◇
・週明け。
・朝。晴れ。
・学校。
眞琴と英里奈が一緒に登校している。
二人の背後からダレンが声をかける。
ダレン
「おはよう、二人とも!」
眞琴と英里奈が振り返る。
英里奈
「あっ、ダレン。おはよう〜」
眞琴
「おはよう」
ダレンは学ランのカラーの部分に装着してある特別クラスのバッジをこれみよがしに見せ付ける。
ダレン
「はっは〜。今日から俺も特別クラスだ!」
「よろしくな、眞琴。さらばだ、英里奈」
英里奈は大きく目を見張り、眞琴は眉をひそめる。
英里奈
「ええぇぇぇぇーー!!」
眞琴
「本当に?」
ダレン
「あぁ。師匠が許可をくださったんだ」
眞琴&英里奈
「師匠?」
ダレン
「絃師匠だよ」
眞琴
「師匠ですって?」
ダレン
「そう! 師匠は素晴らしい!」
ダレンは絃の素晴らしい戦いぶりを滔々と語っている。
英里奈は眞琴に耳打ちする。
英里奈
「ちょっと! あいつ、どうしちゃったの?」
眞琴
「多分、こないだ白道さんに負けて、弟子入りしたんだと思う」
英里奈
「ええぇ……」
英里奈ははっと思い出す。
英里奈
「っていうか、眞琴」
「あんた、週末に白道様とデートしてたでしょ!?」
「目撃情報がたくさんあるわ」
眞琴
「デートっていうか、一緒に服を見たりお茶しただけよ」
英里奈
「それをデートっていうのよ!」
「あぁっ! あんなイケメンとデートできるなんて、うらやましい!」
「で、どうだった?」
眞琴
「…まぁ、楽しかったかも」
英里奈
「なに? ノロケ? ノロケなの!?」
英里奈は心配そうに言う。
英里奈
「ところで、あのクラスで大丈夫なの? 多分デートの件も知られていると思うわ」
「嫌がらせとかされてない?」
眞琴
「まぁ、慣れてるし」
英里奈
「慣れちゃダメよ」
「人は誰だって幸せになる権利を持っているんだから」
「当然、眞琴も!」
眞琴は嬉しいけど、照れるような表情になる。
眞琴
「ありがとう。でも私は大丈夫よ」
「白道さんも気遣ってくれるし」
英里奈
「ぎゃー! またノロケ! 許せん!」
◇
・翌々週。
・夜。晴れ。満月。
・学校の裏山。
特別クラスの生徒たちに加えて、教師や陰陽師関係者がずらり。絃や他の四大司家の人々(※全員が着物姿)も視察に来ている。
生徒たちはジャージ姿。眞琴は手袋とゴーグルを付けている。
眞琴N
『今日は野外演習だ』
『悪霊と戦うのは夜が多いため、暗くなってから実践形式の試合を行う』
アッシュが赤いハチマキをきキュッと引き締めて、超やる気満々。
眞琴N
『式神のハチマキを相手に奪われたら負け』
『勝負は獲得したハチマキの数で決まる』
ダレンも眞琴と同じく、式神ではなく使い魔を出している。大きな個体の白頭鷲。
ダレン
「腕が鳴るぜ」
アッシュ
「おー!」
眞琴はキリッと前を向く。
眞琴
「…やるしかないか」
眞琴と絃の目が合い、彼はニッと笑う。
【眞琴回想】
・数日前。
・絃の道場。
絃
「今度の演習で優勝したら、祓い仕事の時給を倍にしてやる」
眞琴の瞳が輝く。
眞琴
「ほんとに!?」
【回想終わり】
香子たちがニヤニヤと笑みを浮かべて眞琴を見ている。眞琴はそれに気付いていない。
教師
「開始っ!」
生徒たちが森の中に散り散りになる。
眞琴も駆けていく。
しばらくして他の生徒とかち合う。
生徒
「悪魔の子見ぃ〜っけ!」
生徒は式神でアッシュを攻撃する。
アッシュ
「こんにゃろー!」
アッシュは素早い動きで攻撃をかわして、あっという間に相手の式神のハチマキを奪い取る。
眞琴
「ナイス」
アッシュ
「あったりまえだーい!」
その後も数人の生徒に追われるが、アッシュが次々にハチマキを奪っていく。
順調のようだが、眞琴は違和感を抱く。
眞琴M
「おかしい…」
「なにか決まった導線の上を進まされているみたいな…」
眞琴は森を抜けてしまい、足を止める。
目の前には崖があり、下には街並みの明かりが見える。
森の中から香子と取り巻きが出てくる。
香子
「きゃはは。作戦成功♪」
取り巻き1
「意外に簡単に引っかかったわね」
取り巻き2
「あの式神がすばしっこいのは予想外だったけど」
眞琴は警戒しながら彼女たちと距離を取る。香子はじりじりと近付いて来る。
眞琴
「なに?」
香子
「なにって…。あんたはこれから無様に負けるのよ」
眞琴
「え?」
アッシュ
「安心しろ、眞琴。オレは負けねぇ」
香子は鼻で笑う。
香子
「その生意気な式神も、一緒に地獄に落としてあげる」
「これ、なぁ〜んだ?」
香子はポケットから丸い物体を取り出す。
眞琴はそれを目視して目を見開く。
眞琴
「それは…呪術式集束爆弾!」
香子
「当ったり〜!」
「意外にお利口さんなのね」
眞琴
「今日は式神以外は使用禁止よ」
「それに、それは2級の悪霊が100体以上いる場合にしか使用できないわ」
香子
「うん。だから、あんたが優勝したいがために不正をするのよ」
「で、暴発して失敗して――ジ・エンド?」
眞琴は身構えるが、突然身体が動かなくなる。
眞琴
「!?」
アッシュ
「にゃっ!?」
見ると、月明かりに照らされた二人の影に楔が打ち込まれていた。
眞琴
「いつの間に…!」
香子
「油断したわね」
「この子たちは後方支援の術が得意なのよ?」
取り巻きたちがニヤリと笑う。
香子は笑顔で爆弾を作動させて、眞琴にポイと軽く投げる。
香子
「じゃ、バイバ〜イ」
次の瞬間、眞琴は霊力を全開して楔の呪いを打ち消す。
眞琴M
「避けることはできるけど…」
眞琴は背後の街を横目で見る。
眞琴M
「収束爆弾は、中に複数の爆弾が詰まっている」
「このままじゃ、街に被害が及ぶわ」
眞琴は覚悟を決めた顔をして、五芒星の魔法陣を描く。
アッシュ
「おい、眞琴やめろ!」
「オレを召還すれば――」
眞琴
「そんな時間はないわ」
眞琴の前に魔法陣が出来る。
眞琴
「私が…受け止める!」
「封印結界!」
◇
森の奥から大きな爆発音がして、教師や陰陽師たちに動揺が広がる。
絃
「この霊気は…」
「眞琴か!?」
絃は急いで眞琴の霊気のもとへ駆ける。
絃
「眞琴っ!!」
森の外に出ると、仰向けで倒れている眞琴がいた。爆発の衝撃で衣服は破れ、全身が血まみれになっている。
側にはボロボロのアッシュが眞琴の名前を叫んでいる。
絃は眞琴を抱き上げる。
絃
「大丈夫か!?」
眞琴
「わ、私…は……」
絃
「今、治療班が――」
眞琴の瞳が満月にとらわれる。自分の血の匂いが充満する。手袋が破れ、ゴーグルも破壊されている。
ドクン、と眞琴の心臓が強く鳴る。
自分の血が、どろりと口の中に入る。
眞琴は小さく呟く。
眞琴
「血……」
次の瞬間、眞琴の目が黒く染まって大きく見開き、鋭利な牙がはえる。
アッシュ
「ヤバい! 絃、眞琴から離れろ!」
絃
「は?」
「なに言って――」
にわかに起き上がった眞琴が、絃の首に勢いよく噛み付く。
絃
「!?」
・週明け。
・朝。晴れ。
・学校。
眞琴と英里奈が一緒に登校している。
二人の背後からダレンが声をかける。
ダレン
「おはよう、二人とも!」
眞琴と英里奈が振り返る。
英里奈
「あっ、ダレン。おはよう〜」
眞琴
「おはよう」
ダレンは学ランのカラーの部分に装着してある特別クラスのバッジをこれみよがしに見せ付ける。
ダレン
「はっは〜。今日から俺も特別クラスだ!」
「よろしくな、眞琴。さらばだ、英里奈」
英里奈は大きく目を見張り、眞琴は眉をひそめる。
英里奈
「ええぇぇぇぇーー!!」
眞琴
「本当に?」
ダレン
「あぁ。師匠が許可をくださったんだ」
眞琴&英里奈
「師匠?」
ダレン
「絃師匠だよ」
眞琴
「師匠ですって?」
ダレン
「そう! 師匠は素晴らしい!」
ダレンは絃の素晴らしい戦いぶりを滔々と語っている。
英里奈は眞琴に耳打ちする。
英里奈
「ちょっと! あいつ、どうしちゃったの?」
眞琴
「多分、こないだ白道さんに負けて、弟子入りしたんだと思う」
英里奈
「ええぇ……」
英里奈ははっと思い出す。
英里奈
「っていうか、眞琴」
「あんた、週末に白道様とデートしてたでしょ!?」
「目撃情報がたくさんあるわ」
眞琴
「デートっていうか、一緒に服を見たりお茶しただけよ」
英里奈
「それをデートっていうのよ!」
「あぁっ! あんなイケメンとデートできるなんて、うらやましい!」
「で、どうだった?」
眞琴
「…まぁ、楽しかったかも」
英里奈
「なに? ノロケ? ノロケなの!?」
英里奈は心配そうに言う。
英里奈
「ところで、あのクラスで大丈夫なの? 多分デートの件も知られていると思うわ」
「嫌がらせとかされてない?」
眞琴
「まぁ、慣れてるし」
英里奈
「慣れちゃダメよ」
「人は誰だって幸せになる権利を持っているんだから」
「当然、眞琴も!」
眞琴は嬉しいけど、照れるような表情になる。
眞琴
「ありがとう。でも私は大丈夫よ」
「白道さんも気遣ってくれるし」
英里奈
「ぎゃー! またノロケ! 許せん!」
◇
・翌々週。
・夜。晴れ。満月。
・学校の裏山。
特別クラスの生徒たちに加えて、教師や陰陽師関係者がずらり。絃や他の四大司家の人々(※全員が着物姿)も視察に来ている。
生徒たちはジャージ姿。眞琴は手袋とゴーグルを付けている。
眞琴N
『今日は野外演習だ』
『悪霊と戦うのは夜が多いため、暗くなってから実践形式の試合を行う』
アッシュが赤いハチマキをきキュッと引き締めて、超やる気満々。
眞琴N
『式神のハチマキを相手に奪われたら負け』
『勝負は獲得したハチマキの数で決まる』
ダレンも眞琴と同じく、式神ではなく使い魔を出している。大きな個体の白頭鷲。
ダレン
「腕が鳴るぜ」
アッシュ
「おー!」
眞琴はキリッと前を向く。
眞琴
「…やるしかないか」
眞琴と絃の目が合い、彼はニッと笑う。
【眞琴回想】
・数日前。
・絃の道場。
絃
「今度の演習で優勝したら、祓い仕事の時給を倍にしてやる」
眞琴の瞳が輝く。
眞琴
「ほんとに!?」
【回想終わり】
香子たちがニヤニヤと笑みを浮かべて眞琴を見ている。眞琴はそれに気付いていない。
教師
「開始っ!」
生徒たちが森の中に散り散りになる。
眞琴も駆けていく。
しばらくして他の生徒とかち合う。
生徒
「悪魔の子見ぃ〜っけ!」
生徒は式神でアッシュを攻撃する。
アッシュ
「こんにゃろー!」
アッシュは素早い動きで攻撃をかわして、あっという間に相手の式神のハチマキを奪い取る。
眞琴
「ナイス」
アッシュ
「あったりまえだーい!」
その後も数人の生徒に追われるが、アッシュが次々にハチマキを奪っていく。
順調のようだが、眞琴は違和感を抱く。
眞琴M
「おかしい…」
「なにか決まった導線の上を進まされているみたいな…」
眞琴は森を抜けてしまい、足を止める。
目の前には崖があり、下には街並みの明かりが見える。
森の中から香子と取り巻きが出てくる。
香子
「きゃはは。作戦成功♪」
取り巻き1
「意外に簡単に引っかかったわね」
取り巻き2
「あの式神がすばしっこいのは予想外だったけど」
眞琴は警戒しながら彼女たちと距離を取る。香子はじりじりと近付いて来る。
眞琴
「なに?」
香子
「なにって…。あんたはこれから無様に負けるのよ」
眞琴
「え?」
アッシュ
「安心しろ、眞琴。オレは負けねぇ」
香子は鼻で笑う。
香子
「その生意気な式神も、一緒に地獄に落としてあげる」
「これ、なぁ〜んだ?」
香子はポケットから丸い物体を取り出す。
眞琴はそれを目視して目を見開く。
眞琴
「それは…呪術式集束爆弾!」
香子
「当ったり〜!」
「意外にお利口さんなのね」
眞琴
「今日は式神以外は使用禁止よ」
「それに、それは2級の悪霊が100体以上いる場合にしか使用できないわ」
香子
「うん。だから、あんたが優勝したいがために不正をするのよ」
「で、暴発して失敗して――ジ・エンド?」
眞琴は身構えるが、突然身体が動かなくなる。
眞琴
「!?」
アッシュ
「にゃっ!?」
見ると、月明かりに照らされた二人の影に楔が打ち込まれていた。
眞琴
「いつの間に…!」
香子
「油断したわね」
「この子たちは後方支援の術が得意なのよ?」
取り巻きたちがニヤリと笑う。
香子は笑顔で爆弾を作動させて、眞琴にポイと軽く投げる。
香子
「じゃ、バイバ〜イ」
次の瞬間、眞琴は霊力を全開して楔の呪いを打ち消す。
眞琴M
「避けることはできるけど…」
眞琴は背後の街を横目で見る。
眞琴M
「収束爆弾は、中に複数の爆弾が詰まっている」
「このままじゃ、街に被害が及ぶわ」
眞琴は覚悟を決めた顔をして、五芒星の魔法陣を描く。
アッシュ
「おい、眞琴やめろ!」
「オレを召還すれば――」
眞琴
「そんな時間はないわ」
眞琴の前に魔法陣が出来る。
眞琴
「私が…受け止める!」
「封印結界!」
◇
森の奥から大きな爆発音がして、教師や陰陽師たちに動揺が広がる。
絃
「この霊気は…」
「眞琴か!?」
絃は急いで眞琴の霊気のもとへ駆ける。
絃
「眞琴っ!!」
森の外に出ると、仰向けで倒れている眞琴がいた。爆発の衝撃で衣服は破れ、全身が血まみれになっている。
側にはボロボロのアッシュが眞琴の名前を叫んでいる。
絃は眞琴を抱き上げる。
絃
「大丈夫か!?」
眞琴
「わ、私…は……」
絃
「今、治療班が――」
眞琴の瞳が満月にとらわれる。自分の血の匂いが充満する。手袋が破れ、ゴーグルも破壊されている。
ドクン、と眞琴の心臓が強く鳴る。
自分の血が、どろりと口の中に入る。
眞琴は小さく呟く。
眞琴
「血……」
次の瞬間、眞琴の目が黒く染まって大きく見開き、鋭利な牙がはえる。
アッシュ
「ヤバい! 絃、眞琴から離れろ!」
絃
「は?」
「なに言って――」
にわかに起き上がった眞琴が、絃の首に勢いよく噛み付く。
絃
「!?」

