結局、動画の件を保留にはできないと、四万十川が再度、篠崎真由を呼び出した。
深山が警察に被害届を出すことはなかったが、学校からの処分として篠崎と他三名は二週間の謹慎処分になった。
壁新聞と動画を無視できなかった学校の判断だ。
そのあたりは千野の手も加わっているんじゃないかと、百瀬は疑った。
この件はこれで終わるかに思えたが。
週が変わった月曜日、また状況が変わった。
「はわぁ……」
大欠伸をしながら、しょもしょもと通学路を歩く。
(先週は忙しかったから。読めてなかった新刊、読んでたら夜更かししちゃった)
新たに手を出した獣人モノは良かったと心の中で感動を呼び起こしていたら。
学校の門を潜ったところで、高野の姿を見かけた。
男と手を繋いで歩いている。
(うちの制服じゃん! うちの生徒じゃん! 高野! 深山はどーした。好きだったんじゃないのか)
高野が手を繋いでいる男子生徒を、百瀬は知らない。
後ろからじゃ、さっぱりした短髪くらいしか、わからないが。
「ねぇ、高野君が……」
「あの爽やかイケメン、誰? 深山とは別れたのかな?」
「イケメンのツーショ、ヤバい」
近くの女子がコソコソと話している。
男同士で手を繋いでいるから目立っているのに、爽やかイケメンが相手だから余計に注目を浴びている。
声を掛けていいものか悩んだが、思い切って挨拶した。
「高野、おはよ!」
「おはよう、百瀬」
高野がニコニコの笑顔で挨拶を返してきた。
嬉しいが溢れた笑顔だ。
「……おはよ、百瀬」
高野の隣の男子に挨拶されて、しかも名前を呼ばれて、驚いた。
「え? もしかして、……深山? それ、どーしたの?」
思わず仰け反ってしまった。
モサモサだった髪をさっぱりと切って、顔を隠すような眼鏡もしていない。
別人の変わり様だ。
「髪、切って、コンタクトに、した」
「そうだね。そんな風に見える。何で急に……、イメチェン?」
驚き過ぎて、同意しかできない。
「ぅん……。智桜の隣に並べるように、なりたかった、から」
爽やかイケメンに変貌した深山が、顔を真っ赤にして照れた。
仕草や表情は、間違いなく深山だ。
「智桜が少しでも嫌な想いしないように、できる努力、したくて」
徐々に俯く顔が、どんどん赤く染まる。
「俺は前の爽太で全然、良かったんだけどね。でも、俺のために頑張ってくれるの、嬉しくて」
高野が、本当に嬉しそうに笑んだ。
「爽太が可愛いってバレちゃうのは、嫌だけど。嬉しいから、皆に見せたいって思ったり。ちょっと複雑だね」
高野の惚気が止まらない。
深山のほうが照れているのが、可愛い。
「わかる。めちゃめちゃ、いいと思う。深山、格好良いよ」
真っ赤になる深山と嬉しそうに笑う高野のツーショを目に焼き付ける。
(うっわぁ! 尊い! 何だこの二人、尊い! 好きな人のために頑張る深山、健気! どんな深山も大好きで独占欲チラ見せしてくる高野、スパダリ!)
噂の渦中にいた時も変らず深山を想い続けていた高野だ。
自分のために頑張ってくれた恋人に素直に嬉しさを表現する姿も、大変良い。
(三次元でも推せるCPに出会えるとは。神様ありがとう。最高の月曜日です)
百瀬は熱くなった目頭を押さえた。
「百瀬、どうしたの?」
「何でもない。二人がベストカップルすぎて、言葉にならない」
不思議そうに問う高野が眩しくて直視できない。
「そんな風に言ってもらえると、嬉しいよ、えへへ」
はにかんだ高野をちらりとうかがう。
深山と繋ぐ手が、少しだけ震えて見えた。
「深山、おはよ。髪、いーじゃん」
鳴海が普通に深山に声を掛けた。
(この二人って、仲良かったっけ? 正反対のタイプなような)
一年の時は、それほど仲良くしている姿を見なかった気がする。
(でも、篠崎から助けたのも、動画を提供してくれたのも、鳴海なんだよな)
意外な組み合わせだなと思う。人の繋がりは、わからないものだ。
不思議に思って眺めていたら、鳴海と目が合った。
「百瀬、はよ」
「おはよ。鳴海って、深山と仲良かったんだね」
「ん。一年の時、同クラだったし」
相変わらず短い言葉で鳴海が同意した。
「そういえば、四人とも一年の時はA組だったね」
高野に言われて、そういえばと思った。
「アドバイスくれたの、鳴海なんだ。自分を変えたいって相談したら、とりあえず見た目、変えてみたらッて」
「そうなんだ」
ちょっと照れ臭そうに深山が笑った。
そういう話をするくらい仲良しだったとは、知らなかった。
(鳴海って、とっつきにくい感じだけど、いい奴なんだ。ヤンキーは優しい説。三次元でも適用されてる)
創作だと、ヤンキーは一見怖いが、気が良くて優しい奴が多い。
「鳴海のお陰で、ちょっと自信持てた。ありがと」
「そういうの、高野にも言った?」
「ちゃんと、言えたよ」
深山が高野と繋いだ手を持ち挙げる。
二人の手を見て、鳴海が小さく笑んだ。
「そっか。良かったな」
鳴海の安心した笑みが、百瀬には印象的だった。
「鳴海がイケメンすぎて、妬く」
高野が困った風に笑う。
その意見には全面的に賛成だ。
「わかる。同意しかない」
休んでいる間の深山を支えていたのが鳴海だったら、高野は妬いていい、許す。と百瀬は思った。
「なんで? 俺に妬くの?」
わからない顔をしている鳴海が、余計にイケメンだ。
「冗談。ありがと、鳴海。羨ましいくらい、爽太を助けてくれた」
「まだ、妬いてね?」
高野の御礼に、鳴海が微妙な顔をしている。
その顔が鳴海にしては珍しくて、思わず笑った。
「高野の反応は、仕方ない。俺も鳴海がイケメンって思うもん」
鳴海が百瀬をぼんやりと眺めた。
「ん? どした?」
「百瀬にイケメンて言われんのは、悪くねぇかな」
鳴海が照れたような顔で目を逸らした。
(ヤンキーでもイケメンと呼ばれるのは、照れるのか。可愛いな)
ぼんやり鳴海を眺めていたら、高野が変な視線を向けてきた。
百瀬と鳴海を見比べて物知り顔をしている。
「ふぅん、そっか。そんな感じか」
高野の呟きが、よくわからなくて首を傾げる。
「百瀬は千野先輩と付き合ってるの?」
「は⁉」
高野が突然、ぶっこんできた話題に、慌てた。
「付き合ってないよ。生徒会でお世話になっているだけ」
「へぇ、そうなんだ。今は、って感じ?」
「今は、って……。そういうのじゃ、ないから」
高野が意味深な視線を向けてくる。
鳴海と深山も興味津々な顔をしている。
やめてほしい。
「先輩は、そういうんじゃなくて。普通に仲良しなだけ」
「普通に、ね。だってさ、鳴海」
話を振られた鳴海が、弾かれたように顔を逸らした。
「知ってる。仲、いーよな」
気まずそうに、ぽそりと返事した。
「応援してるよ、二人とも」
「だから、何の応援?」
高野は何を応援しようとしているのか。
気まずそうに目を逸らしているから、鳴海には思い当たる節があるらしい。
「百瀬はそんな感じだから、可愛いよね。話しなら、いつでも聞くよ」
「うん……? 相談とか別に、ないけど」
よくわからないまま教室に着いたので、意味を聞けないまま席に着いた。
百瀬は、ちょっとモヤっとした。
(でも、良かったな。別れるどころか、仲が深まってた)
手を繋いで登校できるくらい、高野と深山が幸せで良かったと思う。
今日も昼は生徒会室だ。
先週の振り返りをしながら、皆で昼食をとる。
高野と深山の幸せ報告ができるのは嬉しいとほっこりしながら、百瀬は授業の準備をした。
深山が警察に被害届を出すことはなかったが、学校からの処分として篠崎と他三名は二週間の謹慎処分になった。
壁新聞と動画を無視できなかった学校の判断だ。
そのあたりは千野の手も加わっているんじゃないかと、百瀬は疑った。
この件はこれで終わるかに思えたが。
週が変わった月曜日、また状況が変わった。
「はわぁ……」
大欠伸をしながら、しょもしょもと通学路を歩く。
(先週は忙しかったから。読めてなかった新刊、読んでたら夜更かししちゃった)
新たに手を出した獣人モノは良かったと心の中で感動を呼び起こしていたら。
学校の門を潜ったところで、高野の姿を見かけた。
男と手を繋いで歩いている。
(うちの制服じゃん! うちの生徒じゃん! 高野! 深山はどーした。好きだったんじゃないのか)
高野が手を繋いでいる男子生徒を、百瀬は知らない。
後ろからじゃ、さっぱりした短髪くらいしか、わからないが。
「ねぇ、高野君が……」
「あの爽やかイケメン、誰? 深山とは別れたのかな?」
「イケメンのツーショ、ヤバい」
近くの女子がコソコソと話している。
男同士で手を繋いでいるから目立っているのに、爽やかイケメンが相手だから余計に注目を浴びている。
声を掛けていいものか悩んだが、思い切って挨拶した。
「高野、おはよ!」
「おはよう、百瀬」
高野がニコニコの笑顔で挨拶を返してきた。
嬉しいが溢れた笑顔だ。
「……おはよ、百瀬」
高野の隣の男子に挨拶されて、しかも名前を呼ばれて、驚いた。
「え? もしかして、……深山? それ、どーしたの?」
思わず仰け反ってしまった。
モサモサだった髪をさっぱりと切って、顔を隠すような眼鏡もしていない。
別人の変わり様だ。
「髪、切って、コンタクトに、した」
「そうだね。そんな風に見える。何で急に……、イメチェン?」
驚き過ぎて、同意しかできない。
「ぅん……。智桜の隣に並べるように、なりたかった、から」
爽やかイケメンに変貌した深山が、顔を真っ赤にして照れた。
仕草や表情は、間違いなく深山だ。
「智桜が少しでも嫌な想いしないように、できる努力、したくて」
徐々に俯く顔が、どんどん赤く染まる。
「俺は前の爽太で全然、良かったんだけどね。でも、俺のために頑張ってくれるの、嬉しくて」
高野が、本当に嬉しそうに笑んだ。
「爽太が可愛いってバレちゃうのは、嫌だけど。嬉しいから、皆に見せたいって思ったり。ちょっと複雑だね」
高野の惚気が止まらない。
深山のほうが照れているのが、可愛い。
「わかる。めちゃめちゃ、いいと思う。深山、格好良いよ」
真っ赤になる深山と嬉しそうに笑う高野のツーショを目に焼き付ける。
(うっわぁ! 尊い! 何だこの二人、尊い! 好きな人のために頑張る深山、健気! どんな深山も大好きで独占欲チラ見せしてくる高野、スパダリ!)
噂の渦中にいた時も変らず深山を想い続けていた高野だ。
自分のために頑張ってくれた恋人に素直に嬉しさを表現する姿も、大変良い。
(三次元でも推せるCPに出会えるとは。神様ありがとう。最高の月曜日です)
百瀬は熱くなった目頭を押さえた。
「百瀬、どうしたの?」
「何でもない。二人がベストカップルすぎて、言葉にならない」
不思議そうに問う高野が眩しくて直視できない。
「そんな風に言ってもらえると、嬉しいよ、えへへ」
はにかんだ高野をちらりとうかがう。
深山と繋ぐ手が、少しだけ震えて見えた。
「深山、おはよ。髪、いーじゃん」
鳴海が普通に深山に声を掛けた。
(この二人って、仲良かったっけ? 正反対のタイプなような)
一年の時は、それほど仲良くしている姿を見なかった気がする。
(でも、篠崎から助けたのも、動画を提供してくれたのも、鳴海なんだよな)
意外な組み合わせだなと思う。人の繋がりは、わからないものだ。
不思議に思って眺めていたら、鳴海と目が合った。
「百瀬、はよ」
「おはよ。鳴海って、深山と仲良かったんだね」
「ん。一年の時、同クラだったし」
相変わらず短い言葉で鳴海が同意した。
「そういえば、四人とも一年の時はA組だったね」
高野に言われて、そういえばと思った。
「アドバイスくれたの、鳴海なんだ。自分を変えたいって相談したら、とりあえず見た目、変えてみたらッて」
「そうなんだ」
ちょっと照れ臭そうに深山が笑った。
そういう話をするくらい仲良しだったとは、知らなかった。
(鳴海って、とっつきにくい感じだけど、いい奴なんだ。ヤンキーは優しい説。三次元でも適用されてる)
創作だと、ヤンキーは一見怖いが、気が良くて優しい奴が多い。
「鳴海のお陰で、ちょっと自信持てた。ありがと」
「そういうの、高野にも言った?」
「ちゃんと、言えたよ」
深山が高野と繋いだ手を持ち挙げる。
二人の手を見て、鳴海が小さく笑んだ。
「そっか。良かったな」
鳴海の安心した笑みが、百瀬には印象的だった。
「鳴海がイケメンすぎて、妬く」
高野が困った風に笑う。
その意見には全面的に賛成だ。
「わかる。同意しかない」
休んでいる間の深山を支えていたのが鳴海だったら、高野は妬いていい、許す。と百瀬は思った。
「なんで? 俺に妬くの?」
わからない顔をしている鳴海が、余計にイケメンだ。
「冗談。ありがと、鳴海。羨ましいくらい、爽太を助けてくれた」
「まだ、妬いてね?」
高野の御礼に、鳴海が微妙な顔をしている。
その顔が鳴海にしては珍しくて、思わず笑った。
「高野の反応は、仕方ない。俺も鳴海がイケメンって思うもん」
鳴海が百瀬をぼんやりと眺めた。
「ん? どした?」
「百瀬にイケメンて言われんのは、悪くねぇかな」
鳴海が照れたような顔で目を逸らした。
(ヤンキーでもイケメンと呼ばれるのは、照れるのか。可愛いな)
ぼんやり鳴海を眺めていたら、高野が変な視線を向けてきた。
百瀬と鳴海を見比べて物知り顔をしている。
「ふぅん、そっか。そんな感じか」
高野の呟きが、よくわからなくて首を傾げる。
「百瀬は千野先輩と付き合ってるの?」
「は⁉」
高野が突然、ぶっこんできた話題に、慌てた。
「付き合ってないよ。生徒会でお世話になっているだけ」
「へぇ、そうなんだ。今は、って感じ?」
「今は、って……。そういうのじゃ、ないから」
高野が意味深な視線を向けてくる。
鳴海と深山も興味津々な顔をしている。
やめてほしい。
「先輩は、そういうんじゃなくて。普通に仲良しなだけ」
「普通に、ね。だってさ、鳴海」
話を振られた鳴海が、弾かれたように顔を逸らした。
「知ってる。仲、いーよな」
気まずそうに、ぽそりと返事した。
「応援してるよ、二人とも」
「だから、何の応援?」
高野は何を応援しようとしているのか。
気まずそうに目を逸らしているから、鳴海には思い当たる節があるらしい。
「百瀬はそんな感じだから、可愛いよね。話しなら、いつでも聞くよ」
「うん……? 相談とか別に、ないけど」
よくわからないまま教室に着いたので、意味を聞けないまま席に着いた。
百瀬は、ちょっとモヤっとした。
(でも、良かったな。別れるどころか、仲が深まってた)
手を繋いで登校できるくらい、高野と深山が幸せで良かったと思う。
今日も昼は生徒会室だ。
先週の振り返りをしながら、皆で昼食をとる。
高野と深山の幸せ報告ができるのは嬉しいとほっこりしながら、百瀬は授業の準備をした。



