さよなら、毒舌レオ

季節が巡った。
春が来て、夏が過ぎ、秋が深まっていた。
レオがいなくなってから、半年が経った。
私は、あの部屋で暮らし続けていた。
引っ越そうと思ったこともあった。
レオの思い出が詰まったこの部屋は、時々辛くなる。
でも、やっぱり離れられなかった。
レオと過ごした場所。
レオが愛してくれた場所。
ここが、私の家だった。
部屋は、以前より綺麗になっていた。
洗濯物を溜めることもなく、床に髪の毛が落ちていることもない。
レオに怒られないように、ちゃんと片付けるようになった。
ソファの肘掛けを見ると、まだレオが丸まっているような気がする。
でも、もういない。
それでも、私は前を向いて生きていた。
レオが教えてくれたから。
ある秋の午後、私は散歩に出かけた。
いつもの公園を通り過ぎて、商店街を歩く。
角を曲がると、道端に野良猫がいた。
茶色い毛並みの、痩せた猫。
私の足音に気づいて、警戒した目でこちらを見た。
以前の私なら、きっと素通りしていた。
猫に話しかけても、言葉は通じない。
孤独は消えない。
そう思っていたから。
でも、今は違う。
「こんにちは」
私は、しゃがんで猫に話しかけた。
猫は、じっと私を見ている。
言葉は通じない。
でも、それでいい。
私は、そっと手を差し出した。
猫は、少しだけ警戒を解いて、私の手に鼻を近づけた。
匂いを嗅いでいる。
そして、小さく鳴いた。
「ニャ」
短い声。
でも、それだけで十分だった。
私は微笑んだ。
言葉がなくても、世界とは繋がれる。
心を開けば、誰とでも通じ合える。
レオが、それを教えてくれた。
「元気でね」
私は猫に手を振って、立ち上がった。
猫は、また道端に座って、陽の光を浴びている。
平和な光景。
私は歩き出した。
空を見上げる。
秋の青空が、どこまでも広がっていた。
雲が、ゆっくりと流れている。
風が吹いた。
木々の葉が、さらさらと音を立てる。
その音に混じって、声が聞こえた気がした。
「しっかりやれよ、独身女」
懐かしい声。
レオの声。
いつもの悪態。
でも、それが愛おしい。
「うるさいな」
私は、小さく呟いた。
そして、笑った。
もう泣かない。
レオは、いつも私を見守ってくれている。
そう信じているから。
私は、力強く歩き出した。
背筋を伸ばして。
胸を張って。
レオが教えてくれた歩き方で。
前を向いて、進んでいく。
これからも、きっと辛いことはある。
悲しいことも、苦しいことも。
でも、大丈夫。
私は、もう孤独じゃない。
レオの愛を知っているから。
世界との繋がり方を知っているから。
「レオ、見ててね」
私は、心の中で囁いた。
「私、頑張るから」
風が、また吹いた。
まるで「ああ、頑張れよ」と言っているような。
私は、その風に背中を押されるように、前へ進んだ。
新しい一日が、始まる。
レオのいない日々。
でも、レオと一緒に生きていく日々。
それが、私の人生だった。