◇
・朝。晴れ。
・学校への通学路。
眞琴が歩いて登校している。
眞琴N
『突然の』
『新しい生活が始まった』
【眞琴回想】
離れの小屋の前に、お盆に乗った一汁三菜のホカホカの美味しそうな食事が置いていある。
アッシュが目を輝かせて感動している。
眞琴N
『昨晩から、「犬の餌」から「人間の食事」に変わった』
眞琴が気持ち良さそうにお風呂に浸かっている。
アッシュが楽しそうにパシャパシャと洗面器の中で泳いでいる。
眞琴N
『教会の壊れたシャワーじゃなくて』
『母屋の温かいお風呂に入れるようになった』
【回想終わり】
眞琴の制服の襟元のアップ。特別クラスのバッジが光る。
眞琴N
『そして』
眞琴が特別クラスの教室に足を踏み入れる。
他の生徒たちの冷ややかな視線が一気に彼女に注がれる。
眞琴N
『私は今日から特別クラスに編入した』
眞琴はキョロキョロと辺りを見回す。
眞琴M
「えっと…。私の席は…」
「!」
一つの席の上に菊の花の飾られた花瓶が置いてある。机の上には「死ね」「ビッチ」「悪魔の子」「汚れた血」などの罵詈雑言がマジックで書かれている。
眞琴M
「あそこね」
「分かりやすい目印で助かるわ」
眞琴は平然とした様子で、花瓶をどけてから着席する。
香子
「最っっっ悪ぅ〜〜〜!」
眞琴が声に目を向けると、香子と取り巻きの女生徒2人が彼女を睨み付けている。
香子
「こんな汚い血の女が特別クラスだなんて〜」
取り巻き1
「ほんとよねー」
取り巻き2
「悪魔の子と一緒にされたくないわぁ〜」
アッシュが眞琴の鞄の隙間から香子たちに威嚇する。
アッシュ
「なんだと〜〜〜!?」
「やんのかこりゃー!」
眞琴は小声でアッシュを咎める。
眞琴
「しっ」
「静かに」
眞琴は香子たちを無視して、絃から渡された陰陽術の本を読み始める。
取り巻き1
「うわっ、シカトかよ」
取り巻き2
「感じわるーい」
香子はさっきの花瓶を持って、眞琴の前に来る。
そして、眞琴の頭上から花瓶をひっくり返す。
香子
「ばっちいものは消毒しなきゃ〜♪」
眞琴はずぶ濡れ。香子たちは「きゃははは」と笑っている。
アッシュは本気で怒り、彼の纏う空気が変わる。
アッシュ
「なぁ…眞琴…」
「オレ、元の姿に戻ろうか…?」
眞琴は俯いたまま小声でアッシュに話しかける。
眞琴
「今は我慢して」
香子は汚れた雑巾を眞琴の顔に投げ付ける。
香子
「ちょっとぉ〜? 水浸しじゃな〜い?」
「早く片付けなさいよ」
女生徒たちも「そうよそうよ」と香子に追従する。
アッシュは我慢できずに鞄から飛び出る。
アッシュ
「お前ら、いい加減にしろよなー!」
眞琴
「アッシュ!」
アッシュの登場に一瞬だけクラスがしんと静まり返る。
が、少ししてクラス中の生徒たちが大爆笑する。
生徒1
「なに、この式神〜」
生徒2
「ちっさ!」
生徒3
「いかにも弱っちそ〜う」
アッシュの怒りが爆発する。
アッシュ
「なんだとぉー!」
「お前ら全員ぶっ倒してやるー!」
香子は笑い泣きした涙を、人差し指で拭いながら眞琴に言う。
香子
「コウモリ型なんて初めて見たわ」
「しょぼっ」
香子は得意げに自分の式神を出す。すると大きなホワイトタイガーが出てきて、アッシュに向かって大声で吠える。
香子
「いいこと? 式神は陰陽師の霊力が反映されるの」
「四大司家の方々は、人型の強い式神を持っているわ」
香子はホワイトタイガーを撫でながら言う。
「そんな脆弱な式神しか作れないのに、なんで絃様の弟子になれたの?」
アッシュは毛を逆立てて威嚇する。
アッシュ
「オレは脆弱じゃねー!!」
取り巻き1
「色仕掛けでもしたんじゃない?」
取り巻き2
「教会の神父とパパ活してるって噂で聞いたけど」
眞琴は怒りで目をカッと見開く。
その瞬間、彼女の霊力が教室中に広がって、生徒たちは圧倒される。だが力の正体を理解できず、何がなんだか分からない様子。
眞琴は怒りを抑えながら、静かに言う。
眞琴
「司祭さんも白道さんも立派な方よ」
「二人を侮辱するのは私が許さないわ」
その時、教師が教室に入ってくる。
教師
「席に着けー。授業を始めるぞー」
生徒たちは慌てて席につく。
香子は舌打ちしながら憎々しげに眞琴を睨み付ける。
眞琴はふと疑問に思って首を傾げる。
眞琴M
「ライアン先生はともかく」
「なんであの人のことまで庇ったのかしら…?」
◇
・車の中。
・秘書が運転して、絃(※スーツ姿)が後部座席でノートパソコンを開いて仕事をしている。
秘書
「眞琴さんは無事に本日から特別クラスに通学したようです」
絃はパソコンの画面を見つめながら返事をする。
絃
「そうか」
「サボるなって念押ししといたからな」
絃は昨日の眞琴とのやり取りをふと思い出す。
【絃回想】
・昨日の教会のあと。
・絃の所有する道場。
眞琴
「式神?」
絃
「そうだ。陰陽師は己の霊力を練って、式神を作り出す」
「式神はいわば陰陽師の矛と盾だ」
絃
「白鬼(ルビ:はくき)」
白鬼
「はっ!」
絃の目の前に式神が現れる。頭に角の生えた人型の式神。成人男性くらいの見た目だが中性的な雰囲気。色素が薄く、服も全身白で神秘的。
絃
「こいつは俺の式神だ」
白鬼はきりりとした表情で言う。
白鬼
「白鬼と申します。以後、お見知りおきを」
絃
「両手に霊力を集中させて、生命をイメージするんだ」
「ほら、やってみろ」
眞琴
「……」
「アッシュ」
アッシュがポンッ!と空間に出てくる。あざと可愛く片手を上げて、可愛いポーズを作る。
アッシュ
「あーい!」
絃は目を細めてじぃ〜っとアッシュを見る。
眞琴は自信満々に言う。
眞琴
「私の式神です」
絃は眞琴の脳天にチョップをする。
絃
「嘘こけ」
眞琴
「いたっ!」
絃
「明らかに式神じゃないだろ!」
「なんだこの凄まじい魔の力は!?」
アッシュ
「よく分かったなー!」
「オレの名はアッシュ。眞琴の使い魔だ!」
【絃回想終わり】
絃は昨日のことを思い出してふっと微笑する。
秘書
「…本当によろしいのですか?」
絃
「なにがだ?」
秘書
「眞琴さんのことです」
「彼女は真夜家の分家筋です。あちらの了承を得たほうが良かったのでは?」
絃
「本来なら、眞琴が日本に来た時に真夜が動くべき案件だった」
「何もしない者に、口を挟む権利はない」
絃
「ま、もし苦情を言われたら進次郎さんへの恩義だと答えるだけだ」
絃は再び仕事を再開する。
秘書はミラー越しに困惑した表情で絃を見やる。
秘書M
「本当に、それだけが理由ですか…?」
◇
・その日の放課後。
・小さな児童公園。
眞琴(※手袋、ゴーグル着用)と、少し後ろに絃が控えている。
二人の目の前には悪霊。(※黒い影のようなもの)
眞琴は呪文を唱えて十字を切る。すると、光の短剣が2本顕現する。
それを見て絃はぎょっとした顔になる。
絃
「眞琴! 陰陽術で戦え!」
「昨日教えただろうが!」
眞琴は無視して短剣で悪霊を斬る。悪霊は「ギャアアァァァ!!」と叫びながら消える。
眞琴
「…よし」
絃
「よし、じゃねぇよ」
「しばらく祓魔師(ルビ:エクソシスト)の術は封印しろって言っただろう」
眞琴
「だって、こっちのほうが慣れてるんだもん」
絃
「それじゃ意味が…」
「――!?」
突如、絃に向かって光線がビュンと飛んで来る。
絃は瞬時に懐から鉄扇を出して、それを弾いて打ち消す。
二人の前にダレンが現れる。
絃
「なんだ…?」
眞琴
「ダレン?」
ダレンはきっと絃を睨み付けて言う。
ダレン
「おい、おっさん」
「カミーラを返せ」
絃
「あん?」
ダレン
「カミーラは祓魔師(ルビ:エクソシスト)になるんだよ」
「勝手に連れて行ってんじゃねぇ」
ダレンは眞琴の腕を掴もうと手を伸ばす。
ダレン
「行こうぜ、カミーラ」
だがダレンが眞琴に触れる前に、絃が彼女の肩を抱いて自分に引き寄せる。
眞琴はドキリと胸を打って、顔を赤くする。
眞琴
「!?」
絃
「眞琴は俺の弟子だ」
「お前なんかに渡さない」
ダレン
「ぐっ…」
絃はニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべて挑発する。
絃
「まっ、俺を倒すことが出来たら考えてやってもいいぜ?」
ダレン
「なら話が早い」
ダレンは光の剣で絃に襲いかかる。
が、絃は鉄扇でそれを容易く折り、光が消える。
ダレン
「なんっ…!?」
瞬く間に絃は霊力波をダレンにぶつけ、腹にクリティカルヒットしてダレンは吹き飛ばされて砂場に倒れる。
ダレン
「ぐはっ!」
絃
「おいおい。威勢よく飛び出たくせにその程度か?」
いつの間にか眞琴が絃の背後を取っていて、彼に囁く。
眞琴
「白道さんを倒したら解放してくれるのね?」
絃が振り返ると、眞琴が2本の光の短剣で彼を襲う。が、軽く鉄扇で弾かれ、脳天にチョップされる。
眞琴
「きゃっ!」
絃はニヤリと笑う。
絃
「残念だったな。精進したまえ」
眞琴は「むぅーっ」とした顔で絃を見る。
絃
「そろそろ帰るか」
「あいつも送ってやろう」
絃と眞琴が車に向かう。
伸びているダレンを秘書と白鬼が抱えて連れて行く。
車の座席に座った眞琴と絃。
絃
「じゃ、次に会うのは明後日のパーティーだな」
眞琴は目が点になる。
眞琴
「は?」
「なんのこと?」
絃は信じられないという顔になる。
絃
「おい、聞いてないのか?」
眞琴
「なにがですか?」
絃
「明後日は、白道財閥の創業記念パーティーがある」
「眞琴にも招待状を送ったはずなんだが」
眞琴
「なにそれ。聞いてない」
「別に行きたくないし…」
絃
「…夜見家には、もう一度伝えておく」
「絶対に来いよ? でないと、祓いのバイト代を半額にするぞ」
眞琴は心底嫌そうな顔をする。
眞琴M
「えぇ〜〜〜っ!!」
・朝。晴れ。
・学校への通学路。
眞琴が歩いて登校している。
眞琴N
『突然の』
『新しい生活が始まった』
【眞琴回想】
離れの小屋の前に、お盆に乗った一汁三菜のホカホカの美味しそうな食事が置いていある。
アッシュが目を輝かせて感動している。
眞琴N
『昨晩から、「犬の餌」から「人間の食事」に変わった』
眞琴が気持ち良さそうにお風呂に浸かっている。
アッシュが楽しそうにパシャパシャと洗面器の中で泳いでいる。
眞琴N
『教会の壊れたシャワーじゃなくて』
『母屋の温かいお風呂に入れるようになった』
【回想終わり】
眞琴の制服の襟元のアップ。特別クラスのバッジが光る。
眞琴N
『そして』
眞琴が特別クラスの教室に足を踏み入れる。
他の生徒たちの冷ややかな視線が一気に彼女に注がれる。
眞琴N
『私は今日から特別クラスに編入した』
眞琴はキョロキョロと辺りを見回す。
眞琴M
「えっと…。私の席は…」
「!」
一つの席の上に菊の花の飾られた花瓶が置いてある。机の上には「死ね」「ビッチ」「悪魔の子」「汚れた血」などの罵詈雑言がマジックで書かれている。
眞琴M
「あそこね」
「分かりやすい目印で助かるわ」
眞琴は平然とした様子で、花瓶をどけてから着席する。
香子
「最っっっ悪ぅ〜〜〜!」
眞琴が声に目を向けると、香子と取り巻きの女生徒2人が彼女を睨み付けている。
香子
「こんな汚い血の女が特別クラスだなんて〜」
取り巻き1
「ほんとよねー」
取り巻き2
「悪魔の子と一緒にされたくないわぁ〜」
アッシュが眞琴の鞄の隙間から香子たちに威嚇する。
アッシュ
「なんだと〜〜〜!?」
「やんのかこりゃー!」
眞琴は小声でアッシュを咎める。
眞琴
「しっ」
「静かに」
眞琴は香子たちを無視して、絃から渡された陰陽術の本を読み始める。
取り巻き1
「うわっ、シカトかよ」
取り巻き2
「感じわるーい」
香子はさっきの花瓶を持って、眞琴の前に来る。
そして、眞琴の頭上から花瓶をひっくり返す。
香子
「ばっちいものは消毒しなきゃ〜♪」
眞琴はずぶ濡れ。香子たちは「きゃははは」と笑っている。
アッシュは本気で怒り、彼の纏う空気が変わる。
アッシュ
「なぁ…眞琴…」
「オレ、元の姿に戻ろうか…?」
眞琴は俯いたまま小声でアッシュに話しかける。
眞琴
「今は我慢して」
香子は汚れた雑巾を眞琴の顔に投げ付ける。
香子
「ちょっとぉ〜? 水浸しじゃな〜い?」
「早く片付けなさいよ」
女生徒たちも「そうよそうよ」と香子に追従する。
アッシュは我慢できずに鞄から飛び出る。
アッシュ
「お前ら、いい加減にしろよなー!」
眞琴
「アッシュ!」
アッシュの登場に一瞬だけクラスがしんと静まり返る。
が、少ししてクラス中の生徒たちが大爆笑する。
生徒1
「なに、この式神〜」
生徒2
「ちっさ!」
生徒3
「いかにも弱っちそ〜う」
アッシュの怒りが爆発する。
アッシュ
「なんだとぉー!」
「お前ら全員ぶっ倒してやるー!」
香子は笑い泣きした涙を、人差し指で拭いながら眞琴に言う。
香子
「コウモリ型なんて初めて見たわ」
「しょぼっ」
香子は得意げに自分の式神を出す。すると大きなホワイトタイガーが出てきて、アッシュに向かって大声で吠える。
香子
「いいこと? 式神は陰陽師の霊力が反映されるの」
「四大司家の方々は、人型の強い式神を持っているわ」
香子はホワイトタイガーを撫でながら言う。
「そんな脆弱な式神しか作れないのに、なんで絃様の弟子になれたの?」
アッシュは毛を逆立てて威嚇する。
アッシュ
「オレは脆弱じゃねー!!」
取り巻き1
「色仕掛けでもしたんじゃない?」
取り巻き2
「教会の神父とパパ活してるって噂で聞いたけど」
眞琴は怒りで目をカッと見開く。
その瞬間、彼女の霊力が教室中に広がって、生徒たちは圧倒される。だが力の正体を理解できず、何がなんだか分からない様子。
眞琴は怒りを抑えながら、静かに言う。
眞琴
「司祭さんも白道さんも立派な方よ」
「二人を侮辱するのは私が許さないわ」
その時、教師が教室に入ってくる。
教師
「席に着けー。授業を始めるぞー」
生徒たちは慌てて席につく。
香子は舌打ちしながら憎々しげに眞琴を睨み付ける。
眞琴はふと疑問に思って首を傾げる。
眞琴M
「ライアン先生はともかく」
「なんであの人のことまで庇ったのかしら…?」
◇
・車の中。
・秘書が運転して、絃(※スーツ姿)が後部座席でノートパソコンを開いて仕事をしている。
秘書
「眞琴さんは無事に本日から特別クラスに通学したようです」
絃はパソコンの画面を見つめながら返事をする。
絃
「そうか」
「サボるなって念押ししといたからな」
絃は昨日の眞琴とのやり取りをふと思い出す。
【絃回想】
・昨日の教会のあと。
・絃の所有する道場。
眞琴
「式神?」
絃
「そうだ。陰陽師は己の霊力を練って、式神を作り出す」
「式神はいわば陰陽師の矛と盾だ」
絃
「白鬼(ルビ:はくき)」
白鬼
「はっ!」
絃の目の前に式神が現れる。頭に角の生えた人型の式神。成人男性くらいの見た目だが中性的な雰囲気。色素が薄く、服も全身白で神秘的。
絃
「こいつは俺の式神だ」
白鬼はきりりとした表情で言う。
白鬼
「白鬼と申します。以後、お見知りおきを」
絃
「両手に霊力を集中させて、生命をイメージするんだ」
「ほら、やってみろ」
眞琴
「……」
「アッシュ」
アッシュがポンッ!と空間に出てくる。あざと可愛く片手を上げて、可愛いポーズを作る。
アッシュ
「あーい!」
絃は目を細めてじぃ〜っとアッシュを見る。
眞琴は自信満々に言う。
眞琴
「私の式神です」
絃は眞琴の脳天にチョップをする。
絃
「嘘こけ」
眞琴
「いたっ!」
絃
「明らかに式神じゃないだろ!」
「なんだこの凄まじい魔の力は!?」
アッシュ
「よく分かったなー!」
「オレの名はアッシュ。眞琴の使い魔だ!」
【絃回想終わり】
絃は昨日のことを思い出してふっと微笑する。
秘書
「…本当によろしいのですか?」
絃
「なにがだ?」
秘書
「眞琴さんのことです」
「彼女は真夜家の分家筋です。あちらの了承を得たほうが良かったのでは?」
絃
「本来なら、眞琴が日本に来た時に真夜が動くべき案件だった」
「何もしない者に、口を挟む権利はない」
絃
「ま、もし苦情を言われたら進次郎さんへの恩義だと答えるだけだ」
絃は再び仕事を再開する。
秘書はミラー越しに困惑した表情で絃を見やる。
秘書M
「本当に、それだけが理由ですか…?」
◇
・その日の放課後。
・小さな児童公園。
眞琴(※手袋、ゴーグル着用)と、少し後ろに絃が控えている。
二人の目の前には悪霊。(※黒い影のようなもの)
眞琴は呪文を唱えて十字を切る。すると、光の短剣が2本顕現する。
それを見て絃はぎょっとした顔になる。
絃
「眞琴! 陰陽術で戦え!」
「昨日教えただろうが!」
眞琴は無視して短剣で悪霊を斬る。悪霊は「ギャアアァァァ!!」と叫びながら消える。
眞琴
「…よし」
絃
「よし、じゃねぇよ」
「しばらく祓魔師(ルビ:エクソシスト)の術は封印しろって言っただろう」
眞琴
「だって、こっちのほうが慣れてるんだもん」
絃
「それじゃ意味が…」
「――!?」
突如、絃に向かって光線がビュンと飛んで来る。
絃は瞬時に懐から鉄扇を出して、それを弾いて打ち消す。
二人の前にダレンが現れる。
絃
「なんだ…?」
眞琴
「ダレン?」
ダレンはきっと絃を睨み付けて言う。
ダレン
「おい、おっさん」
「カミーラを返せ」
絃
「あん?」
ダレン
「カミーラは祓魔師(ルビ:エクソシスト)になるんだよ」
「勝手に連れて行ってんじゃねぇ」
ダレンは眞琴の腕を掴もうと手を伸ばす。
ダレン
「行こうぜ、カミーラ」
だがダレンが眞琴に触れる前に、絃が彼女の肩を抱いて自分に引き寄せる。
眞琴はドキリと胸を打って、顔を赤くする。
眞琴
「!?」
絃
「眞琴は俺の弟子だ」
「お前なんかに渡さない」
ダレン
「ぐっ…」
絃はニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべて挑発する。
絃
「まっ、俺を倒すことが出来たら考えてやってもいいぜ?」
ダレン
「なら話が早い」
ダレンは光の剣で絃に襲いかかる。
が、絃は鉄扇でそれを容易く折り、光が消える。
ダレン
「なんっ…!?」
瞬く間に絃は霊力波をダレンにぶつけ、腹にクリティカルヒットしてダレンは吹き飛ばされて砂場に倒れる。
ダレン
「ぐはっ!」
絃
「おいおい。威勢よく飛び出たくせにその程度か?」
いつの間にか眞琴が絃の背後を取っていて、彼に囁く。
眞琴
「白道さんを倒したら解放してくれるのね?」
絃が振り返ると、眞琴が2本の光の短剣で彼を襲う。が、軽く鉄扇で弾かれ、脳天にチョップされる。
眞琴
「きゃっ!」
絃はニヤリと笑う。
絃
「残念だったな。精進したまえ」
眞琴は「むぅーっ」とした顔で絃を見る。
絃
「そろそろ帰るか」
「あいつも送ってやろう」
絃と眞琴が車に向かう。
伸びているダレンを秘書と白鬼が抱えて連れて行く。
車の座席に座った眞琴と絃。
絃
「じゃ、次に会うのは明後日のパーティーだな」
眞琴は目が点になる。
眞琴
「は?」
「なんのこと?」
絃は信じられないという顔になる。
絃
「おい、聞いてないのか?」
眞琴
「なにがですか?」
絃
「明後日は、白道財閥の創業記念パーティーがある」
「眞琴にも招待状を送ったはずなんだが」
眞琴
「なにそれ。聞いてない」
「別に行きたくないし…」
絃
「…夜見家には、もう一度伝えておく」
「絶対に来いよ? でないと、祓いのバイト代を半額にするぞ」
眞琴は心底嫌そうな顔をする。
眞琴M
「えぇ〜〜〜っ!!」

