しばらく無言で見つめあったあと、おれは口をひらいた。
「立石ありがとう、おれのために。そこまで思ってくれてうれしいよ……。ほんとのこと言うと、けっこうショックだったんだ」
 声がかすれて、言葉が続かなかった。でも、これだけは伝えなければ。おれは立石の横のイスに座った。
「だけどさ、もうやめろよ。こういうこと。立石が痛い思いをするのは嫌なんだ。だから今度もし同じことがあってもするなよ、わかったな」
 立石はだまったままだった。まるでシュンとうなだれているようだった。さっき力にまかせて暴力を振るおうとしたことを、彼なりに反省しているんだろうなと思った。
 しばらくして、
「ん、わかった」
 立石がうなずく。
 これでたぶん大丈夫だ。一件落着ってとこか。おれは立ち上がって、両手を上げて伸びをした。
「あーあ、授業もう始まってるな。おまえのせいだぞ。責任とってもらうからな」
 立石を振りかえって笑う。
 すると、立石もすっくと立って――なぜか後ろからハグしてきた。
 んんっ? またいつものスキンシップか? あ、そっか。お兄ちゃんに甘えているんだな?
 ふう、しょうがない、今日ばかりは大目に見てやるかと思ったけども、妙にやらしい手つきが気になった。おれの指のあいだに自分の指をからめて、さわさわ上下に動かしているんだ。
「おい、待て。なんだ、これは」
 しばしの沈黙。
「んー、スキンシップ?」
 どさくさ紛れに、おれの髪にちゅっと軽いキスを落とす。