まずはお友だちとしてだな、わかるだろ?」
うれしかったけれど、素直にOKするには、プライドがジャマをしていた。驚かされっぱなしの、振りまわされっぱなしじゃ、なんかしゃくにさわるからな。
「ん、先輩がそうしたいなら。おれもそれでいい。おれがいちばん大切にしたいのは、帆高先輩だけだから」
立石は本当にうれしそうに笑った。その笑顔を見るだけで、おれの胸がまた熱くなる。
「あ、そうだ。先輩、手、だして」
耳もとでささやかれてドキッとした。
「おまえ、また何……はっ、名前を書くんじゃないだろうな」
「書かねーよ。もっといいものあげるって」
「いいもの?」
なんだろう、と首をかしげていると。
立石はニヤリと笑いながら、おれの左手をたからもののようにそっとつつんだ。それをアホみたいに、ポカンと眺めるおれ。
そして、立石は油性ペンのキャップを外し——。
「おい、やっぱ書くんじゃねーか!」
ところが、その動きは、おれの予想とちょっとちがっていた。左手薬指にぐるっと、一本線が描かれたんだ。
そのあと立石は、自分の左手薬指にも、同じ線をすばやく描いた。
「ほら、ペアリング」
「なっ……!」
即席のペアリングを目の前にして、おれはワナワナ震えた。

